ニュース 2019.03.01. 16:15

【二松学舎大附】市原勝人監督が語る「高校で伸びる選手」の条件



近年少年野球でも問題視されるのが、投手ができる選手が少ないなどの理由からエース投手に依存してしまうといった、特定選手の固定起用だ。プロ野球選手ならまだしも、まだ身体が出来上がっていない子どもには身体への負担が大きい。

「指導者が安心したいという思いがあるからこそ、固定した選手起用を続けるのだと思います。『この子を使えば大丈夫』や『この子で負けたのなら仕方ない』といった安心感や言い訳を作っています。でも、野球は長いイニングを戦うわけです。調子が悪く、疲れていたら違う選手を出せばいいだけ。
これは私の体験談ですが、甲子園で初回にワンナウトも取れず3失点で降板した先発投手がいました。指揮を執る私も『これはマズい』と不安になりましたが、投手を交代したことで徐々に試合は落ち着き、気づけば同点に追いつくことができました。指導者が選手起用で怖がることはない、そう改めて勉強になった試合でしたね」。

試合に勝ちたい以外にも、子どもを自らの手で育てたいという思いを持つ指導者には、必要以上に手を加えることの危険性を認識して欲しいと市原監督は言う。

「多くの指導者が子どもの球速が一気に5キロや10キロアップした時に手を加えたいと感じます。でも、球速が上がったということは良いフォームになり、身体が出来上がってきたから起きる現象です。今がとても良い状況にも関わらず指導者が下手に手を加えて方向性を間違えたら子どもがかわいそうですよ。指導者は伸びる可能性のある子どもを潰すこともできてしまいます。でも、子どもが育つ環境を作るのが指導者の本来の役目ではないでしょうか」。



指導者の理想を子どもに押しつけたとしても、子ども自身がそうなりたいと思っていなければ戸惑うだけかもしれない。野球は技術性の高いスポーツだからこそ、大人が簡単に思える動作も、子どもからしたらとても難しい動作なのだ。

「『ここをこう直せ!』と言われて直すことができたら、みんな良いピッチャーになります。でも、直せないところが野球の面白いところでもある。中学生に対してプロ野球選手のフォームを教えても、筋力がないのだからできるわけがありません。うちの1年生にだってへんてこりんなフォームの選手が沢山いますよ(笑)。でも、それはまだまだ自分の身体を支えられるほど筋力が発達していないからです。子どもが成長するまで(フォームを)いじらないケースもあるということを知って欲しいですね」。

「市原監督は厳しさ以上に、自分たちを思いやる優しさを感じる」と、話を聞いた選手が口を揃えて言う。子どもに過度な期待をし、必要以上に練習をする時間よりも、どうすれば子どもが自然と育つ環境になるのか、そう考える時間の方が指導者にとって大切なのかもしれない。(取材・写真/細川良介)

「高校野球」関連記事

< 1 2

ポスト シェア 送る
連載・コラム
カラダづくり
練習
お役立ち
チーム紹介
TOPICS