2023年シーズンのプロ野球で起きた珍プレーや珍事を振り返る「プロ野球B級ニュース事件簿2023」。第4回は「頭に血が上った人編」と銘打ち、死球や味方の拙守などに端を発したトラブルを集めてみた。
死球がきっかけであわや乱闘寸前の騒ぎになったのが、5月20日のヤクルトVS DeNAだ。
2-2の同点で迎えた7回、DeNAは一死満塁で関根大気の右翼線二塁打で2点を勝ち越し。ここでヤクルトは石山泰雅に代わって4番手・小澤怜史をマウンドに送ったが、なおも1死二・三塁で、小澤は次打者・宮崎敏郎に対し、カウント1-1から腰付近に死球を与えてしまう。
この日は6回に牧秀悟が左肘、この回にも佐野恵太が右膝付近に死球を受けており、いずれもチームの主力を襲った3つ目の死球に、ふだん怒りを表に出すことがない宮崎もいら立ちをあらわにし、小澤に向かって何事か言葉を発した。
直後、田中浩康三塁コーチが駆け寄ってなだめると、宮崎は落ち着きを取り戻し、一塁に向かったが、今度は二塁走者の関根が声を上げながらマウンドへ。だが、危険を察知し、いち早く三塁から駆けつけ、小澤をガードしていた村上宗隆が前に立ちはだかり、関根の背中をぽんぽんと叩いて必死になだめる。
その後、外野のブルペンからも選手がダッシュして輪に加わるなど、30人以上の小競り合いに発展。エキサイトしたヤクルト・森岡良介コーチとDeNA・田中コーチを中心にもみ合いが続いたが、ヤクルト・高津臣吾、DeNA・三浦大輔両監督がベンチを飛び出して止めに入り、ようやく騒ぎも収束。責任審判の有隅昭二二塁塁審が警告試合を宣告して、試合再開となった。
試合後、高津監督は「わざとぶつけているわけではないので。申し訳ないと言ったら勝負の世界であれですけれども、攻めている結果だと思います」と説明したが、阪神戦でも梅野隆太郎(8月13日)、近本光司(9月3日)と死球禍が相次ぎ、岡田彰布監督に「情けないのう。2年連続優勝したチームやしのう」と非難される羽目になった。
レッズ時代の2020年にサイ・ヤング賞に輝いたDeNAのトレバー・バウアーが味方の拙守にぶち切れる騒動が起きたのが、7月1日の中日戦だ。
0-2で迎えた6回、バウアーは石橋康太、龍空に連続内野安打を許し、無死一・二塁のピンチを招いたものの、ウンベルト・メヒアをスリーバント失敗の空振り三振、大島洋平を中飛に打ち取り、二死まで漕ぎつけた。次打者・岡林勇希もフルカウントからチェンジアップで二ゴロに打ち取ったかに見えた。
直後、一塁走者の龍空は二塁を回り、三塁を狙ったが、石橋が三塁で止まっていたため、二・三塁間に挟まれてしまう。ゴロを処理した牧秀悟はボールを持ったまま龍空にタッチしようとしたが、この隙に石橋が本塁を狙ったことから、捕手・伊藤光に送球した。ここまでのプレーは特に問題はなかった。
ところが、伊藤がボールを持って石橋を三塁に追い詰めている間に、龍空はまんまと二塁に戻り、打者走者の岡林も一塁セーフ(記録は内野安打)。結局、一死も取れず、オールセーフというまさかの事態に。結果論だが、伊藤がゆっくり石橋を追うことなく、サード・京田陽太に送球し、ラウダウンプレーに持ち込めば、楽にアウトが取れていたはずだった。
信じられないような拙守に、本塁カバーに入っていたバウアーも思わず怒りを爆発させ、“放送禁止用語”を連発。マウンドに戻っても怒りは収まらず、斎藤隆コーチがなだめに来ても、プイと背を向けて、再び“放送禁止用語”を口にした。
それでも気持ちを切らすことなく、冷静さを取り戻し、次打者・高橋周平を投ゴロに打ち取ったのは、さすがだった。だが、味方の守備を信用できなくなったのか、「お前は捕らなくていい」とファーストのネフタリ・ソトを手で制して、自ら猛ダッシュして一塁ベースを踏んだ。
一塁上で投手と打者走者が一触即発のにらみ合いを演じたのが、8月26日の楽天VSソフトバンクだ。
問題のシーンは、1点をリードされたソフトバンクが一死から今宮健太の左越えソロで同点に追いついたあと、8番・リチャードが田中将大の初球、134キロスプリットをバットの先に当て、ボテボテの一ゴロに倒れた直後だった。
一塁ベースを駆け抜けたリチャードが、交錯プレーでも何でもないのに、ベースカバーの田中に何事か言葉を投げかけた。これに対し、田中も振り向いて「おいっ!」と声を荒げ、リチャードをにらみつけた。
実は、リチャードは3回の第1打席の際に時間をかけてバットを構えたり、ファウルのあとにバットを交換するなど、必要以上に時間をかけ、フルカウントから空振り三振に倒れるまで5分近くも要していた。イニング終了後、田中が川口亘太球審に何事か伝える様子も見られ、リチャードの遅延行為をアピールしたことがトラブルの原因のようだ。
だが、幕切れはあっけなかった。イニング終了後、サードの守備に就いたリチャードは、田中のいる三塁側楽天ベンチに向かって頭を下げて謝罪、自ら事態を収拾した。
「パワーはギータ級」といわれるリチャードも今季は打率.115、0本塁打と期待外れ。来季はお騒がせ行動ではなく、試合での活躍ぶりで取り上げられてほしいものだ。
