ロッテ・山本大斗[撮影=岩下雄太]

 「(球団から)来年レギュラーとって、30発打ってくれと言われました」。

 ロッテ・山本大斗は今季プロ初本塁打を含む、チーム日本人最多の11本塁打を放ち、長距離砲への第一歩を今季踏み出した。

 昨季イースタン・リーグの本塁打、打点の二冠に輝いたロッテ・山本大斗は、昨年8月以降、“左足の使い方”、“タイミングの取り方”を意識し、ファームで8月以降の打率.377をマークしたが、「そのまま継続して、甘い球を逃さないとかを意識してオーストラリアでもやっていました」とシーズン終了後に参加したオーストラリアのウインターリーグでは20試合に出場して、打率.301、1本塁打、7打点の成績を残した。

 ウインターリーグ終了後、「ちょっとだけ休んで、すぐいい感じで体脂肪も落として、体もいい感じで出来上がったので、順調かなと思います」とし、「去年の後半、いい感じで終われたので、そのまましっかりそれがさらに良くなるようにやっています」と、1月の自主トレでも取り組んできたことを継続。

 石垣島春季キャンプでは、初日に全体練習後に栗原健太打撃コーチとマンツーマンで練習していた。山本は「足の使い方とか、僕がお願いしてみてもらって、気づいたこととかあったら教えてもらいたいなと思ってみてもらいました。久々にコーチに見てもらうので、見てもらおうかなと」と明かした。

 昨季もファームで指導してきた栗原コーチは山本大について「夏頃からサブロー監督のアドバイスで取り組んで、今はだいぶその動きに慣れているんじゃないですかね」と評価。

 また、キャンプでは同じ右の長距離砲外野手の山口航輝、ドラフト1位・西川史礁(青山学院大)と同組で打撃練習を行った。

 山本は「同じタイプ3人で組まれているのかなと思いますけど、2人ともいい打球を打つので、自分も負けないように。意識するところはしっかりして、その中で2人よりもいいものを見せられたらなと思うんですけど、現状は見せられていない。この2人と打っているととにかく力が入ります」と2月8日の取材で話していた。

 石垣島春季キャンプ終盤となった2月13日に改めて訊くと「その後も変わらず、いつも力が入ります。同じタイプの3人が並べられているので、競争というか、そういうことだろうなと思って3人で喋りながら、またグループ一緒だねと話をしています。みんな力が入るといっていました」と明かした。

 山本は「8月くらいからやってきたことを継続してやっているので、一軍の練習試合でどれぐらい通用するのか楽しみ」と話し、2月16日から始まった対外試合では、2月22日の中日とのオープン戦で、1-1の9回二死満塁の第1打席、清水達也が2ボール1ストライクから投じた4球目のストレートをライトスタンド最前列に飛び込む第1号満塁本塁打を放つと、翌23日の韓国ハンファとの練習試合でもバックスクリーンに豪快な一発。

 さらに途中出場した3月1日の韓国ロッテ戦でもレフトスタンドに本塁打を放ったが、練習試合・オープン戦で打率.158(38-6)、3本塁打、9打点とアピールできず。

 「フォームどうこうは気にしていなくて、気持ちの部分だったりとか、一軍の舞台だと自分のスイングができなくなったりと思っていた。正直、オープン戦は僕が結果を求めすぎたというか、ちょっと小さくなっていた部分があった」。

 昨年一軍を経験してファームを落ちた時と、今回は開幕前にファームを落ちた時では気持ちの面で変化はあったりしたのだろうかーー。

 「とにかくいつ上がっても打てるようにというのと、チャンスが多くないのもわかっていますし、しっかり結果を残すにはそういうところが大事かなと思っていました」。

 ファームでは「準備の段階だったり、目付けの部分、待ち方、ファームで打てても一軍ではどうかなと考えて、ホームランを打っても納得いっていないホームランもファームではありましたし、そういったところを自分に厳しくやっていましたね。今回は思い切って、打てなかったら自分が練習するしかない。それぐらいの準備はしてきたので、という感じです」と、打率.365、5本塁打、21打点と結果を残し、4月12日に一軍昇格を果たした。

