相次ぐ遊撃手の離脱
「チャンスですし、しっかり僕が出て貢献できれば」。
ロッテの平沢大河に、ショートのレギュラーを掴むチャンスが巡ってきた。
昨季は全試合に出場した藤岡裕大がショートでスタメン出場していたため、平沢は出場機会を増やすために外野に挑戦。夏場以降、外野でレギュラー出場し、シーズン自己最多の112試合に出場した。
打率こそ「.213」だったが、「アウトになるにしても、相手のピッチャーが嫌だと思うので、粘って球数を放らせるなど、できることはやりたい」と意識した結果、四球などにより出塁率は打率よりも1割以上高い「.328」をマークした。
シーズンが終わってからは「オーストラリア・ベースボールリーグ」に参加し、技術の向上を図った。このウインターリーグでは、「日本は恵まれた環境。ハングリーさがあった」と改めてプロの厳しさを学んだ。日本に戻ってからは、ロッテ浦和球場を中心に自主トレを敢行。午前中は室内練習で打ち込み、昼過ぎからはロッテ浦和球場で1時間以上ショートやサードのポジションで、ほぼ毎日ノックを受けていた。
万全の状態で迎えた春季キャンプでは、藤岡が故障で出遅れたため、オープン戦の序盤まではショートでスタメン出場。藤岡が一軍に合流した3月8日まで、平沢はまずまずの結果を残していたが、藤岡復帰後は出場機会が減少した。
開幕一軍のメンバーに名を連ねたものの、レアードが日本ハムから加入したため、昨季までサードのレギュラーだった鈴木大地がスタメンを外れるなど、内野の競争が昨年以上に激化。昨季から挑戦する外野にも、ドラフト1位ルーキーの藤原恭大が入団したことに加え、オープン戦で加藤翔平、岡大海が打撃好調だったため、平沢は開幕からなかなか出場機会に恵まれなかった。
4月23日に一軍登録を抹消。ファームに降格してからは「振る力をつけることと、一発で仕留められるようにという意識」を持ってバットを振り続けた。
実戦復帰初戦となった5月11日の二軍戦(ヤクルト戦)では、本塁打を含む3安打の大暴れ。14日の日本ハム戦でも本塁打を放つなど、再昇格に向けてアピールしていた最中、21日のオリックス戦の走塁中にショートのレギュラー・藤岡が右足を負傷。平沢は翌22日、藤岡に代わって再昇格を果たした。
さらに22日のオリックス戦で、同じくショートのレギュラーを争う三木亮の顎付近に送球が直撃し、脳震盪の特例措置で24日に一軍登録を抹消。現在は平沢が優先的にスタメンで起用されている。
25日のソフトバンク戦では、「甘いボールをしっかり捉えることができた」と、先発・高橋礼から今季初安打となる第1号本塁打を放った。昨季は9月に月間4本塁打を放ち、今季も二軍戦の7試合で2本塁打を記録しているが、本人は「特に(本塁打が)増えているわけではないですけど」と断ったうえで、「しっかり伝わるポイントで打てている」と話す。
今季初本塁打を放った一方で、守備では失点につながるエラーをし、翌26日の試合では3三振。レギュラーを奪うチャンスは目の前に転がっているが、アピールはまだまだ。チームとっては痛手だが、平沢にとってはポジションを確保するチャンスでもある。このチャンスをどう活かしていくのか、プロ4年目を迎えた平沢の今後に注目していきたい。
取材・文=岩下雄太