2023年シーズンのプロ野球で起きた珍プレーや珍事を振り返る「プロ野球B級ニュース事件簿2023」。第2回は「巨人・坂本勇人編」と銘打ち、不運にも1シーズンで3本ものホームランが幻と消えてしまった“珍事3題”を紹介する。
開幕から5試合に出場し、20打席連続無安打と深刻な打撃不振が続いていた坂本は、4月8日の広島戦の7回の第3打席、床田寛樹から通算23打席目にしてシーズン初安打となるバックスクリーンへの1号特大アーチ。「ストレートをしっかりととらえることができました。これを継続できるように頑張ります」とほっとした表情を見せた。「みんなが待ってた」「マジで泣ける」とファンも大喜びだったが、皮肉にも、その後の坂本は呪われたように“幻のホームラン”を連発する。
一度はホームランと判定されながら、リクエストでひっくり返ったのが、5月21日の中日戦だ。
2-0とリードの3回二死、不調から立ち直り、この日までに前年のシーズン5本塁打を上回る6本塁打を記録していた坂本は、1ボールから高橋宏斗の外角寄り143キロカットボールを右翼席に運んだ。
自らのバットで貴重な追加点を叩き出した坂本は、右翼席で総立ちになって万歳するG党の大歓声を背に、悠々とダイヤモンドを1周し、3点目のホームを踏んだ。ところが、直後、まさかのどんでん返しが起きる。
中日・立浪和義監督がリクエストを要求。リプレー検証の結果、フェンス上部に当たってからスタンドに入ったとして、エンタイトル二塁打に格下げされてしまったのだ。VTRを見ると、打球は確かにフェンスの最上部に当たっており、わずか数センチの差に泣いた。
巨人・原辰徳監督が納得のいかない様子で白井一行一塁塁審に詰め寄り、説明を求めるひと幕もあったが、判定は覆らず。試合は二死二塁で再開され、巨人は無得点に終わった。
1回程度なら「たまには不運もあるさ」と割り切ることができるだろうが、話はそれだけでは終わらなかった。
5月27日の阪神戦では、甲子園名物の浜風に邪魔されてホームランが“フイ”になるアンラッキーに見舞われた。
0-0の6回一死、坂本は大竹耕太郎の初球、真ん中近くに入ってきた120キロチェンジアップを思い切り良く一振。高々と上がった打球は、左翼席一直線となり、先制ソロと思われた。
ところが、左翼方向に吹く浜風に流され、ポールをわずかに切れる。吉本文弘三塁塁審の「ファウル!」の判定にスタンドの虎党から大歓声が上がった。
打ち直しとなった坂本は、今度は浜風に邪魔されないよう意識したのか、大竹の2球目、これまた真ん中近くの143キロ直球を逆方向に運んだが、右飛に倒れ、手を叩いて悔しがった。1週間に2度も幻弾の悲哀を味わう羽目になったのは、本当にツイてない。
そして、2度あることは3度あった。
8月13日のDeNA戦、6-1とリードした4回に先頭打者として打席に立った坂本は、カウント1-1から上茶谷大河の外角高め、123キロカーブを左中間に運んだ。
ところが、スタンド最前列の男性が捕球しようと伸ばした手に当たり、ボールはグラウンドにポトリ。男性の手に当たらなかった場合、スタンドに入っていたかどうかは、極めて微妙であり、二塁打と判定された。
原辰徳監督が「本塁打ではないか?」とリクエストすると、審判団は長い協議の末、責任審判の敷田直人二塁塁審が「お待たせいたしました。ただいま観客の妨害がありましたので、オーバーフェンスとせず。二塁打として試合を再開いたします」と説明。またしてもホームランは幻と消えた。
二塁ベース上にいた坂本は「またか」と言いたげに、派手にズッコケて苦笑い。さらに笑顔で腕立て伏せのポーズを披露し、スタンドの笑いを取った。
ちなみにNPBは翌14日、「観客の妨害によって本塁打が二塁打となった」と受け止められかねない敷田審判の説明について、「そもそも打球がフェンスを越えていないので二塁打の判断となり、お客様がインフィールド内に差し出した手に打球が当たった時点でボールデッドとなりました。本塁打を二塁打に変更したものではありません」と改めて説明している。早い話が、観客の妨害がなくても、打球はフェンスに入っていなかったのだ。
本塁打を3本損して、うち2本が二塁打に。だが、けっして悪い話でもなかった。二塁打2本が上積みされた結果、坂本は9月1日のDeNA戦で通算441二塁打を記録し、「440」の金本知憲(広島-阪神)を抜いて歴代4位に浮上(シーズン終了までに「445」に更新)。来季中に「449」で歴代2位の福本豊(阪急)、「448」で同3位の山内一弘(大毎-阪神-広島)を抜くのはほぼ確実で、「487」で歴代トップの立浪和義(中日)にどこまで迫れるかも注目される。
