一軍に欠かせぬ存在
エース、4番、切り込み隊長、セットアッパー、ストッパーなど、役割がはっきりしているポジションには、数多くの機会でスポットライトが照らされる。しかしその裏では、プライドを持って出番を待つメンバーの存在も、チームには欠かせない。
ショート、セカンド、サードと内野の3ポジションを高いレベルでこなし、小技も冴える柴田竜拓は、その筆頭格。チームは中日から京田陽太、ドラフトでは3位で林琢真を獲得。期待のホープ・森敬斗を含め、左打ちの内野手がひしめき合う激戦区だが、ユーティリティ性を武器に「(ベンチに)置いておけばなんとかしてくれると言うような信頼をしてくれているのかなという喜びもありますね。ほかのチームでもいると思うんですけど、このチームだと僕がそれをできる強みだと思っているので。それでずっと一軍に居させてもらってますし、いろんな形でチームに貢献できるんで」と胸を張る。
とはいえ「もちろんスタメンで出たい気持ちはあります。ヒーローになりたいですし、スーパースターにはなりたいと思うんですけど」と素直な心境も吐露。
だが同時に「そこはもうしっかりと自分で理解してます」と割り切り「スタメンを自分で決められるわけではないですし、言われたときに出るだけなんで、その準備をするだけです」と言い切った。
今シーズンは守備から試合に入ることが多くなっているが「今年に関しては結構わかりやすい。監督も早めにこういう状況で行く可能性あるよとか言ってくれます」と風通しの良さを実感。
そのうえで「まあ僕も8年目なんで、ある程度監督の特徴だったり、ここで出られそうだなとか、まだだなとか、どういう野球をしたいのかを考えながら、感じながら出来ている」と、常に試合展開を把握することにも目を光らせ、ベンチにいながらも戦っている。
パワーアップにも着手
またオフから肉体改造にも着手。ここまで42試合に出場しながら、スタメンは2で打席数はわずか24。打率も2割を割り込むが、昨年よりも鋭い当たりが増している。1日のゲームでは鋭いショートライナーに、ライデル・マルティネスの156キロの豪速球を引っ張ってのヒットと好結果を残した。
「打ちたい打ちたいと、打席が少ないのでなると思うんですけど、そうならないようにしっかりと自分のできることを明確にして、打ち方や打席に入ったときのメンタルをいい方に行くように練習でも頭を使ってやってます」とまず思考を整理。
さらには「練習から(コーチの石井)琢朗さんとかと、打席数が少ないからってちっちゃくならずに強く振っとけよと言われるので、ほんとうに小さくならずに、当てに行かないようにしています。それが結果というかヒットにはなっていないですけど、当たりに結果に繋がっているのかなとは思いますね」と説明した。
これには昨年から出力アップのトレーニングをしていることにも由来する。
「自分のどういう部分が弱いかとか、どういうときにパフォーマンスが落ちやすいのかとかを、トレーナーさんと探りながら話しながら、トータル的にバランス良く強化していこうとずっとやっています」と継続中。
「守備でのスローイングでもバッティングでも凄くズレるんですけど、逆にそこはズレていかないと変化がない。まだ全然途中なんですけど、徐々に慣らすようにやってます」と変化を恐れずに進み「大和さんは凄いんですよ。守備とか人より動きが少なかったりとかがあるので、そういうのも真似したりとか、いろんなことを練習してます」と、29歳になっても向上心は薄れない。
チームが連敗を止めた2日のゲームでは、4月25日以来のスタメンの機会に2つのフォアボールに1犠打と活躍。
「嬉しいですね。最初から最後まで出れるというのは幸せですし、そこを目指して常にやっているので、良かったかなと思います。こんな日もあっていいのかなと」とエクボをくぼませながら笑顔を弾ませた。
三浦ベイスターズにとって、小兵の持つ沢山の小さな歯車が、結果大きな力となっている。
取材・文=萩原孝弘