対外試合で揃って好スタート
昨季はセ・リーグ5位に沈んだ広島。なかでも投手陣の崩壊を苦戦の要因に挙げる声が多かったが、今年は頼もしい新戦力が加わった。昨年のドラフトで指名した栗林良吏(1位/トヨタ自動車)、森浦大輔(天理大/2位)、そして大道温貴(八戸学院大/3位)の3人である。
上位3枠をすべて大学・社会人の投手に費やしたように、やはり投手陣の再建が急務であることは、球団の姿勢からもよく分かる。そして、その即戦力として期待した選手たちが揃って一軍スタートを切り、2月17日の練習試合・巨人戦で1回無安打・無失点の好投を見せたというのは、佐々岡真司監督にとっても頼もしい限りだろう。
現時点で、指揮官は彼らの起用法について明言はしていない。しかし、もっとも大きな期待を寄せる栗林に関しては、「適正を見ながら。リリーフもあるかもしれないしね」と、社会人時代の先発ではなく、中継ぎでの起用も示唆している。
その上で、栗林は練習試合の翌18日にもブルペンに入って投球練習を行っており、これを“連投のテスト”と見ることもできるだろう。本人も「シーズンだったら2連投はあたりまえのように出てくる」とのコメントを残しており、リリーフ起用も想定済のようだ。
3連覇時は救援防御率が常にリーグ3位以内
新戦力の起用法をどうするか、という部分はチームにとっても悩みどころだろう。だが、広島の投手事情を見ると、中継ぎに弱点を抱えていることは明白だ。
昨季の広島のチーム防御率は4.06で、これはリーグ5位の成績。このうち、先発の防御率3.76がリーグ4位に対し、救援防御率は4.64でリーグワーストだった。
ストッパーのヘロニモ・フランスアこそ53試合の登板で2勝3敗19セーブ・7ホールドに防御率2.45と奮闘を見せたが、思えば開幕当初は“一番後ろ”の想定ではなかった投手。
逆にフランスアが務めるはずだったセットアッパーの代役がことごとく苦しみ、最終的には左腕の塹江敦哉とケムナ誠が台頭してきたものの、塹江の防御率は4.17、ケムナも3.88と、勝ちパターンとしては頼りない数字となっている。
こうした事態を招いているのが、2016年からの3連覇を支えた男たちの不振。守護神として活躍した中崎翔太は6試合の登板で防御率9.00、勝利の方程式を担った今村猛も6試合で防御率12.46、一岡竜司も19試合の登板で防御率6.23と苦しみ、戦力となることができなかった。
彼らがフル回転していた3連覇当時を振り返って見ると、2016年からの3年間、広島の救援防御率はリーグ2位・同2位・同3位と常にトップ3を維持していた。いわゆる“タナキクマル”(田中広輔・菊池涼介・丸佳浩)の上位打線と主砲・鈴木誠也を中心とする打線の印象が強いが、リリーフ陣の奮闘があったからこそ、安定して勝ち星を挙げることができたとも言える。
こうした背景を見ても、広島が再び上位争いを演じるためには、崩壊した中継ぎ陣を立て直すことが不可欠。まだ起用法こそ定かではないが、新たな風を吹き込んでいる栗林・森浦・大道の新戦力の奮闘に、刺激を受けた中﨑・今村・一岡の復活が叶えば、ブルペンの層は一気に厚みを増してくる。
ここから練習試合、そしてオープン戦と実戦モードに突入する中で、期待のルーキートリオたちはどんなパフォーマンスを見せるのか。今季の広島を占う意味でも、注目していきたい。