白球つれづれ2023・第51回
契約金総額1015億円に上った大谷翔平選手のドジャース入り。その衝撃は未だに続き、日米で“マスコミ・ジャック”が巻き起こっている。
ある日は契約内容の詳細が報じられれば、ある日はMVP受賞の際に話題を呼んだ愛犬の名前が「デコピン」と判明すると、現地では早速、愛犬をプリントしたTシャツが販売されて大人気。
またネットでは、大谷の相棒でもある水原一平通訳に注目が集まる。入団会見の席では大谷の発言をメモすることなく、完璧な通訳ぶりに米国人も絶賛したとか。
さらに通常なら選手の契約金の1~2%が通訳に支払われると言うが、1015億円の1%でも約10億円。10年間に振り分けても1億円ならサラリーでも「世界一の通訳誕生」と騒がれている。
真偽のほどは定かでないが、要は、大谷関連なら何でも話題になる昨今だ。
そんな中で、明るく、ユーモアたっぷりの動画も喝采を浴びた。ド軍のベテラン右腕、ジョー・ケリー投手一家による背番号17の譲渡シーンである。
自宅の庭に現れたアシュリー夫人が、背番号17のユニホームやTシャツを一枚、一枚投げ捨てる。そこでケリー投手がやって来るとシャツの背中に背番号99を描いてみせる。すでに大谷や球団と話し合って17番を大谷に譲ることを快諾していたケリーだが、何とも気の利いたほっこり動画だった。
「これは彼女のアイデア。とてもウィットに富んでいて、賢いんだ」と夫人の発案を明かしたケリーは大谷に対しても「『譲ってくれて有難う』と言う連絡があった」と語り「彼は将来、野球殿堂入りも間違いない男。17番が球史に残るなら、とても名誉な事」と大谷への敬意も忘れなかった。
スポーツ選手にとって、背番号は「もう一つの顔」、分身と言っても過言ではない。日本ハム時代の「11」に、侍ジャパンの「16」。中でもメジャーで身に就ける「17番」はもはや大谷にとって代名詞とも言うべき栄光の背番号だ。
「栄光の背番号17」が作り出すドラマは第2章へ
そこで、ここでは背番号にまつわる話題をもう少し掘り下げててみたい。
日本のNPBではどんな選手が大谷と同じ17番をつけているのか?
真っ先に思い浮かぶのは、ロッテの佐々木朗希だが、他にも日本ハム・伊藤大海、ソフトバンク・有原航平、阪神・青柳晃洋らのエース級投手がズラリ。中日の柳裕也投手に至っては、ドジャースと中日のユニホームが似ているところから、同投手のユニホームまで売れ出したと言うから大谷効果はすさまじい。
かつて各球団のエースナンバーと言えば18番と相場は決まっていたが、今やそれにとって代わる勢いだ。
背番号には球団の願いや思惑も見ることが出来る。
今オフには多くの選手の背番号が変更されたが、特徴的なのは中日である。
若手のホープ・岡林勇希選手は60から1番に。現役ドラフトで移籍1年目から第ブレークした細川成也選手が0から55番に登録変更された。
岡林は控え選手クラスの2ケタ番号から球団の顔に昇格。細川の55番はかつて巨人の松井秀喜がつけて以来、ヤクルト・村上宗隆選手や巨人・秋広優人選手など大型の長距離砲に受け継がれている。細川にもさらに大きな期待がかけられているのは言うまでもない。
中日では昨年、将来の4番候補である石川昴弥選手が2から25に変更されたが、これも飛躍の願いが込められたもの。25番と言えば広島の新井貴浩監督が現役時代から使用した番号で、他にも村田修一現ロッテコーチから巨人・岡本和真選手にバトンが繋がれるなど、こちらも強打者のイメージが定着している。
背番号とポジション別のイメージなら捕手の27番が代表的だ。
V9巨人時代の森昌彦(後に祇晶と改名)からヤクルト・古田敦也、西武・伊東勤、中日・谷繁元信らの名捕手がズラリ。現役でもヤクルト・中村悠平や広島・会沢翼捕手らがいる。
球界に多大な貢献をした選手などには永久欠番が贈られる。
巨人の王貞治の1番、長嶋茂雄の3番、阪神の村山実の11番など現在17人とプラスアルファが2人。それは日本ハムの大社義規元オーナーの100番と、楽天が定めるファン番号の10だ。
さて、大谷の現役引退後はどうなるか? あのベーブルースを越す投打の二刀流ならMLBの殿堂入りはもちろん、トジャースで永久欠番も十分あり得るだろう。
「栄光の背番号17」が作り出すドラマは、これから第2章が始まる。
文=荒川和夫(あらかわ・かずお)