若手の頑張り
若手選手たちがアピールすることで、マリーンズのチーム力がアップするーー。
19年オフはFAで美馬学、福田秀平、新外国人でハーマン、ジャクソンなどを補強したが、今季に向けては、ここまでメジャー通算922試合に出場したエチェバリアのみ。目立った補強がなかったかわりに、練習試合、オープン戦では若手選手たちがチームの底上げに繋がりそうな働きぶりを見せる。
高卒3年目の山口航輝が、その一人だろう。昨年はファームで全70試合に出場し、打率.258、チームトップタイの7本塁打、チームトップの30打点を挙げたが、同学年の藤原恭大がシーズン終盤に一軍に昇格を果たすなか、山口は1年目に続き一軍出場はなし。「あの時期に上がれなかったというのが、今まで野球してきたなかで一番悔しいといっていいくらい悔しかった」と当時を振り返る。
「勝負の年」と位置付けた今季に向けて、自主トレーニングでは体を絞り筋肉量を上げ、怪我をしない体づくりに励んできた。2月の練習試合では、打率.310(29-9)、5打点を挙げ、オープン戦がはじまってからも2日のオリックス戦で右中間を破る適時二塁打、3日のオリックス戦でも4回に福田秀平の適時打に繋がるレフトへ二塁打と、コンスタントに結果を残している。昨年11月のフェニックスリーグから本格挑戦する一塁の守備も、一、二塁間に飛んだ打球を処理するなど、広い守備範囲を見せる。
開幕一軍入りへ向けて攻守に存在感を示す山口を見て、井口資仁監督が就任して以降、一塁のレギュラーを務めてきた井上晴哉も黙ってはいないだろう。
山口が“打てる”となれば、仮に井上が昨季のシーズン終盤に打撃の調子を落としたときのようなことがあったときに、左の菅野剛士だけでなく、井上に代わって同じ右打者の山口がいる。井上がレギュラーで出場し続けるためにも、“安定”したパフォーマンスを披露する必要がある。
新外国人ではなく、これからチームを背負うであろう若手の山口というライバルが出現したことによる効果で、井上のパフォーマンスが向上することも十分に考えられそうだ。
ショート、外野、投手陣
ショートを主戦場にする新人の小川龍成も、一番自信があると話す守備に加え、バットでも2日のオリックス戦で途中出場ながら2安打、走ってもオープン戦2試合で3盗塁をマークする。新外国人のエチェバリア、新人時代の18年からショートでチーム最多出場の藤岡裕大を脅かす存在になりそうだ。
外野も対外試合全試合で1番で出場する藤原が存在感を示し、打撃では安打がなくても四球を選んで出塁するなど、その役割を果たしている。
投手陣はチェン・ウェイン、澤村拓一、チェン・グァンユウが退団したが、先発では3年目の中村稔弥、ドラフト1位ルーキーの鈴木昭汰、さらには育成の本前郁也が開幕ローテーション入りを目指し、アピール合戦を繰り広げれば、リリーフ陣も“身長190センチ”を超えるドラフト4位ルーキーの河村説人と3年目の土居豪人が好投を続ける。さらには佐々木千隼も対外試合で、4試合連続無失点に抑えている。
今アピールしている選手たちが、シーズンに入ってからも同じように活躍できるかは正直、開幕してみないとわからない。ただ練習試合、オープン戦とはいえ、若手選手たちがアピールしているのは事実。少なからず中堅、ベテラン選手たちに“代わりはいる”という危機感、緊張感となり、それがチーム力アップに繋がっていくのではないだろうか。レギュラー陣を脅かすほど若手の突き上げがあれば、マリーンズは強くなる。
文=岩下雄太