コラム 2023.06.03. 08:08

チームの空気を一変させる“ゲームチェンジャー” 中日・ブライト健太が放った輝き

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中日・ブライト健太 (C) Kyodo News

「長かったです。遅かったです」


 中日にとって、交流戦の幕開けは福岡・PayPayドームのソフトバンク戦。そこで輝きを放ったのが、昨季のドラ1・ブライト健太だった。

 プロ初スタメンとなった5月30日から3戦連続スタメンで12打数6安打4打点。同31日はチームにとって4年ぶりとなる福岡での白星に大きく貢献した。

 チャンスは突然やってきた。初スタメンをほのめかされたのは、30日の朝。「(打撃コーチの)和田さんから『スタメン、あるかもしれないぞ』と言われました。準備だけはしました」。何せ初めて。ソワソワしながら、全体練習の打撃順を確認する。順番を見れば、スタメンかどうか分かる。入団2年目。「気持ちだけは入れて」、プレーボールを待った。


 初回一死と3回一死一・二塁で凡退。快音は3度目の正直となる第3打席の5回一死三塁。ソフトバンク先発・大関友久の高め変化球を左前へ弾き返す。プロ初適時打となった。

 「長かったです。遅かったです。苦労した時間が、いつかの糧になると思ってやってきました。思い切ってプレーしました」

 立て続けにHランプをともした。8回には中前打、9回には左前打をマーク。これで初スタメン・初タイムリー・初猛打賞とした。


“空気を変える”仕事ができる男


 連夜の活躍だった。翌日31日もスタメン出場。「よく寝られました。打てた日は爆睡です。打てないと、寝られないんですけど……」。午前9時に目がバチッと開いた。

 ジムでトレーニングし、ストレッチ。時間をゆっくり使って試合を迎えた。

 1点リードの7回二死満塁。右翼フェンスに直撃する走者一掃の3点三塁打を見舞う。この回、一挙5得点。敵地に勝利を予感させる風を吹かせた。

 「決めてやろうと思いました。うれしかったですし、はい。本当によかったです」と興奮して振り返った。


 チームを苦境から救い出す、“ゲームチェンジャー”の適任者、かもしれない。

 2月の春季沖縄キャンプでは、岡田俊哉が右大腿(だいたい)骨を骨折した。翌日も、グラウンドには重たい空気が流れる。そんな中で迎えた阪神との練習試合(北谷)で、青柳晃洋から右翼席へ一発を放った。

 雄たけびをあげて、ダイヤモンドを勢いよく一周した。目に見えないものほど怖い。陰の空気を漂よわせる、球場を覆った何かを取っ払ったのこそ、ブライトだった。


 ガーナ人の父とのハーフ。東京・足立区で育った。肌の色を気にしたことは「あります」という。

 周囲の目を受け止め、押し返す。野球の実力だけでなく、笑顔やコミュニケーションを武器に生きて来た。

 「ちょっと荒れた時期もありますけど、周囲の方のおかげで成長できました」と言うように、下町でもまれてきた。


 チームは若手起用への舵を切った。切り込み隊長・岡林勇希、3番には細川成也。そして4番・石川昂弥は固定されている。その和に、ブライトが入った。


文=川本光憲(中日スポーツ・ドラゴンズ担当)


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