イチローとのハイレベルな首位打者争いを制する
現地時間23日(日本時間24日)に2024年度米国野球殿堂入りの投票結果が発表される。今年度はエイドリアン・ベルトレを筆頭に複数人の選出が予想されている。
米国野球殿堂特集と題してお送りする第2弾は、ミネソタ・ツインズ一筋で選手生活を送ったジョー・マウアー。2004年に弱冠二十歳でメジャーデビューを飾ると、35歳シーズンの2018年までプレーした。
メジャー通算15シーズンで2123安打を放っただけでなく、なんとイチローの2度を超える3度ものア・リーグ首位打者に輝いた左打ちの好打者だった。シーズン30本塁打超えは一度もなかったが、捕手という重責を担いながら、2000年代のツインズを支えた。
特に語り草となっているのは、6年目の2009年だ。
その年にマウアーが残した成績は、打率.365、28本塁打、96打点。主要3部門の数字は全て自己ベスト。さらに打率に加えて、長打率と出塁率もリーグトップをマークし、文句なしのア・リーグMVPに選出された。
ただ、その年のマウアーは開幕からエンジン全開というわけではなかった。前年のオフに受けた腎臓手術と腰痛のため、4月を全休。シーズン初出場を果たしたのは5月1日だった。
その試合で3打数2安打、翌日に6打数4安打のロケットスタートを見せると、5月終了時点で.414の高打率を残していた。その後も猛打は止まらず6月下旬まで4割台を維持。8月上旬までに.350台まで下落したが、すぐさま上昇気流に乗って、8月中旬には.380台まで戻した。
最終的には.365でシーズンを終えたマウアーと首位打者を争ったのがイチローだった。ちなみにそのシーズンにイチローが記録した打率は.352。日本で7度、メジャーで2度も首位打者に輝いているイチローだが、首位打者を逃したシーズンで最も高い打率だったのがこの年である。
地元ミネソタ出身のスターとして数々の記録を達成
マウアーは30代になってから一塁手や指名打者での出場が増えていった。そんな中、引退前年の17年に.305、現役ラストイヤーの18年にも.282とリーグ平均を上回る打率を残していた。しかも、しっかりと規定打席に到達していたのだから、あと数年は現役生活を送ってもおかしくなかっただろう。
ところがマウアーは、18年のシーズン終了後にファンに向けた手紙で引退を表明。すると、球団は背番号「7」を永久欠番にすると発表し、地元ミネソタ州セントポール生まれのスーパースターに最大限のリスペクトを示した。
捕手というタフなポジションをこなしながら、捕手としてのシーズン最高打率(09年、.365)など数々の記録を達成したマウアー。唯一心残りがあるとすれば、ワールドシリーズどころか、出場したポストシーズンで1勝もできなかったことか。
通算15シーズンで4度のポストシーズンを経験したが、出場した試合は10戦全敗。10試合中9試合で安打を放ち、通算打率は.275と悪くなかったが、0本塁打、1打点で、勝利に貢献することができなかった。
それでも、レギュラーシーズンで残した実績が色あせることはない。有資格1年目での殿堂入りは十中八九間違いないのではないだろうか。
文=八木遊(やぎ・ゆう)