先発では結果を残せずブルペンに配置転換
タイガースの前田健太が復調の兆しを見せている。
現地28日(日本時間29日)に行われた古巣ツインズとの一戦で、前田は3回から3番手で登板。5回83球を投げ、5本の安打を許したものの、1失点で切り抜け、今季の防御率を7.07から6.72へ良化させた。
タイガースでこれが1年目の前田。開幕前はチームもローテーションの中心を担う一人として大きな期待をかけていた。ところが開幕からなかなか調子が上がらず、特に今月上旬に先発した2試合で計15失点と炎上を繰り返した。
オールスター休みを前にブルペンに配置転換された前田にとって、28日のツインズ戦は3試合目のリリーフ登板。配置転換後は、その3試合で防御率3.38をマークするなど、その職務を全うしている。
今季は先発で結果を残すことができず、救援に回った形の前田だが、かつて所属したドジャースでは不本意な形でリリーフ起用されることも多かった。
これは出来高に大きな比重がかかる契約内容だったためで、ドジャースは前田の先発回数を抑え、“経費削減”を図っていたとみられる。シーズン後半になると決まって救援で起用されたのはそのためだ。
ただ前田自身はリリーバーとしても好成績を残していたことは疑いのない事実でもある。
これまでのメジャー通算成績を先発・救援で分けると、先発時の防御率4.20に対して、救援時は3.20と大きな開きがある。奪三振率も9.5と11.7なので、前田は「一球入魂」が求められる場面でより高いパフォーマンスを発揮するタイプの投手なのかもしれない。
ただ、あと36勝に迫った日米通算200勝を目標に掲げる前田にとって、現在の配置転換は腰掛けに過ぎないだろう。ロングリリーフで結果を残し続ければ、またすぐに先発登板の機会が回ってくるはずだ。
それでも36歳という年齢的にも36勝は相当高い壁となる。仮に来季から毎年10勝したとしても、達成には3年半を要する。100球前後の球数制限がある昨今のメジャーでは白星を1つつかむこともなかなか難しい時代。それなら「150勝&150セーブ」を狙ってみるのも一つの選択肢になるだろう。
日米通算“0セーブ”の前田にとって今からセーブ数を積み重ねていくのは36勝以上に厳しい道のりかもしれない。ただ、救援時の成績を考えれば、クローザーとして花開く可能性は決して低くないはず。過去には前田と同じようにスライダーを武器にしていた斎藤隆氏がマイナー契約から這い上がり、38歳シーズンにかけての3年間で合計81セーブを挙げた前例もある。
先発にこだわるのか、それとも新たな道を少し模索してみるのか。前田にとって今の状況は一つの分岐点となるかもしれない。
文=八木遊(やぎ・ゆう)