◆ バラバラになった“タナキクマル”
球団史上初となるリーグ3連覇を達成した広島。悲願でもあった本拠地での胴上げも27年ぶりに実現し、残る目標は34年ぶりの日本一。緒方孝市監督も「日本一のゴールに向かってまだ戦いが続きます」と胴上げの直後に語っているように、ここからがスタートと言っても過言ではない。
今季も序盤からセ・リーグ首位を快走。危なげなく走り抜いたようにも見えるが、長いシーズン当然うまくいかないこともあった。なかでも大きな出来事と言えば、強い広島を支えてきた上位打線“タナキクマル”の解散だろう。
◆ 帰ってきた「1番・田中」が絶好調
赤ヘル打線の象徴的存在だった1番・田中広輔、2番・菊池涼介、3番・丸佳浩の同級生トリオ。今季も開幕からこの並びは不動だったが、昨季のリーグMVPでもある打線の要・丸が4月下旬に故障で離脱。約1カ月後に丸が復帰してからは再びいつものトリオが復活したものの、田中の調子がいまひとつ上がってこないことに加え、丸の不在時に外野の一角を掴んだ野間峻祥の好調もあり、勝負の夏場を迎えた緒方監督は野間を1番に抜擢した。
野間が初めて1番に入ったのが8月18日のこと。翌日の試合は相手先発の兼ね合いでスタメンを外れたものの、以降は再び1番でスタメン。するとチームは8月末までの12試合を9勝3敗と一気に加速する。
ところが、優勝へのカウントダウンがはじまった9月はその勢いに陰り。優勝に王手をかけながらも足踏みが続いたように、実は9月の月間成績は9勝11敗と負け越している。そんななか、存在感を発揮しているのが田中広輔だ。
今季は長らく2割台半ばの打率で苦しんでいたものの、9月に入るとここまで月間打率.293と復調気配。特に定位置である1番に戻った9月21日以降の6試合は打率.480と絶好調。優勝を決めた26日のヤクルト戦でも5打数3安打、3得点とトップバッターとしてチームの勝利に大きく貢献している。
その26日の試合を見ても、初回は田中の安打に始まって菊池が犠打、そして丸の適時打で鮮やかに先制。6回も先頭の田中が安打で出塁すると、菊池の犠打が相手の失策を誘い、丸の内野ゴロの間に田中が生還。トドメの7回も田中が適時打を放つと、菊池・丸が連打で続いてダメ押し。やはりこの3人が揃って好調な時の広島は強い、ということをまざまざと見せつけた。
ここ2年届かなかった頂点へ…。紆余曲折を経て再結成された“タナキクマル”が、チームを悲願の日本一に導く使者となる。