ワールドシリーズ制覇を懸けたメジャーリーグのポストシーズンは、現在、地区シリーズの真っただ中。現地9日(日本時間10日)には、全米各地で4試合が行われ、メッツがリーグ優勝決定シリーズ進出一番乗りを決めた。
他の3カードの決着は翌日以降に持ち越しとなったが、15年ぶりの世界一に一歩近づいたのがメッツと同じニューヨークに本拠地を構えるヤンキースだ。
レギュラーシーズンで94勝を挙げ、ア・リーグの第1シードを獲得したヤンキース。チームの顔は日本のファンにもお馴染みアーロン・ジャッジである。
今季のレギュラーシーズンでは持ち前のパワーを如何なく発揮し、打率.322、58本塁打、144打点で二冠を獲得。今季41本塁打を放ったフアン・ソトとのコンビは“メジャー最強”との呼び声が高い。
ただ、ロイヤルズとの地区シリーズでは、思うような打撃ができていないようだ。2番を打つソトは打率3割(10打数3安打)ちょうどと合格点の数字を残しているが、長打は二塁打1本、打点も1つだけだ。
より深刻なのはジャッジの方。昨季までもポストシーズンでは苦しんでいたが、このシリーズはさらに低迷。3試合で11打数1安打、5三振と自慢のバットは湿りっぱなしである。
そんな主砲の不振を“バットと足”でカバーしたのが、ヤンキース第三の男、ジャンカルロ・スタントンだった。
マーリンズ時代に2度本塁打王に輝き、17年オフにヤンキースと13年3億2500万ドル(当時のレートで約374億円)の大型契約を結んだ右の大砲は、移籍初年度こそ38本塁打を記録したが、その後は故障と不振に苦しんできた。
19~20年の2年間は合計41試合の出場に留まり、7本塁打に終わると、21年以降の本塁打数は35、31、24、27と推移。時に規格外の一発を放つこともあるが、確実性を欠き、不良債権扱いを受ける日々を過ごしてきた。
ここ数年は度重なるケガで常に満身創痍の状態。ロイヤルズとの地区シリーズ第2戦ではその“鈍足”も話題となった。
ところが、1勝1敗で迎えたロイヤルズとの第3戦。スタントンは5番指名打者(DH)で先発出場すると、5打数3安打、1本塁打、2打点の大活躍でチームの勝利に貢献した。
改めてこの日のスタントンの打棒を振り返っておこう。
4回表の第2打席は、二死一塁の場面。2球目の甘く入ったシンカーを真っ芯で捉えると打球は左中間のフェンスを直撃。その間に一塁走者が生還し、待望の先制点をもたらした。
その後、2-2の同点で迎えた8回表は一死走者なしの場面で打席に立った。5球目の低めスライダーをすくい上げると、左翼席に飛び込む勝ち越しソロ。結局、この1点をヤンキース救援陣が守り切って、シリーズを2勝1敗とした。
また、得点にはつながらなかったが、6回表の第3打席でセンターへクリーンヒットを放つと、なんと自身4年ぶり(2020年8月3日)となる盗塁を記録。ロイヤルズバッテリーが無警戒だったとはいえ、献身的な姿勢はスタントンの執念を感じさせた。
大谷翔平を彷彿とさせるパワーとスピードでチームを勝利に導いたスタントンに対して、アーロン・ブーン監督も「最高の仕事をしてくれた。こういう大事な場面で、よく集中できるものだと感心するよ」と大満足のコメントを残している。
これで地区シリーズ突破に王手をかけたヤンキース。スタントンの活躍を刺激に主砲ジャッジが目覚めるようなことがあれば、一気に世界一への階段を駆け上がってもおかしくない。
文=八木遊(やぎ・ゆう)
他の3カードの決着は翌日以降に持ち越しとなったが、15年ぶりの世界一に一歩近づいたのがメッツと同じニューヨークに本拠地を構えるヤンキースだ。
レギュラーシーズンで94勝を挙げ、ア・リーグの第1シードを獲得したヤンキース。チームの顔は日本のファンにもお馴染みアーロン・ジャッジである。
今季のレギュラーシーズンでは持ち前のパワーを如何なく発揮し、打率.322、58本塁打、144打点で二冠を獲得。今季41本塁打を放ったフアン・ソトとのコンビは“メジャー最強”との呼び声が高い。
ただ、ロイヤルズとの地区シリーズでは、思うような打撃ができていないようだ。2番を打つソトは打率3割(10打数3安打)ちょうどと合格点の数字を残しているが、長打は二塁打1本、打点も1つだけだ。
より深刻なのはジャッジの方。昨季までもポストシーズンでは苦しんでいたが、このシリーズはさらに低迷。3試合で11打数1安打、5三振と自慢のバットは湿りっぱなしである。
そんな主砲の不振を“バットと足”でカバーしたのが、ヤンキース第三の男、ジャンカルロ・スタントンだった。
マーリンズ時代に2度本塁打王に輝き、17年オフにヤンキースと13年3億2500万ドル(当時のレートで約374億円)の大型契約を結んだ右の大砲は、移籍初年度こそ38本塁打を記録したが、その後は故障と不振に苦しんできた。
19~20年の2年間は合計41試合の出場に留まり、7本塁打に終わると、21年以降の本塁打数は35、31、24、27と推移。時に規格外の一発を放つこともあるが、確実性を欠き、不良債権扱いを受ける日々を過ごしてきた。
ここ数年は度重なるケガで常に満身創痍の状態。ロイヤルズとの地区シリーズ第2戦ではその“鈍足”も話題となった。
ところが、1勝1敗で迎えたロイヤルズとの第3戦。スタントンは5番指名打者(DH)で先発出場すると、5打数3安打、1本塁打、2打点の大活躍でチームの勝利に貢献した。
改めてこの日のスタントンの打棒を振り返っておこう。
4回表の第2打席は、二死一塁の場面。2球目の甘く入ったシンカーを真っ芯で捉えると打球は左中間のフェンスを直撃。その間に一塁走者が生還し、待望の先制点をもたらした。
その後、2-2の同点で迎えた8回表は一死走者なしの場面で打席に立った。5球目の低めスライダーをすくい上げると、左翼席に飛び込む勝ち越しソロ。結局、この1点をヤンキース救援陣が守り切って、シリーズを2勝1敗とした。
また、得点にはつながらなかったが、6回表の第3打席でセンターへクリーンヒットを放つと、なんと自身4年ぶり(2020年8月3日)となる盗塁を記録。ロイヤルズバッテリーが無警戒だったとはいえ、献身的な姿勢はスタントンの執念を感じさせた。
大谷翔平を彷彿とさせるパワーとスピードでチームを勝利に導いたスタントンに対して、アーロン・ブーン監督も「最高の仕事をしてくれた。こういう大事な場面で、よく集中できるものだと感心するよ」と大満足のコメントを残している。
これで地区シリーズ突破に王手をかけたヤンキース。スタントンの活躍を刺激に主砲ジャッジが目覚めるようなことがあれば、一気に世界一への階段を駆け上がってもおかしくない。
文=八木遊(やぎ・ゆう)