データで振り返る!メジャー日本人選手の2023年:第5回・大谷翔平(投手)
前回の打者・大谷翔平に続いて、今回は投手・大谷の2023年を振り返りたい。
今季の大谷はワールドベースボールクラシック(WBC)で日本を世界一に導いたところから始まった。打者としてはもちろん、投手としても3試合に登板し、2勝0敗1セーブ、9回2/3を投げて、2失点、防御率1.86という成績。アメリカとの決勝戦では最終回にマウンドに登り、エンゼルスの同僚マイク・トラウトを三振に斬って取り、胴上げ投手となった。
そして、勢いに乗って臨んだメジャー6年目のシーズンは、2年ぶりにア・リーグMVPに輝いたが、やはり打者としての働きが大きく評価されてのもの。その証拠に、大谷はサイヤング賞部門で一票も獲得することができなかった。15勝した22年に続く2桁勝利を挙げたものの、勝ち星は15勝から10勝(5敗)へ、防御率は前年の2.33から3.14へ悪化していた。
ただ、この数字は最初のMVPを受賞した2年前の9勝2敗、防御率3.18とほぼ同じ。やはりシーズン終盤の戦線離脱が大きかった。
投手として、ルーキーイヤーの18年から一貫して変わらないのが、ホームスタジアムでの圧倒的なパフォーマンスだ。
今季のホームスタジアムでの成績は14試合に登板して、6勝3敗、防御率2.70。これは9試合に投げて、4勝2敗、防御率3.81のアウェイ成績を大きく上回った。
通算でもホームが21勝8敗、防御率2.22、アウェイが17勝11敗、防御率4.07なので、いかにエンゼルスファンが大谷の背中を押していたかが分かるだろう。
今季の特徴はスイーパーとギアチェンジ
今季の投球で特徴的だったのが、試合内でのギアチェンジ。打順別で見ると、ギアを入れるべき相手打線の中心、3~4番打者に対して、非打率はそれぞれ.298と.268とやや打ち込まれていた。それ以外の打順で最も高かったのが対6番打者の.216で、7~9番打者に対しては.170とほぼ完璧に抑え込んでいたのとは対照的だ。
また、今季の球種別割合を見ると、最も多かったのがメジャーで流行中のスイーパー。フォーシームの32.8%を僅かに上回る35.2%という高い割合で横に大きく曲がる球を操っていたが、これは今季2000球以上投じたメジャー100投手の中で最も高い割合でもあった。
しかもそのスイーパーは、ただ多かっただけでなく、しっかりと威力を発揮。被打率も.141と相手打者を手玉に取っていた。
残念ながら、大谷は9月に右肘を手術したため、来季は打者に専念することが決まっている。再びマウンドに立つのは早くて25年の春ということになるが、ドジャースファンの前でもエンゼルス時代と同じような快刀乱麻の投球を見せてくれるか。
文=八木遊(やぎ・ゆう)