圧巻の3者連続三振
リリーバーとして才能を開花させた若虎が、ポストシーズンでもフル回転の勢いだ。タイガースの2年目・桐敷拓馬が自身初のクライマックスシリーズ登板で見せたパフォーマンスは出色だった。
18日、カープとのファイナルステージ初戦。6回1失点と役割を果たした若き大黒柱・村上頌樹からバトンを受け3点リードの7回に登板すると、対峙する打者をなで斬っていった。
先頭打者から左打者3人が並ぶ打順。レギュラーシーズンで対戦打率.190に抑え込んでいる“左キラー”の血が騒いだ。坂倉将吾をフォークで空振り三振に仕留めると、田中広輔は148キロのツーシームに手が出ない。最後は代打で出てきた右の堂林翔太を、フルカウントからこの夜最速の150キロで空振り三振と3者連続で「K」を積み上げ、チームの勝利をたぐり寄せた。
リリーフ転向で才能が開花
「緊張しましたけど、やるだけだと思って腕振っていきました。頌樹さん(村上)が良い流れを作ってくれたので、そこに乗っかるじゃないですけど、そういう気持ちで投げていきました」
コメントからも分かるとおり、まだキャリア2年目の若手。5月26日のジャイアンツ戦では7回1失点の快投を披露してプロ初勝利をマークしているように、ポジションも本来は先発だ。
その後、思うような結果を残せず6月にニ軍降格となったが、岡田彰布監督の“目”が覚醒を呼び込む。
7月に出場したフレッシュ球宴で、リリーフとして登板している姿を見た指揮官が適任と判断。7月下旬の再昇格とともに配置転換される。
すると対左打者としての起用だけでなく、先発時の経験を生かしての複数イニングでの登板も難なくこなし、シーズン後半だけで14ホールドを挙げてリーグ優勝に貢献。岡田監督からも「スペードのエース」と独特の表現で称され、信頼を勝ち取って見せた。
3者連続三振で仕事を果たした試合後、背番号47は「シーズンと同じように投げられたのかなと思う。(3者連続三振は)できすぎじゃないですけど、ここからまた戦いが続くので」と気を引き締め直した。
シーズン終盤はやや疲れも感じる部分もあった中で、直球の最速は150キロを記録するなど“充電完了”の気配も感じられる。
一発勝負の短期決戦において、快投で好発進した桐敷の存在は大きい。数ある手持ちのカードの中で、岡田監督がスペードのエースを切る回数は自然と増えていくはずだ。
文=チャリコ遠藤(スポーツニッポン・タイガース担当)