練習の最後は子どもたちお待ちかねのバッティング練習。この日は6年生チームと5年生チームに別れて紅白戦形式で行われた(ピッチャーのみ手動マシンを使用)。打順もポジションも作戦も子どもたちが決める。大人たちはそれを見守るだけだが、時折選手たちにポジティブな声をかけていた。
「さっきのサードゴロ、すごくいいダッシュだったよ」
「今のゴロ、前に突っ込んだら絶好のジャンピングスローのチャンスだったなー」
言われた選手たちは照れながらも笑みを浮かべ「次はやってやるぞ!」と次のプレーを心待ちにしているようだった。
大人たちは子どもたちを褒めるだけではない。たとえばセカンドフライに対して、「セカンド!」と指示を出した子に対しては、
「『セカンド!』という声だけじゃ少し足りない。他にどんな声をかけてあげられる? 『前? 後ろ?』そうだよな。そこまで言ってあげたほうが取りやすいよな。どんな声をかけてあげたらその選手は捕りやすいか? 人のことを考えながらプレーできるようになったら、自分ももっと上手くなるよ」
「前とか後ろとかも言ってあげろ」と初めから答えを押し付けるのではなく、子どもたちに問いかけ、考えさせていることがポイントだ。
楽しそうに行われていた紅白戦だったが、勝つことに対しては子どもたちも真剣だ。バントを打ち上げてしまった子には、「バットのヘッドがちょっと下がっていたよ」と別の子がすかさずアドバイスを送っていたし、ミスから5年生チームにサヨナラ負けを喫した6年生チームの一人は責任を感じて涙を流していた。そして、その様子を茶化しながらも6年生たちが「お前のせいじゃない」と慰めていた。
高橋監督が大事にしている「子どもたちが自分で考える」「野球を楽しむ」「仲間を思いやる」ということが凝縮されたような紅白戦だった。
最後に高橋監督に、子どもたちに将来どのように育って欲しいかを尋ねた。
「次のステージでも野球を続けて欲しいですね。そこで試合に出たり、活躍してくれるともちろん嬉しいんですけど、レギュラーではなくてコーチャーだったり応援に回った時に、腐らずやってくれる子になってほしいですね。それは野球が好きだったり、仲間を思う気持ちがあるからできることだと思うので」
高橋監督が望む将来へ子どもたちは一歩ずつ歩んでいる。そんな思いがした小金原ビクトリーの練習だった。(取材・文、写真:永松欣也)