 「準備の段階であったり、やってきたことをやれば絶対に打てると思うので、そこだけですね。小さくならないことと、自分のできることをする、それだけです」。

 4月16日の日本ハム戦、「初球から思い切り振りにいった結果ホームランを打つことができてよかったです」と、0-0の6回一死一、三塁の第3打席、杉浦稔大が投じた初球の134キロカットボールをレフトスタンド上段へプロ初本塁打。

 その後、試合に出場したり、しなかったりということがあったが、5月10日の西武戦で4月29日のオリックス戦以来のスタメン出場を果たすと、同日の西武戦から16日の日本ハム戦にかけて6試合連続安打。5月13日の楽天戦では、「逆風でしたけど打った瞬間行ったと思いました」と第2号ソロを放った。

 交流戦が始まった6月4日の巨人戦でプロ入り初めて4番で出場。同日の巨人戦の第1打席、井上温大が投じた1ボールから2球目のスライダーをライトラグーン席に放り込んだ一発は良かった。「あれは外の変化球だったので、それを引っ張らずにしっかり外の球をライトにいつも通り打てたというのは、練習通りだったので、それは良かったなと思います」と振り返った。

 6月15日のヤクルト戦では、0-2の4回無死一塁の第2打席、「3ボールだったので甘いところにきたらいってやろうと思っていました。そのポイントに来て、自分のスイングで打つことができたので良かった」と、高橋奎二が3ボール0ストライクから投じた4球目の150キロストレートをレフトへ上段に第5号2ランを放つと、2-2の6回無死一塁の第3打席、「前の打席と同じでカウント有利だったので思い切りいきました」と高橋が2ボールから投じた3球目のチェンジアップをレフトスタンドに一時勝ち越しとなる一発。これが山本にとって一軍の公式戦では初となる1試合2本塁打となった。

 5月17日の取材では「(これまで取り組んできたことが)出せている時もあれば、出せていない時もあるので、その確率を高めて行きたいです」と話していたが、6月14日の取材でファームでやってきたことの確率を高めていきたい部分に関して改めて訊くと、「率的にはまだまだですけど、その中でも2ストライク・2球で追い込まれてから(カウント)3ボール2ストライクに持って行けたり、3ボール2ストライクから勝負できたり、自分の中ではできるようになってきている。そこを四球を取り切ったり、ヒットを打てたり、そういったことができるようになれば率も上がってくるし、もっと自分のバッティングの幅が広がるかなと思います」と分析。6月20日のDeNA戦で、ケイから追い込まれてから本塁打を放った。

 リーグ戦再開後、6月27日のソフトバンク戦から7月1日の楽天戦にかけて4試合連続ノーヒットということもあったが、この時期について山本は「あの時は体の状態もあまり良くなくて、そこもちょっとあって、あまり自分のいつも通りのプレー、スイングができていなかった。割り切ってやっていました」と明かす。

 7月2日の楽天戦でリーグ戦再開後初安打を放つと、7月5日のオリックス戦で今季2度目の1試合2本塁打で、シーズン二桁本塁打を達成。

 交流戦の時は「もっと打てるなと自分の中で、(本塁打を)打てる球はあったなと思いますね」と話していたが、「狙っている球というか、目付け通りいけた時は自分の中で長打というか、ホームランを狙えている球はありますね」と自信を見せた。

 7月6日のオリックス戦では、0-0の初回二死一塁の第1打席、九里亜蓮が2ボール2ストライクから投じた5球目のインコースストレートを左安、続く1-0の3回二死走者なしで九里が投じた初球のインコースシュートを左安と“インコース”の対応も良かった。

 山本は「シュートとスライダー、コースで張っていたので、インコースはインコースで張っていたので、普通に狙い通り打てたかなと思います。打ち方は別に特に何も。コースを狙っていただけです」と説明した。

 7月16日にプラスワン投票で『マイナビオールスターゲーム2025』初出場を決めると、『4番・指名打者』でスタメン出場したオールスター第2戦、0-0の初回一死一、二塁の第1打席、「いい当たりになってよかったです。気持ちよかったです。オールスター初ヒットが先制タイムリー。もう最高です」とオールセントラルの先発・村上頌樹(阪神)が1ボールから投じた2球目のストレートを捉え、左中間を破る2点適時二塁打、大舞台で結果を残した。「いろんな練習、考え方を聞いたので、自分に合ったものを試しながらやっているところはありますね」と、オールスターは充実の時間になった。

