相模原市立相陽中は、JR相模線・下溝駅から徒歩10分の場所にある。全校23クラスの大規模校で、学区も広い。徒歩40分かけて、通学している生徒もいる。
10月の放課後、15時50分頃にグラウンドを訪れると、長い棒やデッキブラシを使って素振りをしていた。
「今日は5時間授業なので15時半ぐらいから始まって、完全下校が17時。6時間授業のときは実質50分ぐらいしかできません。それでも毎日、練習をやって、積み重ねていくことに意味があると思っています」
素振りは、下半身の動きを止めて、腕の動きで振りにいったり、低めをゴルフスイングのようにすくいあげたり、さまざまな打ち方を取り入れていた。
「長いものを振ったほうが体の動きを覚えやすい。いろんな動きをするのは、中学生のうちにできるだけたくさんの打ち方を覚えてほしいから。ひとつの打ち方しかできないと、バッティングの幅がなくなってしまいます」
内藤監督は毎年、打ち勝つチームを作り上げてくる。そこにあるのは、「打てなければ、高校野球で通用しない」という想いだ。毎日、30分の朝練では打ち込みを行い、放課後もどんなに短い時間であってもバットを振る。
素振りもただ振るだけではない。
「左ピッチャー、インコースひざもとのカーブ!」というように、球種とコースを口に出しながら、スイングを繰り返していた。
「素振りをすると、小学生や中学生は下を向きながらバットを振ること多い。それは、ピッチャーをイメージできていないから。口に出せば、ピッチャーのほうを見て、タイミングを合わせるはずです」
また、「目を使って!」「目で追いかけて!」というアドバイスを盛んに飛ばしていた。黒目でボールの軌道を追いかけながら、バットを振る。これも、球種とコースをイメージしなければできないことだ。
そして、素振りの最後にはこんな指示。
「ピッチャーは誰? 戦っているピッチャーが誰なのか、こっちから見ていてわからない。戦う相手がぼんやりしていたら勝てないぞ」
すると、選手たちは「大野北中、○○!」と具体的な名前を口に出してスイング。漠然としがちな素振りも、イメージ力を高めることで、実戦につながっていく。(取材・写真:大利実)
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