各球団「正捕手」4人が打率3割超え
セ・リーグの捕手に「異変」が起きている。いわゆる「打てる捕手」不足が指摘されることが多かった近年のプロ野球界だが、今季のセ・リーグ捕手は軒並み打撃好調なのだ。下記はセ・リーグ各球団においてここまでスタメン出場がもっとも多い捕手の打撃成績である。
▼ セ・リーグ捕手打撃成績 ※各球団スタメン最多出場捕手
中 日 :加藤 匠馬(14試合)打率.308 0本 3打点
DeNA :伊藤 光 (15試合)打率.302 1本 6打点
ヤクルト:中村 悠平(19試合)打率.279 1本 3打点
広 島 :会沢 翼 (17試合)打率.240 1本 5打点
梅野隆太郎(阪神)、小林誠司(巨人)、加藤匠馬(中日)、伊藤光(DeNA)と、なんと4人もの捕手が3割以上の打率を残している。中村悠平(ヤクルト)も2割台後半と好調であり、昨季、打率.305をマークした会沢翼(広島)が最下位という状況だ。
比較のためにパ・リーグ各球団でスタメン出場がもっとも多い捕手の打率を見てみると、森友哉(西武).350、嶋基宏(楽天).182、甲斐拓也(ソフトバンク).175、鶴岡慎也(日本ハム).167、若月健矢(オリックス).148、田村龍弘(ロッテ).132となっている。
パ・リーグ打率ランキングトップの森がずば抜けているが、残る5人はそろって打率1割台。やはり、セ・リーグ捕手の好調ぶりはチームからすればうれしい誤算、もはや「異常事態」といってもいいかもしれない。
強肩・加藤が竜の正捕手に名乗り
そのなかでも目立っているのがやはり梅野だろう。森と同じく、捕手で打率ランキングのリーグトップに立つ。ルーキーイヤーの2014年にいきなり7本塁打を記録して虎党を歓喜させた梅野だったが、その後は打撃面では伸び悩んでいた。ところが、昨季はプロ入り後はじめて規定打席に到達し、残した打率.259、8本塁打、47打点はいずれも自己最高。今季は4月9日のDeNA戦で捕手として4例目のサイクル安打を記録するなど、さらに進化した姿を見せ続けている。
梅野に次ぐ打率を残しているのが小林だ。2016年、2017年には2年連続で規定打席到達者における12球団最低打率を残した小林。打撃の評価は高くないが、今季はここまで打率.361と好調を維持。4月19日の阪神戦で5打数4安打と固め打ちをしたことで一時的に打率が上がっていると見ることもできるが、その試合の開始時点でも打率.290だったことを思えば、好スタートを切っていることは間違いない。
そして、注目したいのがここまで打率.308の加藤だ。だが、加藤の本来の武器は「甲斐拓也(ソフトバンク)以上」と評価する評論家もいるほどの強肩にある。4月20日のヤクルト戦でもその武器を見せつけた。初回、1死一塁の場面、山田哲人(ヤクルト)の打席でフルカウントから一塁走者の青木宣親(ヤクルト)がスタートを切ると、加藤は即座に二塁へ送球。ベテランになったとはいえ快足で鳴らした青木を悠々と刺し、山田は空振り三振。見事に三振ゲッツーを完成させた。
近年、正捕手不在を課題として指摘されてきた中日。オフに大きな補強をしなかった中日が好調であることには、加藤も大きく貢献していると見ていいだろう。昨季のウエスタン・リーグでの打率が.193だった加藤がどこまで打撃の調子を維持できるかはわからない。だが、その強肩に打撃成績までついてくれば、チームはようやく扇の要をがっちりと固めることができる。加藤に対するファンの期待は日に日に高まっているにちがいない。
ただ、強肩といえば加藤だけの武器ではない。野球ファンに広く知られているセ・リーグの強肩捕手というと、まずは小林と梅野が挙げられるだろう。そして、伊藤に中村、會澤もその肩を評価する声は多い。そうなると、今季のセ・リーグ捕手陣はただの「打てる捕手」ではない。まだシーズンははじまったばかりではあるが、「打てる強肩捕手」たちの活躍に注目していきたい。
文=清家茂樹(せいけ・しげき)