19歳左腕が先発デビュー
リーグ王者の次代を担う有望株がその力を見せつけた。
9月30日のカープ戦で先発デビューを飾った門別啓人は7月に19歳になったばかりの高卒1年目左腕。
チームは2週間前に早々と“アレ”(優勝)を決めたため、今季2軍のローテーションで奮闘してきた若虎にご褒美とも言える大舞台を用意した。
ただ、この夜に門別が示したパフォーマンスは「お試し起用」を上回るチームの未来を明るく照らす内容だった。
岡田監督からは白星級の評価
「本当に今回は絶対、失点だけはしたくないと投げる前から思ってたんで」
実は広島のマウンドは2回目だ。15日に先輩左腕の及川雅貴の後を受けて2番手で3回6安打3失点とほろ苦の1軍デビュー。
その後、2軍で再調整となって再び今度は先発としてチャンスが巡ってきた形だった。
ベイスターズとの順位争いのただ中で、ほぼベストメンバーを組んできた広島打線相手に5回無失点。4回一死一・三塁で2者連続三振を奪うなど7安打を浴びながら要所で粘りを見せた。
この夜、1軍の洗礼を受けた2週間前の姿とは別人の背番号30がいた。
顕著だったのは球種の割合の変化。前回は約4割にとどまった直球が今回は6割に増加し「ピンチじゃない時もピンチの時もまっすぐで押していけた」と本人も確かな手応えを得た。
「(直球主体への変更は)いろんな方からそう言われて、自分でも一番の持ち味はまっすぐと思っているんで」
変化球で「かわす投球」から直球で「押し込む投球」への気づきが快投につながった。
95球で5回を投げ終えて降板。菊池涼介、西川龍馬、秋山翔吾と名実ともにはるか上をいく一線級の打者に粘られても辛抱強く腕を振り続けた。
光る無四球。打線の援護に恵まれずプロ初勝利はお預けとなったが、岡田彰布監督は「良かったなあ。コントロールがなあ。そんなにバラつきないし、狙った所にある程度行っていたから」と白星級の評価を与えた。
「すごく自信につながりました」
この好投でポストシーズンでもチャンスが巡ってくるかは分からない。
今季の1軍での登板はこれが最後になる可能性もあるが、本人の言葉を聞けば何者にも代えがたい経験だったことがうかがえる。
「さらにもっとまっすぐを磨いていけば、もっともっと良いピッチングができるかなと。そこはすごく自信につながりました」
踏み出した第一歩から高く跳ねて見せる。“もっともっと”を目の当たりするのはそう遠くないはずだ。
文=チャリコ遠藤(スポーツニッポン・タイガース担当)