コラム 2024.09.10. 11:30

野球・大嶋匠さん|市民のために、畑違いのフィールドでの活躍<後編>

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元日本ハムの大嶋匠さん
 大嶋匠さんが「有名人」になったきっかけは、2011年10月のドラフト会議だった。早稲田大ではソフトボール部の強打者として活躍し、硬式野球は未経験だった彼は、北海道日本ハムファイターズからサプライズ指名を受ける。プロ野球ファンならば、当時の盛り上がりをご記憶だろう。

 現在34歳の大嶋さんは、2019年4月から高崎市役所に勤務している。市役所のソフトボール部でも汗を流し、精悍な風貌や逞しい体格は健在だ。とはいえ日々の仕事は地道な業務の連続で「公務員」を地で行く生活を送っている。市役所とプロ野球は明らかに畑違いだが、彼は新しいフィールドでも自然体に、気負いなく生きている。

 インタビュー後編では異色のプロ野球選手だった大嶋さんのセカンドキャリアの「入口」から現在についてお聞きした。


――― プロ野球は7年目で引退されましたが、戦力外通告は突然だったのですか?

年数を重ねると、試合の起用方法などから、肌感覚で大体分かります。だから「今年だろうな」という予感はありました。夏に(右膝の)半月板を負傷して、そこから試合にも出ていないので、覚悟していました。戦力外通告は10月の頭だったので、僕は「第1次」ですね。「やり切るだけやり切ろう」と思ったプロの7年だったので、不完全燃焼とかそういった感情は一切なく、「やりきった」と言い切れます。

――― では12球団合同トライアウトも……。

行っていないです。「野球は辞める」って決めていたので。

――― その後はすぐ公務員試験の勉強をされたのですか?

まず膝の手術をしました(苦笑)。1カ月くらい遊んで11月、12月から3月くらいまではずっと勉強をしていました。

――― 高崎市役所に採用されるまでの経緯はどうだったのですか?

まず元々(早大時代に)ここを志望していたということがありました。あと自分は「転職ありき」というか、色んな仕事を経験するキャリアが一般的だと考えています。市役所は色々な部署があって、わざわざ転職しなくても、転職と似たような経験ができるなと思ったんです。

――― 仕事を変えることに対して、最初から前向きだったんですね。

そっちの方が楽しそうだなと思っていました。

――― 市役所の採用試験は新卒と同じように受けたのですか?

年齢的にもう「経験者採用枠」でした。筆記試験はおそらく新卒と同じで、2時間で120問くらい解くものです。民間でも使うような一般常識的な内容で、マークシート方式でした。そのあと面接が3次までありました。

――― 志望動機とか、色んなことを聞かれると思うのですが、どう答えたのですか?

「何をしたいか」とか、本当に当たり前の内容しか聞かれていないです。「市民のためになる仕事がしたい」くらいのことをお話しました。




――― 大谷翔平選手や栗山英樹監督みたいな人たちに囲まれていたプロ野球から、「普通の人」が集まる市役所に来て、ギャップはなかったですか?

僕が「普通の人」なので、それはないです。別にプロ野球を目指していた高校時代でもなかったし、急にソフトボールからプロ野球に挑戦させてもらえたような人間で、「元プロ野球選手だから」みたいな感じはないんです。

――― 仕事中に「プロ野球にいた大嶋さんですよね?」と気づかれたことってありますか?

仕事上ではまったく無いですね。市役所の中を歩いていて2、3回くらいです。まず存在を知られていないですし、別に野球の話もしないですし。

――― 市役所の仕事をされていて、アスリートとしての経験が活きたなという部分はありますか?

それはよく聞かれるんですけど、正直「無いよ」といつも思っています。強いて言うなら「気合と根性」でしょうか。

――― 逆に30歳近くで公務員になって「これは足りなかった」「やっておけばよかった」というポイントはありましたか?

それも無いですね。「やりながらでいいんじゃない?」と思います。

――― お話をしていて日焼けが気になったのですが、ソフトボールはされているわけですね?

一応そうですね。まあ、楽しんでやらせてもらっているくらいの感じです。市役所のソフトボール部は週に3回の練習があって、水・木の仕事終わりと、あとは土日のどちらかです。日焼けは元々ですね(笑)




――― 国体の群馬県選抜でもプレーされているんですか?

去年はしていましたね。今年はこれから選考なので、まだ分からないです。

――― アスリートは誰にでもセカンドキャリアって来ると思いますが、アドバイスはありますか?

元気よく、挨拶することでしょうか。でも、普通にしていればいいのでは? と思います。別にExcelができなくもやっていればできるようになるし、Wordだって使えるようになりますから。

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取材=大島和人
写真=須田康暉
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