コラム 2023.09.19. 06:29

歴代最強クラスの投手陣を誇った大学日本代表 上位指名候補も続々、特に注目すべき3人の有望株

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世代代表で活躍した実績もある東洋大・細野晴希

強烈な印象を残した3投手


 今年は10月26日(木)に行われる『プロ野球ドラフト会議 supported by リポビタンD』。運命の日を約1カ月後に控え、この9月には各地で大学野球の秋季リーグ戦が幕を開けた。

 2023年のドラフト戦線はかねてから“大学生投手”が大きな注目を集めており、秋を前にして行われた『侍ジャパンU-18壮行試合』においても、大学日本代表投手陣は後に『第31回WBSC U-18野球ワールドカップ』を制する“後輩たち”を相手に貫録の投球を披露している。

 8-0の完勝となった試合の中で、投手陣は10人の小刻みな継投で侍ジャパンU-18代表の打線をわずか3安打に封じ込めた。特に強烈な印象を残したのが、武内夏暉(国学院大)と細野晴希(東洋大)、常廣羽也斗(青山学院大)の3人だ。


 武内は先頭の緒方漣(横浜)を二ゴロに仕留めると、続く寺地隆成(明徳義塾)には6球ストレートを続け、最後は自己最速を更新する153キロで空振り三振に斬って取った。

 さらに夏の甲子園でヒットを量産した橋本航河(仙台育英)に対してはカーブから入り、そこからストレートを2球続け、最後は鋭く落ちるツーシームを振らせて三振を奪う。

 フォームは良い意味で動きが“静か”で、楽に腕を振ってリリースに力が集中している。打者からすると、腕の振りとボールの勢いの“ギャップ”は脅威。ドラフト1位指名に向けて視界は良好だ。


圧巻の「158キロ」


 続いて、投げている“ボールの質”という意味で圧巻だったのが、5回に登板した細野だ。

 先頭の小林隼翔(広陵)は156キロ、続く知花慎之助(沖縄尚学)には157キロのストレートで連続三振。3人目の緒方は右飛だったものの、4球目のストレートは158キロと表示され、スタンドからは驚きの声が上がった。

 細野本人は160キロを狙っていたため、この結果には悔しさが残ったとのことだったが、この「158キロ」という球速は、アマチュア野球の左投手で“歴代最速”である。また、1球だけ投じた、少しスピードを落としたスライダーの変化は素晴らしく、どの変化球も質が高かったという点も付け加えておきたい。

 リーグ戦ではどうしても長いイニングを投げる必要があり、春のリーグ戦は特に力を抑えた投球が目立ったが、休養十分で力を入れた時のボールはプロ選手と比較しても上位クラスであることは間違いないだろう。


 一方、9回から登板した常廣は最速155キロをマーク。1奪三振で三者凡退という好内容だった。

 先頭打者に対してボールが3球続くなど、出だしこそ少しばらつくところもあったが、それでも四球を与えずにしっかり修正してくるところは見事だ。

 筆者には、腕の振りはまだ100%の力というよりも、少し制御しながら投げているようにも見えた。それでもストレートの平均球速は150キロを超えている。体格的には武内や細野と比べてもまだ細く、体つきは高校生とはそれほど変わらない。にもかかわらず、これだけのボールを投げられるというところにもポテンシャルの高さが垣間見える。

 プロ入りから数年後には、先発投手として“160キロ”をコンスタントにマークできるような剛腕投手への成長も期待できるだろう。


明治大のドラフト上位候補が躍動!


 最後に野手では、来年のドラフト上位候補である上田希由翔(明治大/3年)が圧倒的な存在感を示した。

 第1打席では前田悠伍(大阪桐蔭)のアウトローへのストレートを左前に運び、第2打席では森煌誠(徳島商)の低めのストレートを引っ張って、あっさりマルチヒットを記録した。

 そして長打が期待された第3打席。安田虎汰郎(日大三)の高めのストレートをとらえると、打った瞬間にそれと分かる一撃を右翼席へ。持ち前のパワーもしっかりと見せつけた。

 打ったボールは全てストレート。140キロ台のスピードに全く力負けすることなく、どのコースにも対応していた。また、第2打席の安打の後にはすかさず盗塁を決め、第4打席の一塁到達タイム(結果は二ゴロ)では4.16秒をマークするなど、脚力があるところも見せた。


 さらにもう一人、野手で活躍した選手を挙げるならば、来年のドラフト会議で超目玉として期待される宗山塁(明治大/3年)になるだろう。

 「3番・遊撃」でフル出場すると、打っては3安打の猛打賞。遊撃守備でも6回に華麗なランニングスローを見せ、8回にはセンターへ抜けそうな打球を飛びついて捕球、素早いトスで一塁走者をセカンドでアウトにしている。大学生の遊撃手としては、鳥谷敬以来の大物と言われている逸材だけに、引き続き注目だ。


 今年の大学日本代表の投手は、歴代と比べてもNo.1と言えるほどの実力者が揃っており、この日登板した10人全員がプロ入りすることも十分に考えられる。

 一方、野手は上田や宗山以外にも、進藤勇也(上武大/捕手)や辻本倫太郎(仙台大/内野手)、宮崎一樹(山梨学院大/外野手)らも有力候補に名を連ねている。

 彼らがどの球団に何位で指名されるのか、10月26日のドラフト会議ではぜひ注目してもらいたい。


文=西尾典文(にしお・のりふみ)
☆記事提供:プロアマ野球研究所
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