コラム 2023.09.14. 17:38

阪神・岩崎優の“アレ”はどうなる?【個人タイトル“激アツ地帯”を行く】

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阪神・岩崎優(中) (C)Kyodo News
 岡田阪神の“アレ“は2位以下に大差をつけてぶっちぎった。

 本稿執筆時は14日の試合前。つまり、13日時点の数字のため(以下同じ)「優勝確定」とは行かないが、岡田彰布監督の胴上げはいつ見てもおかしくない。

「勝負あった!」のペナントレースとは別に、今デッドヒートを繰り広げているのが、セのセーブ王争いだ。

 中日のライデル・マルティネスの32セーブ(以下S)を筆頭に、阪神・岩崎優とヤクルト・田口麗斗が31Sと1差の中に3人がしのぎを削っている。こちらのタイトルの行方はまだまだ目が離せない。



 中でも最注目は岩崎の存在だ。マルティネスと田口はシーズン当初からクローザーの役割を任されていたが、岩崎は途中からの参戦。初セーブは5月4日の中日戦だから、ライバルより約1カ月遅れで現在の地位を築いたことになる。

 指揮官の当初の青写真では、クローザーは三振の取れる速球派・湯浅京己だった。しかし、開幕直後こそ順調にセーブを記録したが、5、6月と打ち込まれる場面が増えると、コンディション不良を理由に一軍登録を抹消された。この時点でマウンド経験豊富な岩崎に後を託すしかなかった。

 プロ10年目のベテラン左腕は、打者を圧する速球を投げるわけではない。スライダーとチェンジアップを主な武器として、コーナーに投げ分ける円熟の投球でチームの18年ぶりの栄冠へ大きく寄与している。

「ここまで来たら(最多セーブのタイトルを)獲らせな」と岡田監督が語ったのは9月9日の広島戦のこと。前日には球団左腕史上初の30Sをマーク。そしてこの日は5-1の最終回二死後から登板して31個目のセーブを稼いだ。

 通常、セーブの条件は最終回の1イニングと想定した場合、3点差までが有効とされるが、二死一、二塁のピンチに救援すると一発を打たれた時点で1点差。さらに次打者に本塁打されたら同点のケースを抑えたと解釈されて4点差でもセーブが記録されたのだ。いずれにせよ、岡田監督の親心が生んだ記録と言えるだろう。


タイトル争いがもつれ込めば「掟破り」の連投も


 投手のタイトル争いは、過酷で因果なものである。

 打者なら、自分が打てば打率、打点も本塁打の数字がついてくる。しかし、投手の場合はどんなに好投しても、味方打線が不発なら白星にありつけない。ましてや、セーブ王の争いになると勝ちゲームは絶対条件ながら、点差によってはクローザーの出番はやって来ない。

 実力的には誰もがナンバーワンと認めるマルティネスの場合、チームは最下位に沈み、阪神との勝利数は30近くも離れている。この時点で活躍の場は少なくなる。それでも46イニングを投げて3勝32セーブ。自責点はわずかに2で防御率0.39は図抜けている。昨年に次いで2年連続のセーブ王タイトルの本命であることは間違いない。

 同じく下位に沈むヤクルトで田口の活躍も光る。昨年までの絶対守護神、スコット・マクガフの退団で巡ってきたチャンスを見事に生かしている。

 ペナントレースの行方が決まって来ると、優勝以外の上位球団はクライマックスシリーズ進出圏内の3位以内に照準をあてる。それと同時に個人タイトルの狙える位置にいる選手には、チームを挙げてバックアップ態勢を敷くのがこの時期の通例だ。

 近年では中継ぎ、抑え投手でも3連投以上はさせずに、休養を与えるのが常識となっている。それでもタイトル争いが最終盤までもつれ込んだ時には、「掟破り」の連投まであるかも知れない。

 実績のマルティネスか? 今季から本格参戦の技巧派左腕二人か?

 ペナントの帰趨は決しても、セーブ王の争いはまだまだ“激アツ”が続く。


文=荒川和夫(あらかわ・かずお)

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