コラム 2024.07.08. 17:30

メジャードラフト指名から1年。ホワイトソックス傘下の1Aで研鑽を積む西田陸浮の現在地

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1Aカナポリスでプレーする西田陸浮【写真=本人提供】

ホワイトソックス傘下の1Aカナポリスで奮闘中


 昨年の7月11日に米大リーグ、ホワイトソックスから11巡目でドラフト指名されてから約1年。西田陸浮は、ホワイトソックス傘下の1Aカナポリスで奮闘している。

 チームはキャロライナリーグで6月20日までのシーズン前半戦を41勝25敗で南地区の王者となり、早くもプレーオフ進出が決定。西田も5月中盤頃から両足に痛みを抱えながら1番打者としてリーグ10位の打率.281、5月に2安打4試合を含む9試合連続安打、6月に5試合連続2安打を含む7試合連続安打を記録するなど計64安打は同2位、24盗塁は5位タイで、59得点と49四球、出塁率.419は、リーグトップ。今トレーニングキャンプを前に「Low-A(1A)に行けたら上出来」と話していた目標の場でチームの主力として活躍している。


「週6日試合があるという中で、体も心も、はじめの2カ月はすごく大変でした。成績もなかなか思い通りいかないところが多かったのですが、監督が1番で常に試合に出してくれたので調整はしやすかったです」と西田。「得点や出塁率はリーグでトップですが、打率や盗塁数は少し落ち気味です。足の状態も痛みは無くなってきているので、残りの半分は盗塁の企画数にこだわっていきたい」と意気込みを見せた。

 その西田が目指す次なる目標は1Aの一つ上、マイナーリーグでは3番目に高いレベルとなるHigh-Aだ。「今年はHigh-Aに行きたい。セカンドも外野も多いんですけど、僕は両方できるから可能性はある」と自信を覗かせる。


オレゴン大時代に中心選手として活躍


 名門、東北高校から米オレゴン州のマウントフッドコミュニティーカレッジ(短大)に進学、2年間で91試合に出場して打率.383、54打点、100得点、91盗塁を記録し、米大学体育協会1部(DⅠ)の強豪カンファレンス“Pac-12”に属するオレゴン大に編入した。同大では、Pac-12カンファレンス・トーナメントで優勝して全米で64チームだけが戦える“リージョナル”に出場。強敵バンダービルト大がホストとなったナッシュビル・リージョナルでは打率.500でオレゴン大が16強の戦い “スーパーリージョナル”に進出する立役者となり、同リージョナルのMVPに選ばれた。

 それでも西田は、「大学時代いかに伸びたか」の問いに「停滞です。短大を出て大学に行ってからは、変わってない」と話す。「正直もっと(自分の力を)出せたと思っています。そっちの感覚の方が強い。まず、オマハ(あと1勝で逃した“カレッジワールドシリーズ”)に絶対に行けたし、もっと出来た」と振り返る。

 そんな西田が、自身の成長を感じたのはプロになってから。「今、大学で打ったら10~15本打てるんじゃないですかね。それぐらいの感触はあります」と手応え十分だ。

 ドラフト指名を受けたあと、ビザの関係でルーキーリーグへの合流が大幅に遅れたものの、1日でカナポリスに昇格となった。ところが、カナポリスでは打率.224で終えた。

 オレゴン大時代、コーチはいたが、西田に関しては「好きにしていい」と言われていた。だが、「(Low-Aで)1カ月ぐらいしかプレーしていないのに100マイル(約161キロ)投げる投手と3~4回戦いました。全然違いました」と話すプロの世界では事情が違う。

「はじめてコーチがつきました。打つ角度とかそういうのを調べて、こう出せとか、こう使えとか。僕の持ち味を残しつつ、ちゃんと打てる選手にならなければならないということで、打つ練習をしましたね」と西田。得意の盗塁も「ホワイトソックスに入って思いましたが、アメリカ人の方がうまいです。(試合で)常に走ってもいい(立場の)選手が、盗塁メンバーとして5人選ばれて練習をするんですけど、僕が盗塁一番下手くそです。その中には2Aとか3Aの選手がいますが、凄いです。ステップとかも考えているし、タイミングとか、どこを見たらいいとか、すごく学びました」。挑戦が、楽しくて仕方がないといった様子だった。



「今が一番成長できたと思っています」


 アリゾナ州にあるホワイトソックスの練習施設には正月明けから入って練習を重ねた。それから1カ月ほど経って、西田は「今が一番成長できたと思っています。プロになってからが。素振りとかも全部含めて、自分で『あ、うまくなったな』って」と笑顔を見せた。

「(昨年)初のシーズンが終わって、結果もあまり出なくて、そこからです。『野球がしたい!』って。だから、野球上手くなると思います」。そう話す表情に充実感が滲む。

 実は、西田の渡米は、留学先の短大の練習環境が驚くほど悪かったことから始まる。そんな中、クリスマスも正月も1000回の素振りを毎日欠かさず自らを高めてきた。無名選手だったためにサマーボールは一番低いレベルから始め、そこから最高レベルに昇格。一昨年夏に出場した最も注目度の高い“ケープコッドリーグ”も10日間契約から最後まで生き残り、プレーオフでは.409の打率を残した。

 どんな苦労も初志貫徹の精神と自らの実力ではねのけてきた。今は留学とサマーボールへの参加をサポートする会社も経営、同じく短大からDⅠのカリフォルニア大アーバイン校に編入して活躍、この6月に卒業した大山盛一郎も加わることになるなど、熱心に取り組んでいるが、「もう野球が好き。単純に打つとか、守るとか、投げるとかが大好き。だから練習します」。

 厳しい世界に入って、改めて芽生えた野球への愛情は、プロキャリアが始まったばかりの西田の可能性をますます広げている。

取材・文=山脇明子

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