コラム 2023.10.16. 06:29

早くも飛び出した「1位公表」 青山学院大のエース・常廣羽也斗は何が優れているのか

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青山学院大・常廣羽也斗 [写真提供=プロアマ野球研究所]

早くも広島が「1位指名」を公表


 今年は10月26日に行われるプロ野球のドラフト会議。運命の一日が近づくにつれて、徐々に関連ニュースも増えてきた。

 阪神・岡田彰布監督が「おもしろくない」とドラフト前の“1位指名公表”を嫌ったことが話題になった一方、「誠意」としていの一番に意中の相手を公表したのが広島だ。今年は青山学院大のエース・常廣羽也斗をドラフト1位で指名するという。

 大学生投手が“空前の大豊作”と言われる中でも、その代表格と言えるのがこの右腕。9月下旬の段階で広島のほかに巨人も“ドラ1候補”の一角として常廣の名前が報じられており、複数球団で競合する可能性も高そうだ。


▼ 常廣羽也斗(青山学院大) 
・投手
・180センチ/73キロ 
・右投右打
・大分舞鶴高

<主な球種と球速帯>
ストレート:144~155キロ
カーブ:108~113キロ
スライダー:126~130キロ
フォーク:135~138キロ
チェンジアップ:120~124キロ

<クイックモーションでの投球タイム>
1.16秒


球速160キロ超えも狙える逸材


 常廣の高い評価を受ける理由はどこにあるのか──。まずひとつは“実績”である。

 今年春までのリーグ戦の通算成績は5勝1敗とそこまで勝ち星を積み重ねているわけではないが、規定投球回数に到達した3年秋と4年春の防御率はそれぞれ「0.30」、「1.44」と圧倒的な数字を残している。全国で最もレベルの高い東都大学野球・一部ということを考えると、これだけでも実力の高さが分かるだろう。


 さらに評価を上げたのが、今年6月に行われた『全日本大学野球選手権』でのピッチングだ。

 準々決勝の中部学院大戦では6回を被安打3、無四球・9奪三振で無失点の快投。そして、決勝の明治大戦では9回を1人で投げ抜き、10奪三振の完封劇。チームを優勝に導き、MVPと最優秀投手の二冠に輝いた。

 ちなみに、明治大は準決勝までの3試合で18得点を挙げ、失点は0という圧倒的な強さを見せて勝ち上がっていた。その相手にほぼ完璧な投球を見せたことで、改めて常廣の実力が証明されたと言えるだろう。


 それに加えて、ふたつ目に挙がるのが“”将来性”だ。

 身長180センチ・体重73キロで、体つきは他のドラフト候補と比較しても明らかに細身。だが、ボールには圧倒的な力がある。

 8月に行われた侍ジャパンU-18代表との壮行試合では、最終回に登板して最速155キロをマークしながら、腕の振りにはまだまだ余力があるように見えた。


 肩の可動域が広く、肘の使い方も柔らかいため、長い腕がさらに長く見える。

 球持ちの長さも抜群で、腕を振ってからリリースするように見えることから、打者はタイミングを取りにくい。

 この長所を残したまま筋肉量が増えて、体幹や下半身の強さが増せば、160キロという球速も現実的なものになるはずだ。


スカウトの前で見せた圧巻投球


 そして常廣の凄さは、ストレートだけではない。リリースの感覚が抜群でコントロールが安定しており、多彩な変化球も操ることができる。

 特に140キロ前後のスピードで鋭く落ちるフォークは、途中まではストレートと見分けがつかず、落差もあるため低めに決まれば、打者はバットに当てるのも難しい。千賀滉大(現・メッツ)の“おばけフォーク”を彷彿とさせる必殺のボールと言えるだろう。

 このほか、緩急をつけるカーブとチェンジアップ、鋭く斜めに変化するスライダーも大きな武器になっている。


 そんな常廣の持ち味が最大限に発揮された試合が、9月27日の東洋大戦だ。

 東洋大はこの秋に一部復帰を果たしたばかりだが、開幕から2カード連続で勝ち点をあげている難敵。前週の国学院大戦で勝ち点を落としている青山学院大にとっては、リーグ戦の優勝を狙うためにも負けられない一戦だった。

 そんな大一番で、常廣は被安打6の11奪三振完封という満点の結果を残した。

 特に7回の投球は圧巻で、安打と連続四球で無死満塁という絶体絶命のピンチを迎えながら、筆者のスピードガンでこの日最速となる153キロをマークするなどギアを上げ、3者連続三振で無失点に抑えた。これには視察していたスカウト陣からも感嘆の声があがっていた。


 一部の報道では「即戦力」という評価も聞こえるが、それ以上に「将来性」に魅力を感じているスカウトも多いはず。

 果たして、この逸材をどの球団が獲得するのか。今年のドラフトの大きな注目ポイントの一つとなることは間違いない。


文=西尾典文(にしお・のりふみ)
☆記事提供:プロアマ野球研究所
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