大阪桐蔭・前田悠伍と霞ヶ浦・木村優人が本領発揮
『第31回 WBSC U-18ベースボールワールドカップ』が8月31日に台湾で開幕。侍ジャパンU-18代表に選出された高校生にとっては、秋のドラフトに向けた最後のアピールチャンスといえる。
28日には“壮行試合”も東京ドームで行われ、今年7月の『第44回 日米大学野球選手権大会』で見事優勝を果たした大学日本代表と対戦。結果は0-8の大敗となったものの、両軍ともドラフト候補として熱視線を浴びる選手の活躍が目立った。
今回は侍ジャパンU-18代表の中で、目立った活躍を見せた有望株をピックアップして紹介したい。
まずは投手で実力を発揮したのが、前田悠伍(大阪桐蔭)と木村優人(霞ヶ浦)の2人だ。
前田は春の選抜以降長らく実戦から遠ざかり、夏の大阪大会では決勝で履正社に敗れるなど状態が心配された。
だが、フタを開けてみると2回を投げて無失点。3奪三振をマークするなど、スカウト陣の不安を払拭する投球を見せている。
フォームを2段モーション気味にしたことで、軸足にしっかりと体重を乗せてからステップすることができるようになり、持ち味のコントロールがさらに安定したように見える。ストレートの球速もコンスタントに140キロ台中盤をマークした。
そのストレート以上に威力を発揮したのがチェンジアップだ。選抜では少し抜けが悪かったが、この日はブレーキ抜群のボールを低めに集めており、大学日本代表の強打者がたびたび体勢を崩していた。ストレートの球速がさらに上がってくれば、こうした変化球もより威力を発揮するようになるだろう。
そしてもう1人、木村は6回から5番手として登板。いきなり連打を浴びてピンチを招いたものの、その後は上位打線を抑えて無失点。特に来年のドラフトの目玉と見られている宗山塁(明治大/3年)から三振を奪ったピッチングは見事だった。
最終的に次のイニングも打者2人を打ちとり、1回2/3を0点に抑えた。この日のストレートの最速は145キロ。自己最速の150キロには届かなかったが、ストレートの平均球速は145キロと、かなり高いレベルだ。
持ち味であるカットボールとスプリットに加えて、カーブやチェンジアップといった緩いボールも自信を持って投げることができていた。ストレートと変化球はともにコントロールが安定している。
この2人以外の投手では、森煌誠(徳島商)や東恩納蒼(沖縄尚学)、高橋煌稀(仙台育英)という夏の甲子園を沸かせた右腕が実力の“片鱗”を見せた。
森は社会人、東恩納と高橋は大学に進学する予定とのことだが、それぞれが進む社会人や大学のチームでも早くから戦力となる可能性は高いだろう。
ヒットはわずか3本も…寺地隆成と武田陸玖が気を吐いた!
一方の野手は、大学日本代表の強力投手陣にわずか3安打に抑え込まれ、なかなか見せ場を作ることができなかった。
それでも、苦戦した打撃陣のなかで存在感を発揮したのが寺地隆成(明徳義塾)と武田陸玖(山形中央)である。
寺地は試合開始直後の1回表、ドラフト上位候補の下村海翔(青山学院大/4年)の151キロのストレートを弾き返す左安で出塁。8回の第4打席では、宗山のファインプレーに阻まれたものの、二遊間への鋭い当たりを放っている。
タイミングのとり方に余裕があり、バットの振り出しが鋭いため、速いボールに力負けすることがない。さらに本職は捕手にもかかわらず、一塁と三塁を守れるという器用さも兼ね備えている。
もう1人、投打の二刀流で注目を集める武田は「5番・指名打者」で出場。4回の第2打席で、ドラフト上位候補の上田大河(大阪商業大/4年)からセンター前に弾き返す安打を放ってみせた
フルスイングの迫力は、代表チームのなかでも間違いなく1~2を争うだろう。それに加え、ボールにコンタクトする能力が高い。プロの世界でも二刀流で勝負してもらいたいと思わせるだけのポテンシャルを持っている。
最後に守備で目立った選手を取り上げたい。スタメンマスクをかぶった新妻恭介(浜松開誠館)である。
変化球のレベルが高い投手の小刻みな継投だったにもかかわらず、キャッチングもブロッキングも高いレベルにあり、落ち着いて守る姿が強く印象に残った。打撃にも力強さがあり、「打てる捕手」として今後が楽しみな選手だ。
現時点でプロ志望と見られているのは、この記事で取り上げた前田と木村のほか、武田や森田に加え、仙台育英の主将で遊撃を守った山田脩也と人数は少ない。
しかしながら、大学・社会人などを経て大きく伸びそうな選手は非常に多く、数年後のドラフト戦線を賑わせる存在へと成長してくれることを期待したい。
文=西尾典文(にしお・のりふみ)
☆記事提供:プロアマ野球研究所