◆ 過去5年と比較して防御率が大幅悪化
球界に異常事態が起きている――。
今季はとにかく得点が多い試合が目立つのだ。7月22日はそれを象徴するような1日だった。勝利を収めた6球団は阪神の11得点を筆頭にいずれも5得点以上で、敗北したチームの最低得点も3。6試合で計72得点が生まれ、しかも合わせて27本の本塁打が飛び出した。1日6試合以内での27本塁打は、1980年7月17日以来38年ぶりのことだ。
得点が多い試合が目立つということは、当然、防御率は例年より悪化していることになる。現在、12球団全体の防御率は4.00。これは、チーム防御率が2点台のチームがいくらでもあったいわゆる統一球時代とは比べるまでもなく、2013年以降、昨季までの5年間と比較しても最大の数字である。その2013年から昨季までの12球団全体の防御率は、順に3.64(2013年)、3.75(2014年)、3.42(2015年)、3.67(2016年)、3.67(2017年)。ただ数字が最大というだけでなく、その上昇幅がいかに大きいかがわかる。
当然、多くの球団のチーム防御率も悪化している。下記は、今季のチーム防御率とそのリーグ順位、そして、昨季終了後のチーム防御率である。
【2018年/2017年チーム防御率】
※カッコ内は昨季チーム防御率の順位
<セ・リーグ>
1.阪 神 :3.85/3.29(1)
2.巨 人 :3.99/3.31(2)
3.広 島 :4.03/3.39(3)
4.DeNA :4.06/3.81(4)
5.ヤクルト:4.33/4.21(6)
6.中 日 :4.47/4.05(5)
<パ・リーグ>
1.日本ハム :3.51/3.82(4)
2.オリックス :3.57/3.83(5)
3.ロッテ :3.64/4.22(6)
4.楽 天 :3.86/3.33(2)
5.ソフトバンク:4.14/3.22(1)
6.西 武 :4.53/3.53(3)
◆ 夏場以降に影響が表れる投手の疲労は例年以上
現時点の数字ではあるが、チーム防御率が昨季より悪化しているのは12球団中9球団。特にセ・リーグは全6球団の数字が悪化している。なかでも、昨季はチーム防御率上位であった阪神、巨人、広島にその傾向が顕著であり、結果として上位と下位の差が縮まっているという見方もできる。
一方のパ・リーグも興味深い。昨季より数字が悪化しているのは3球団。離脱組が多いソフトバンク、退団組の穴を埋め切きれていない西武、リリーフ陣の不調が深刻だった楽天は、昨季のチーム防御率の上位で、逆に数字が改善している日本ハム、オリックス、ロッテは下位だった。上位と下位の差が縮まるどころか、両者がそっくり入れ替わったかたちである。特に、ロッテの改善ぶりは目覚ましい。長く課題とされ続けている長打力不足は改善されていないが、新助っ人・ボルシンガーを中心に守り勝つ野球でペナントレースの上位に進出してきたといえる。
今季の得点増加には、本塁打の増加も大きな要因となっているだろう。現在の総本塁打数は「988」。これをシーズンに換算すると「1673」となる。過去5年間で最多だったのは昨季の1500本塁打。これまた大幅な数字の変化である。
しかも、今季の総本塁打数は、最終的にはさらに増えることも考えられる。今年は記録的猛暑となった1994年以来といわれる暑さが続いている。蓄積された疲労の影響が夏場以降に出てくるのは毎年のことだが、今季の疲労は例年以上のものだろう。しかも、ここまでの得点が多いということは、投手がそれだけ多くの打者と対戦しているということ。野手にも当然疲労はたまるが、投手のほうが疲労の度合いは大きい。
得点と本塁打の増加、そしてこの酷暑がペナントの行方にどんな影響をもたらすだろうか。首位を走る広島や西武のように打ち勝つチームが制するのか。とはいえ、西武のチーム防御率は12球団ワースト。広島の防御率も4点台とらしくない。疲弊した投手陣が打線の足を引っ張ってしまうこともあるだろう。あるいは、本拠地がドーム球場か屋外球場かということも影響を及ぼす可能性も決して小さくない。今季終盤は、例年以上に熱く、過酷なものになりそうだ。
文=清家茂樹(せいけ・しげき)