アマチュア担当記者が推す育成指名の逸材
10月26日に開催されたドラフト会議では、計50人が育成ドラフトで指名された。
歴代最多だった昨秋の57人には及ばなかったものの、ソフトバンクが12球団最多8人を指名するなど楽天以外の11球団が育成ドラフトを活用した。
振り返れば、ソフトバンクに10年育成4位で指名された千賀滉大が、現在では育成出身初の大リーガーとしてメッツでプレーしている。
オリックスに17年育成2位で指名された東晃平は、今年の日本シリーズ第3戦に先発登板して球団で初めて育成出身の勝利投手となった。
今年の育成選手の中にも未来の逸材が隠れていることだろう。実際に現地でプレーを見た選手からオススメの高校生を3人に厳選して紹介したい。
■ ヤクルト育成2位・高野颯太 三刀屋(島根)/内野手/176センチ・90キロ/右投げ右打ち
ロマン枠として推したいのが高校通算29本塁打を誇る右打ち三塁手の高野だ。
身長176センチと長身ではないものの、グラウンドに立てば、体重90キロと高校生離れした体格で一際目立つ。
4月に実施された高校日本代表候補の強化合宿に島根の公立校から招集されて話題にもなった。
恵まれた体格を生かしたパワフルな打撃が最大の魅力だ。
木のバットを苦にせず、打撃練習では強烈な打球を連発する。島根の同校を訪れて打撃練習を見た際には、U18W杯で見た日本代表の選手たちと遜色ない打球を飛ばしていたのだから驚いた。
春先に左手有鉤(ゆうこう)骨を疲労骨折してから本領を取り戻すのに苦労し、学校関係者も「良いときの高野をスカウトの方々に見てもらえなかった」と悔しがっていた。
今夏の島根大会は、先頭打者本塁打を放ちながら初戦敗退に終わった。
県大会を勝ち進みながら長打力を見せられていれば、指名順位も上がっていたかもしれない。
「体格を生かして飛距離を出せるのが一番の特徴です」と胸を張る長打力は、ますます磨きがかかるはずで、伸びしろしかないと言っていい。
三塁守備はこれから鍛える必要がある。それでもパワーという一芸に秀でた右の大砲候補としてロマンの塊のような打者だ。
■ 広島育成3位・杉原望来 京都国際(京都)/投手/175センチ・72キロ/左投げ左打ち
切れのある直球で勝負する最速144キロ左腕だ。
直球の平均球速は140キロ前後と剛速球を投げるわけではないものの、直球で打者を次々に差し込んでいくところに球速以上の切れを感じさせる。
力任せに投げ込むような投球フォームではなく、力感のなく投じたキレイな直球が一直線に捕手のミットに吸い込まれていくようなイメージだ。
身長175センチ、体重72キロと細身な体格とあって、土台さえできれば球速をグングンと伸ばしていく姿も容易に想像できる。
そして、もう一つの魅力がマウンド度胸にある。
「どんな打者な場園でも相手と勝負できる気持ちの強さが自分の持ち味です」を明かすように、ピンチでより力を発揮できるタイプの投手だ。
だんじり祭で有名な大阪・岸和田市で育った。
「だんじり祭には、小さいときから高校に入学する前まで参加していました。岸和田の人たちは負けることが嫌いな人が多い。そういうところは野球にもつながっているのかなと思います」
高校進学後は、ユーチューブで祭りの動画を探して雰囲気を味わっていると言う。
指名された広島では、新人の高卒投手を強化指定選手として土台づくりに時間をかける。持ち前の強心臓に屈強な身体が組み合わされば、一気に才能が開花しそうな予感が漂う。
■ オリックス育成3位・宮国凌空 東邦(愛知)/投手/176センチ・78キロ/右投げ右打ち
直球に勢いを感じさせる最速149キロ右腕だ。
ただし、高校野球の集大成とするはずだった高3時は不振に悩み続けた印象が強い。
昨秋はエースとして明治神宮大会出場に導き、世代を代表する右腕の一人として今年を迎えたものの、身体のコンディションが整わずに苦しんだ。
今春選抜では先発2試合で防御率5.73(11イニング7失点)。直球が走らず、変化球でかわしながらの投球を強いられた。
さらに今夏の愛知大会では4回戦で敗退し、復活を印象づけられずに終わった。
ただし、不調から得るものもあった。不振の期間を通して投球術を学んだのだ。
背番号「1」を託してきた山田祐輔監督は「ベストの状態なら相手を圧倒するような球を投げられるけど、そうでないときもちゃんと相手の打者を見ながら、相手に応じた投球ができる。チームを勝ちに導ける投球ができるのが宮国の魅力です」と明かす。
身長176センチと高身長ではないものの、すでに最速149キロをマークしているように出力の高さは証明済みだ。
選抜大会や練習試合で宮国の投球を見たとはいえ、まだ本領を見たことはないかもしれない。それだけ将来性に期待したくなるような器の大きさを感じさせる投手だ。
身体を万全にし、成長を見せられれば、剛球を連発する投手になっても驚かない。
以上、高校生から3選手を紹介した。
プロに入れば指名順位は関係ないとも言い切れない。育成選手よりも支配下指名された選手から優先的に実戦機会を与えられるのが現実だ。
厳しい競争を勝ち抜き、類い希なる潜在能力が花開くことを今から楽しみに待ちたい。
文=河合洋介(スポーツニッポン・アマチュア野球担当)