ちなみに1週間のスケジュールは平日は2日間練習、2日間が補習と呼ばれる勉強、1日が休みとなっている。補習も単に学校の勉強をするのではなく、工夫が凝らされた内容になっているそうだ。
「補習の時間は2時間あるのですが、1時間は現代文の長文読解に当てて、残りの1時間は英語と数学を1回ずつとしています。長文読解にしている目的の一つはまず語彙力の向上。自言語の能力をしっかり身につけることが将来の考える力に繋がるということを聞いてそうしています。あとは個別にやるのではなく、調べる箇所を分担制にしてグループワークで話し合うようにしています。そうすることで自分だけでは気づかなかった部分をみんなで発見できることがある。単純に学校の勉強、宿題をやるよりもその方が将来はプラスになるのではないでしょうか。
大学の野球部の学生が就職でラグビーなどに比べて弱いのは、指導者の指示を体現する割合が高いからだと言われています。だからそうならないように、中学生のうちから自分たちで考えて行動できるようにし
ておかないといけないと思って取り組んでいます」
野球のプレーだけでなく、それ以外の部分でも将来を見越した取り組みを行っているというのは非常に画期的なものだった。バントも高校野球のために練習はするものの、試合では禁止しているという。それも将来を考えてのことだろう。
中学生だから、子どもだから、そういった固定観念で選手の可能性を閉ざすのではなく、安全に考慮したうえであらゆる手法を示しながら自主性に任せる。前橋中央硬式野球倶楽部のような取り組みが増えれば、野球界全体の価値も向上するのではないだろうか。そんなことを考えさせられる取り組みだった。
(取材・西尾典文:撮影:編集部)