選手に考えさせることが重要と話す金澤監督だが、もう一つ大事にしているのは選手が考えたことを否定せずにまずは認めるということだ。そのエピソードとして面白い例が選手の髪型である。高校野球を筆頭に野球部員は丸刈りというチームが多いが、越谷ボーイズは身だしなみとして乱れていなければ髪型は自由だという。これも監督の考えではなく、選手からの意見がきっかけだったそうだ。
「ある時3年生の一人が坊主頭からだいぶ髪が伸びていたので指摘しました。そうするとその子が髪を伸ばしたいと言ってきたんですね。その時はすぐにOKにしたわけではないのですが、『坊主頭にすることと野球が何か関係あるんですか?』と言われて、確かにそうだなと思ったんです。それからしばらくして髪型も自由にしました」
慣例だからと言って丸刈りにするというのはまさに考えることを放棄した状態と言えるだろう。しかし現在の野球部においてはその変更を選手から言い出すことはなかなか難しいのではないだろうか。そんな中でも選手が監督に「髪を伸ばしたい」と言い出したこと、それを監督が受け入れたということが越谷ボーイズというチームをよく表している。そしてそのような環境で育った選手の方が、監督の押しつけの下でプレーした選手よりも考える力が身についていることが多いのではないだろうか。些細な例かもしれないが、非常に重要なことと言えるだろう。(取材・写真:西尾典文)
後編は実際の練習の様子をお届けします。