新たな一歩
10年間のプロ生活を終え、“新たな1年目”へ...。
西武から楽天にFA移籍した岸孝之の新シーズンがはじまった。地元・東北に戻って迎えるプロ11年目。早くもブルペン投球を開始すると、ほかの投手たちもその姿を見ようと集まってくるという。
後ろから投球を見守った新人投手が「自信なくしました...」というほど、完成された投球。精密機械のようなコントロールを誇りながら、それでいてテンポよく、すべて正確なフォームから投げ込まれていく。
単純な白星やイニング数などのローテーション投手としてのはたらきだけでなく、投手陣への新たな刺激として。または若き投手たちにとってのお手本として。キャンプインからここまでのわずかな期間だけでも、背番号「11」に求められるものの大きさが垣間見えた。
地元のスター
仙台で生まれ、仙台で育った岸。高校は名取北高という、野球では無名の学校の出身だ。
高校時代はエースだったが、3年夏も県2回戦で敗退。ところが、進学した東北学院大で大きな飛躍を遂げる。
「自分でもびっくりするくらい球速が伸びた」という大学時代、ストレートの最速は152キロを計測。大学4年になった2006年には、当時リーグ34連覇中だった常勝・東北福祉大を止め、チームを35季ぶりの優勝へと導いてみせた。
その秋、大学・社会人ドラフトの目玉となった右腕は、その年を最後に廃止された「希望枠」制度で西武への入団を決意。以降の10年間で103勝をマークし、リーグを代表する投手へと成長を遂げた。
東北に恩返しを
ケガに泣かされる部分は少なくなかったものの、キャリア7度の2ケタ勝利をマーク。通算103勝65敗で通算勝率は.613という安定感を誇り、2008年の日本シリーズではMVPも受賞している。
そんな男の次のミッションは「東北、仙台を盛り上げる」こと。入団会見でも語ったように、「地元への恩返し」というのが新たな仕事だ。
2013年に日本一に輝いた楽天も、以降の3シーズンはすべてBクラス...。そんな状況をどうにか打破すべく、地元出身のエースに白羽の矢を立てた。
めざすは日本一奪還。「それをしないと、地元に帰ってきた意味がないと思っているので。皆さんの期待に応えられるように精一杯やりたい」。クールな男は、静かに闘志を燃やす。
▼ 岸孝之
2007年:24試(156.1回) 11勝7敗 奪三振142 防3.40
2008年:26試(168.1回) 12勝4敗 奪三振138 防3.42
2009年:26試(179.2回) 13勝5敗 奪三振138 防3.26
2010年:19試(113.2回) 10勝6敗1セーブ 奪三振110 防3.25
2011年:21試(135回) 8勝9敗 奪三振106 防3.80
2012年:26試(187.2回) 11勝12敗 奪三振150 防2.45
2013年:26試(178.1回) 11勝5敗 奪三振138 防3.08
2014年:23試(161.1回) 13勝4敗 奪三振126 防2.51
2015年:16試(110.1回) 5勝6敗 奪三振91 防3.02
2016年:19試(130.1回) 9勝7敗 奪三振104 防2.49