2016年のドラフト同級生
「個人的なことなんですけど、こうして同期入団の佐野と初めて並んでお立ち台に立つことができたんで、また次も2人で並んで、あと京田(陽太)も早く帰ってきて同級生3人でチームを引っ張っていく姿を皆さんに見せられるように、また次も頑張っていきたいと思います」
勝利投手となった濵口遥大は、勝ち越し打を放った佐野恵太とともに立った、秋の気配を感じる横浜スタジアムのお立ち台で気持ちよさそうに声を張った。
10日の試合では5回、同点の満塁で打順が回ってきた佐野は、ヒーローとなれる絶好の機会を得ると先発で踏ん張る濵口のためにも「絶対打ってお立ち台に立ってやると思って打席に立ちました」と闘志。
「7年目でまだ濵口とお立ち台に一緒に立てていなかったので、にも関わらず京田に先を越されていたこともあったんで」との思いとともにバットを一閃すると、打球はセンター前に弾んだ。先発で1失点で踏ん張り、この回もヒットで出塁していた濵口をホームに迎え入れる殊勲の一打を放ち、思惑通りの同級生での同時ヒーローインタビューに繋げてみせた。
2016年のドラフト会議でDeNAに1位指名された濵口と9位指名の佐野は、ともに大学を経ての入団で94年生まれの同級生。
佐野が「シーズンが始まる前はご飯に行ったりします」と明かす仲で、「僕らの代のドラフトは濵口が1位ですし、1年目から活躍する姿を僕も見ていたので、いい刺激をもらえる存在だと思っています」とルーキーイヤーから活躍する左腕を意識。そして自らもキャプテンまで登り詰め、すっかりチームの顔となった。
だが濵口が「苦しんでもがいている姿も見てました」と順風満帆ではなかったことに加え、自分も今シーズン思うような成績を残せていなかったことも含め、この日の勝利は格別だったに違いない。
指揮官も復調に太鼓判
昨年は最多安打のタイトルを獲得し、今年もヒット量産を期待されていたが、ここまで打率.265とまさかの数字に留まっている。
しかし、8月22日に3番に座るとバットも上向きとなり、9月に入ってからは打率.333、OPSも.900の好成績。直近の3連戦では猛打賞2回を含む11打数7安打で打率.636と打ちまくった。
三浦監督も「色々大変だと思いますよ、キャプテンとしてもチームを引っ張っていってくれてますから」とチームのまとめ役の大変さを労いながら「その中で自分の状態も上げながら、打席でも思い切りの良い佐野らしさが出てきたかなと思います」と復調を感じ取っているとコメント。
佐野は「打順のことより、自分の中でのバッティングの状態が良くなっていると思っているので、打席には気持ちよく、不安なく打席に立てているなと思います」とし「センターより左側、逆方向にヒットが出ているのはいい傾向ではあると思う」と手応え。また「残り試合も少なくなってきましたけど、最後までいい状態で戦いたいなと思います」と決意した。
2位・広島とは3ゲーム。しかし4位巨人とも1.5ゲームと、CS争いは佳境を迎えていることに「勝ち続けるしかないと思うんで、もちろん選手誰一人諦めていないですけれども、最後の最後まで諦めず、前を向いて戦いたいと思います」とキャプテンらしい言葉で締めた佐野恵太。悲願の同級生ヒーローインタビュー達成を起爆剤に、ここからもう一度ギアを上げていく。
取材・文=萩原孝弘