8月は2試合・17イニング無失点

　8月4日から6日にかけて行われた首位・阪神との3連戦で、屈辱の3連敗を喫したDeNA。自力優勝が消滅し、一時は貯金をすべて吐き出すなど厳しい状況に陥ったが、そこから中日に連勝して再び上昇気配を感じさせている。

　9日の試合でチームを勝利に導いたのがトレバー・バウアー。先発投手として7回を10奪三振で無失点に封じた右腕は、試合後のお立ち台で「今日は良いピッチングができたと思いますし、勝てて良かったんですが、それよりも野手陣が良い攻撃を見せてくれて、守備もよく守ってくれた。チームで勝ち取った勝利というのが一番うれしいです」と声を弾ませた。

　思えば、前回登板の8月3日・広島戦では10回を123球で無失点に抑える快投を見せながら、味方の援護なく白星はつかず。この日はそれから中5日での108球の熱投となったが、「120球でも、140球でも、200球でも問題ないと思っています」と言い、“たしかにバウアーなら……”と周囲に思わせるような発言でファンを沸かせた。


　続けて、この日は前回と打って変わって4回までで7点の援護を受けたことについても、「みんなが苦しんでいたのは自分も分かっている。きのう今日と続けて結果が出ることで自信にもなるでしょうから、自分もできるだけゼロを続けてチームに勝てるチャンスを残すことが一番の仕事だと思っています」としたうえで、「リードの展開で投げる方が楽しいです。こうやって点が入ると楽しい野球になる」と笑顔を見せた。

　自力優勝消滅という厳しい現実にも「先週の3連敗はすごく痛いことですが、いま順位がどこにいるかを考えることよりも、今日の試合をどうやって勝つかということにフォーカスしていくことがとても大事。今日はこうやって勝つことができた、では明日はどうやって勝とうか。ひとつひとつの試合を考えていくことが、今は大事だと思います」と前を向いた。


　頼れるサイヤング右腕の投球については、三浦大輔監督も「相手がファーストストライクを狙ってきている中での攻め方、入り方が非常に良かったと思います」と振り返り、相手の動きを頭に入れたうえで、それをうまく利用していた点を強調。

　続けて「狙って三振を取りに行っているところもありましたし、場面場面でしっかりと状況を見ながらピッチングをしていた。ゲームを支配していました」とさすがの投球に賛辞を送った。

日本の酷暑も味方に

　8月に入って夏真っ盛り。日本の夏は高温多湿で、慣れているはずの日本人にとっても堪える酷暑となっているが、「この暑さと湿度も僕は楽しもうと思っている」とバウアー。

　「おかげで身体も温まりやすいですし、イニング間もずっと温まったままでいられるということ。もしかしたらそれが原因で、いま調子が上がってきているのかもしれないです」と続け、意に介さないどころかむしろプラスに捉えているようだ。


　オールスター明けの3試合で計24イニングを投げ、防御率は0.38。今季トータルの投球イニングも104回2/3となり、規定投球回にも到達した。

　「イニング数で考えると、今がちょうどいつものシーズンだと半分くらい。ここから一番良い状態に入ってくると思います」

　右腕はここからのさらなるブーストアップもほのめかす。


　いよいよ佳境に入るペナントレース。至高の投球術とファイティングエナジー、そして無尽蔵のスタミナを誇るハマの96番は、これからも日本球界を自慢の“ソード”で斬りまくる。


取材・文＝萩原孝弘