文=久保田龍雄(くぼた・たつお)
開幕から5試合に出場し、20打席連続無安打と深刻な打撃不振が続いていた坂本は、4月8日の広島戦の7回の第3打席、床田寛樹から通算23打席目にしてシーズン初安打となるバックスクリーンへの1号特大アーチ。「ストレートをしっかりととらえることができました。これを継続できるように頑張ります」とほっとした表情を見せた。「みんなが待ってた」「マジで泣ける」とファンも大喜びだったが、皮肉にも、その後の坂本は呪われたように“幻のホームラン”を連発する。
まさかの“どんでん返し”
2-0とリードの3回二死、不調から立ち直り、この日までに前年のシーズン5本塁打を上回る6本塁打を記録していた坂本は、1ボールから高橋宏斗の外角寄り143キロカットボールを右翼席に運んだ。
自らのバットで貴重な追加点を叩き出した坂本は、右翼席で総立ちになって万歳するG党の大歓声を背に、悠々とダイヤモンドを1周し、3点目のホームを踏んだ。ところが、直後、まさかのどんでん返しが起きる。
中日・立浪和義監督がリクエストを要求。リプレー検証の結果、フェンス上部に当たってからスタンドに入ったとして、エンタイトル二塁打に格下げされてしまったのだ。VTRを見ると、打球は確かにフェンスの最上部に当たっており、わずか数センチの差に泣いた。
巨人・原辰徳監督が納得のいかない様子で白井一行一塁塁審に詰め寄り、説明を求めるひと幕もあったが、判定は覆らず。試合は二死二塁で再開され、巨人は無得点に終わった。
1回程度なら「たまには不運もあるさ」と割り切ることができるだろうが、話はそれだけでは終わらなかった。
甲子園の “浜風”に邪魔された
5月27日の阪神戦では、甲子園名物の浜風に邪魔されてホームランが“フイ”になるアンラッキーに見舞われた。
0-0の6回一死、坂本は大竹耕太郎の初球、真ん中近くに入ってきた120キロチェンジアップを思い切り良く一振。高々と上がった打球は、左翼席一直線となり、先制ソロと思われた。
ところが、左翼方向に吹く浜風に流され、ポールをわずかに切れる。吉本文弘三塁塁審の「ファウル!」の判定にスタンドの虎党から大歓声が上がった。
打ち直しとなった坂本は、今度は浜風に邪魔されないよう意識したのか、大竹の2球目、これまた真ん中近くの143キロ直球を逆方向に運んだが、右飛に倒れ、手を叩いて悔しがった。1週間に2度も幻弾の悲哀を味わう羽目になったのは、本当にツイてない。
今度は、観客の手に当たりグランドに落下
そして、2度あることは3度あった。
8月13日のDeNA戦、6-1とリードした4回に先頭打者として打席に立った坂本は、カウント1-1から上茶谷大河の外角高め、123キロカーブを左中間に運んだ。
ところが、スタンド最前列の男性が捕球しようと伸ばした手に当たり、ボールはグラウンドにポトリ。男性の手に当たらなかった場合、スタンドに入っていたかどうかは、極めて微妙であり、二塁打と判定された。
原辰徳監督が「本塁打ではないか?」とリクエストすると、審判団は長い協議の末、責任審判の敷田直人二塁塁審が「お待たせいたしました。ただいま観客の妨害がありましたので、オーバーフェンスとせず。二塁打として試合を再開いたします」と説明。またしてもホームランは幻と消えた。
二塁ベース上にいた坂本は「またか」と言いたげに、派手にズッコケて苦笑い。さらに笑顔で腕立て伏せのポーズを披露し、スタンドの笑いを取った。
ちなみにNPBは翌14日、「観客の妨害によって本塁打が二塁打となった」と受け止められかねない敷田審判の説明について、「そもそも打球がフェンスを越えていないので二塁打の判断となり、お客様がインフィールド内に差し出した手に打球が当たった時点でボールデッドとなりました。本塁打を二塁打に変更したものではありません」と改めて説明している。早い話が、観客の妨害がなくても、打球はフェンスに入っていなかったのだ。
本塁打を3本損して、うち2本が二塁打に。だが、けっして悪い話でもなかった。二塁打2本が上積みされた結果、坂本は9月1日のDeNA戦で通算441二塁打を記録し、「440」の金本知憲(広島-阪神)を抜いて歴代4位に浮上(シーズン終了までに「445」に更新)。来季中に「449」で歴代2位の福本豊(阪急)、「448」で同3位の山内一弘(大毎-阪神-広島)を抜くのはほぼ確実で、「487」で歴代トップの立浪和義(中日)にどこまで迫れるかも注目される。
文=久保田龍雄(くぼた・たつお)