 チームに戻って後半戦も、その長打でチームの勝利に貢献したいところだったが、苦しんだ。

 交流戦期間中の6月14日に取材した際、「課題はボール球に手を出してピッチャーを助けるとか、ピッチャーを助けないことが一番自分の中であります」と“ボール球に手を出していること”を課題に挙げていたが、8月20日の取材で「僕が振っていたのもあって、ストライクゾーンのギリギリで攻められたりとか、僕もそれに反応してしまう。自分も悪いんですけど、ボール球でも振ってくれるとあっちも思っているので、そういうところは配球は変わったなと思いますね」と、相手バッテリーの攻め方の違いを感じたようだ。

 この時期、「サブローさんに付き合ってもらって、朝からずっと打っているので、ちょっとずつ結果を出せていけたらなと思います」と、期待されている長打力を発揮するため、練習を積んだ。

 結果を出せず苦しい期間が続いていたが、バッティングの引き出しは増えており、「こういうスランプはこれからもあると思うので、ここでいかに早く調子を戻せるか、来年にも、それ以降にも繋がる、いいシーズンといったらあれですけど、ある意味勉強になるシーズン。調子の戻し方も勉強しながらやっています」と前向きに捉えた。

 8月は月間打率.156、1本塁打、1打点と不本意な月になったが、9月に入り外角の球に手を出すケースが少なくなった。9月2日の日本ハム戦、8回二死一、二塁の第5打席、上原健太に対し3ボール2ストライクから粘りに粘って11球目の外角136キロフォークを見送り四球を選べば、9月11日のソフトバンク戦、8-1の5回一死一塁の第3打席、上茶谷大河が投じた初球の140キロ外カットボールを見極めボール、2ボール1ストライクから4球目の外角140キロカットボールを見極めボール、3ボール1ストライクから5球目の外角のカットボールをレフト前に放った。本人も「あれもちゃんと目付けができて良かった感じですね」と振り返る。

 外のボール球に手を出す場面が減少してきているが、「そこは調子も戻ってきたりして、そこを見極められるようになってきました」と自己分析。

 右中間への長打も増えたのも9月。16日のオリックス戦、0-3の4回無死一塁の第2打席、「ずっと右中間をイメージしていたので、それが結果につながりました」と、田嶋大樹が1ボール2ストライクから投じた外角のストレートを逆らわずにライトオーバーの二塁打。

 18日の楽天戦では、6-0の2回一死三塁の第2打席、「とにかくみんなで繋いで行こうって感じだったので繋ぐ意識で犠牲フライではなくてヒットで繋ごうと。ヒットを打ちに行きました」と、岸孝之が投じた初球のカーブを捉え、右中間を破る適時二塁打。

 オールスター明けの本塁打は1本で、40試合に出場して打率.196、1本塁打、8打点だったが、シーズン終盤の9月18日の取材で「悪い時と良い時の違いもわかってきましたし、修正する練習方法も自分で見つけてはいるので、調子が悪くなった時にすぐに戻せるようにというのがちょっとわかってくるようになってきました」と話したように、9・10月の月間打率は.234と復調の兆しをみせてシーズンを終えた。

 調子の良い時と悪い時の違い、修正する練習方法を分かった上で、来季はどんなバッティングを見せたいのだろうかーー。

 「もちろん、自分の長所、長打を打てるところをもっと伸ばしていきたいし、そこはこだわってやっていきたい」とキッパリ。

 「どこかで絶対に落ちてくると思うので、その時にいかに早く修正できるか。今年長くなっちゃったんですけど、自分が悪い時にこうなるというのがわかったので、そこは来年に活かしていきたいと思います」と前を向いた。

 外野のレギュラーを目指しつつも、「出られるところが多くて損はないので、外野以外でも守れたらいいと思うし、自分が出られたらいいと思っているので、もちろん外野をやりたいですけど、サードも頑張りたいと思います」と、レギュラーシーズン終了後に行われたみやざきフェニックス・リーグではサードのポジションにも挑戦。

 来年は個人の目標として、レギュラーを取ること、そして本塁打王を目標に掲げた。期待の長距離砲から、来季は“本物”の長距離砲になることを期待したい。

取材・文=岩下雄太

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