◆ 地元で節目の大記録
巨人の若き主将が、またひとつ節目の記録に到達した。
追いかける巨人が2点を返し、5-6として迎えた9回表二死一・三塁のチャンス。ここで打席に入った坂本は、阪神・ドリスの155キロの速球を弾き返すと、打球はレフトへ抜ける適時打。土壇場で試合を振り出しに戻す一打は、自身のプロ通算1500本目の安打となった。
さかのぼること2007年の9月6日。ナゴヤドームで延長12回に放った決勝打からはじまり、約9年半で迎えた1500本。NPBでは史上123人目の快挙である。
9回裏にサヨナラ負けを喫し、メモリアルゲームを勝利で飾ることはできなかったものの、地元・兵庫の甲子園で決めることができたというのは感慨もひとしおと言ったところだろう。
【坂本勇人・年度別安打】
2007年:1本(4試/打率.333)
2008年:134本(144試/打率.257)
2009年:178本(141試/打率.306)
2010年:171本(144試/打率.281)
2011年:149本(144試/打率.262)
2012年:173本(144試/打率.311)
2013年:147本(144試/打率.265)
2014年:152本(144試/打率.279)
2015年:129本(130試/打率.269)
2016年:168本(137試/打率.344)
2017年:98本(78試/打率.333)
◆ 若き主将が残した偉大な足跡
史上123人目の記録と上述したが、その内容は過去123人のなかでも屈指の優秀さを誇る。
まずは『通算1354試合目』での達成というスピード。過去のヒットメーカーと比較しても16番目に相当する記録であり、巨人に限ればあの川上哲治(1241試合)、長嶋茂雄(1273試合)に次ぐ3位というレコード。ちなみに、全体1位は坂本自身が「憧れ」と公言する松井稼頭央(楽天/2011年)の1233試合だ。
また、『28歳6カ月』という年齢は、全体で見ても榎本喜八(東京/1964年)の27歳9カ月に次ぐ年少記録。“右打者”に限定すれば小玉明利(近鉄/1964年)の29歳1カ月を抜く最年少記録となる。
高卒2年目からレギュラーに定着し、2014年のオフには球団史上最年少で主将に任命。常に重責を背負いながら、大きな離脱もなく常勝・巨人軍の主力であり続けた坂本。東京ドームのショートのポジションに背番号「6」がいる景色はもはや当たり前の日常となっているが、今回の2つのスピード記録はその偉大さを改めて感じさせてくれた。
◆ 偉大な記録への挑戦
もちろん、この1500という数字は坂本にとって通過点でしかない。史上2番目の若さで1500安打に到達した男は最終的に何本打ってキャリアを終えるのか。これからのプロ野球を見ていくうえでの大きなたのしみの一つとなる。
NPBの歴代最多安打は、張本勲が記録した3085本。日本球界で3000以上の安打を記録しているただ一人の男である。
そんな張本氏でも、1500安打に達したのは1359試合目・29歳2カ月でのこと。坂本は試合数、年齢ともに日本史上最高の安打製造機を上回っているのだ。
張本氏の記録を目指すうえで、1500本というのはちょうど折り返し地点。実働10年目の今季で1500安打を迎えたということは、単純計算でシーズン平均150安打以上を記録してきたということ。このままのペースを保つことができれば、10年後・38歳を迎える2027年には歴代1位に限りなく近い場所にいるはずだ。
ちなみに、巨人に限定した安打数では、王貞治の2786本というのが歴代1位。坂本は偉大な記録にどこまで近づき、また追い抜いていくことができるのか。球界の偉人たちへの挑戦からも目が離せない。
【巨人・歴代安打ランキング】
1位 2786本 王 貞治
2位 2471本 長嶋茂雄
3位 2351本 川上哲治
4位 2018本 柴田 勲
5位 1975本 阿部慎之助
6位 1753本 高橋由伸
7位 1696本 篠塚和典
8位 1675本 原 辰徳
9位 1605本 千葉 茂
10位 1500本 坂本勇人