文=久保田龍雄(くぼた・たつお)
両軍が入り乱れて「警告試合」に
死球がきっかけであわや乱闘寸前の騒ぎになったのが、5月20日のヤクルトVS DeNAだ。
2-2の同点で迎えた7回、DeNAは一死満塁で関根大気の右翼線二塁打で2点を勝ち越し。ここでヤクルトは石山泰雅に代わって4番手・小澤怜史をマウンドに送ったが、なおも1死二・三塁で、小澤は次打者・宮崎敏郎に対し、カウント1-1から腰付近に死球を与えてしまう。
この日は6回に牧秀悟が左肘、この回にも佐野恵太が右膝付近に死球を受けており、いずれもチームの主力を襲った3つ目の死球に、ふだん怒りを表に出すことがない宮崎もいら立ちをあらわにし、小澤に向かって何事か言葉を発した。
直後、田中浩康三塁コーチが駆け寄ってなだめると、宮崎は落ち着きを取り戻し、一塁に向かったが、今度は二塁走者の関根が声を上げながらマウンドへ。だが、危険を察知し、いち早く三塁から駆けつけ、小澤をガードしていた村上宗隆が前に立ちはだかり、関根の背中をぽんぽんと叩いて必死になだめる。
その後、外野のブルペンからも選手がダッシュして輪に加わるなど、30人以上の小競り合いに発展。エキサイトしたヤクルト・森岡良介コーチとDeNA・田中コーチを中心にもみ合いが続いたが、ヤクルト・高津臣吾、DeNA・三浦大輔両監督がベンチを飛び出して止めに入り、ようやく騒ぎも収束。責任審判の有隅昭二二塁塁審が警告試合を宣告して、試合再開となった。
試合後、高津監督は「わざとぶつけているわけではないので。申し訳ないと言ったら勝負の世界であれですけれども、攻めている結果だと思います」と説明したが、阪神戦でも梅野隆太郎(8月13日)、近本光司(9月3日)と死球禍が相次ぎ、岡田彰布監督に「情けないのう。2年連続優勝したチームやしのう」と非難される羽目になった。
バウアーがひどい拙守に“ブチ切れ”
レッズ時代の2020年にサイ・ヤング賞に輝いたDeNAのトレバー・バウアーが味方の拙守にぶち切れる騒動が起きたのが、7月1日の中日戦だ。
0-2で迎えた6回、バウアーは石橋康太、龍空に連続内野安打を許し、無死一・二塁のピンチを招いたものの、ウンベルト・メヒアをスリーバント失敗の空振り三振、大島洋平を中飛に打ち取り、二死まで漕ぎつけた。次打者・岡林勇希もフルカウントからチェンジアップで二ゴロに打ち取ったかに見えた。
直後、一塁走者の龍空は二塁を回り、三塁を狙ったが、石橋が三塁で止まっていたため、二・三塁間に挟まれてしまう。ゴロを処理した牧秀悟はボールを持ったまま龍空にタッチしようとしたが、この隙に石橋が本塁を狙ったことから、捕手・伊藤光に送球した。ここまでのプレーは特に問題はなかった。
ところが、伊藤がボールを持って石橋を三塁に追い詰めている間に、龍空はまんまと二塁に戻り、打者走者の岡林も一塁セーフ(記録は内野安打)。結局、一死も取れず、オールセーフというまさかの事態に。結果論だが、伊藤がゆっくり石橋を追うことなく、サード・京田陽太に送球し、ラウダウンプレーに持ち込めば、楽にアウトが取れていたはずだった。
信じられないような拙守に、本塁カバーに入っていたバウアーも思わず怒りを爆発させ、“放送禁止用語”を連発。マウンドに戻っても怒りは収まらず、斎藤隆コーチがなだめに来ても、プイと背を向けて、再び“放送禁止用語”を口にした。
それでも気持ちを切らすことなく、冷静さを取り戻し、次打者・高橋周平を投ゴロに打ち取ったのは、さすがだった。だが、味方の守備を信用できなくなったのか、「お前は捕らなくていい」とファーストのネフタリ・ソトを手で制して、自ら猛ダッシュして一塁ベースを踏んだ。
田中将大とリチャードが“にらみ合い”
一塁上で投手と打者走者が一触即発のにらみ合いを演じたのが、8月26日の楽天VSソフトバンクだ。
問題のシーンは、1点をリードされたソフトバンクが一死から今宮健太の左越えソロで同点に追いついたあと、8番・リチャードが田中将大の初球、134キロスプリットをバットの先に当て、ボテボテの一ゴロに倒れた直後だった。
一塁ベースを駆け抜けたリチャードが、交錯プレーでも何でもないのに、ベースカバーの田中に何事か言葉を投げかけた。これに対し、田中も振り向いて「おいっ!」と声を荒げ、リチャードをにらみつけた。
実は、リチャードは3回の第1打席の際に時間をかけてバットを構えたり、ファウルのあとにバットを交換するなど、必要以上に時間をかけ、フルカウントから空振り三振に倒れるまで5分近くも要していた。イニング終了後、田中が川口亘太球審に何事か伝える様子も見られ、リチャードの遅延行為をアピールしたことがトラブルの原因のようだ。
だが、幕切れはあっけなかった。イニング終了後、サードの守備に就いたリチャードは、田中のいる三塁側楽天ベンチに向かって頭を下げて謝罪、自ら事態を収拾した。
「パワーはギータ級」といわれるリチャードも今季は打率.115、0本塁打と期待外れ。来季はお騒がせ行動ではなく、試合での活躍ぶりで取り上げられてほしいものだ。
文=久保田龍雄(くぼた・たつお)