ヤンキースで奮闘する元日本ハム守護神
今季もア・リーグ東地区のレベルが高い。昨季はオリオールズ、レイズ、ブルージェイズの3チームがポストシーズン進出を果たし、4位のヤンキースも2つの貯金をつくった。
今季は8日(日本時間7日)終了時点で首位に立つオリオールズを1ゲーム差でヤンキースが追いかける展開。3位レッドソックスも貯金を3つで勝ち越しており、18勝18敗の4位レイズまでが勝率5割。唯一負け越している最下位ブルージェイズも借金は3つだけで、いつ上位争いに加わってもおかしくない戦力は整っている。
そんな5チームの中で戦前の予想を上回る躍進を見せているのがヤンキースではないだろうか。昨季は8月下旬に借金が6まで増える事態に見舞われたが、終盤に勝利を重ねて何とか32年連続シーズン勝ち越しを決めた。
そして迎えた今季は投打がかみ合い、開幕から5連勝とスタートダッシュに成功。ここまで3連敗は1度もなく、2連敗も2度しかない安定感あふれる戦いを披露している。
好調のヤンキースを支えているのが投手陣、特に救援陣である。今季のチーム防御率はメジャー全体で3位の2.99を誇るが、先発陣の3.46(メジャー9位)に対して、救援陣はなんと2.27。これはもちろんメジャートップの数字だ。
救援陣を引っ張るのは守護神のクレイ・ホームズ。16試合で1勝11セーブをマークし、自責点0を継続している。そしてホームズを支えるのが、左腕ケーレブ・ファーガソンや右腕イアン・ハミルトンといった中堅のセットアッパー陣である。
そんな強固なヤンキースの勝利の方程式に加わろうとしているのが、かつて日本ハムで守護神を務めたこともある右腕のマイケル・トンキンだ。
メッツで戦力外になるも名門で結果を残す
トンキンは栗山英樹監督政権下の2018年に来日。抑えとして起用されるなど53試合に登板し、4勝4敗12セーブ、防御率3.71と、1年目は合格点の成績を残した。
ところが2年契約で来日したものの1年で退団。翌年からメジャー復帰を目指し、マイナーをはじめ米独立リーグやメキシコ、ドミニカ共和国など各地を渡り歩いた。
そしてようやく昨年、ブレーブスで6年ぶりにメジャーのマウンドに戻ると、そのまま定着。ケガによる一時離脱はあったが、45試合に登板し、104勝を挙げたチームの地区優勝に大きく貢献した。
ブレーブスで自己ベストと呼べるシーズンを過ごしたトンキンだが、昨季オフにFAとなり12月にメッツと契約を結ぶと、激動の春を送っている。
オープン戦で防御率0.00と結果を残し、貴重な中継ぎとしてメッツの開幕ロースター入りを果たしたトンキンだったが、自身2試合目と3試合目の登板で炎上。4月5日にDFA(事実上の戦力外)になると、4日後にはツインズに放出された。
デビューから5年間を過ごした思い出の地ミネソタで再起を図ったトンキンだが、初登板で2点を失うと、2度目の登板機会すら与えられず。4日後にDFAになると、その4日後に“古巣”メッツが獲得。再び2週間前と同じユニホームに袖を通すことになった。
しかし、これだけでは終わらない。メッツに復帰後、2試合に登板すると早くも見限られ、僅か18日間に3度目となるDFAとなったのだ。
この時点で今季のトンキンの防御率は6.00。メジャー契約は難しいと思われたが、ヤンキースが声をかける。今季3度目のDFAから3日後、同じニューヨークの名門に拾われると、ここまで3試合に登板。4回2/3を投げ失点2、自責点0と上々の成績を残している。
それでも、いつ戦力外を言い渡されてもおかしくないことは本人が一番理解しているだろう。34歳のベテランにとってブロンクスは“安住の地”となるのか。それとも激動の春はまだ続くのか。元ハム守護神の今後に注目したい。
文=八木遊(やぎ・ゆう)