いよいよ開幕
2021年3月26日。マリーンズにとって1974年以来勝率1位でのリーグ制覇、2010年以来の日本一を目指す戦いが、敵地・福岡から始まる。
昨年は惜しくもリーグ優勝を逃したが、シーズン最終盤までソフトバンクと優勝争いを演じ、13年ぶりとなる2位でクライマックスシリーズ進出を果たした。そして、2021年シーズン。『この1点を、つかみ取る。』をチームスローガンに掲げ、“この1点”の重みを感じながら戦っていく。
昨オフはFAで美馬学、福田秀平、外国人ではハーマン、ジャクソン(シーズン途中退団)などを獲得し、シーズン中もリーグ優勝を勝ち取るために澤村拓一(現レッドソックス)、チェン・ウェイン(現阪神)を補強した。しかし、今季に向けては、メジャー通算922試合に出場したエチェバリアのみ。課題にしていたショート、内野手の層に厚みを持たせるピンポイント補強のみで、目立った動きはなかった。だからこそ、若手にかかる期待は大きい。
投手では開幕投手を務める二木康太をはじめ、小島和哉、岩下大輝、小野郁、野手も安田尚憲、和田康士朗が昨季一軍で実績を作った。彼らに続けと今季は鈴木昭汰、土居豪人、河村説人、野手も山口航輝、高部瑛斗といった若手が開幕一軍を掴んだ。オープン戦中に育成選手から支配下選手となった本前郁也も、開幕ローテーション入りが有力視される。
開幕一軍を逃したが、中村稔弥、東妻勇輔、古谷拓郎、佐々木朗希、佐藤都志也、平沢大河、福田光輝、西巻賢二といった選手たちもいる。さらには、トミージョン手術から復帰を目指す種市篤暉も控えるなど、若手の選手層は年々厚くなっている。この中から一軍の戦力になる若手が多ければ多いほど、チーム力はアップするはずだ。
中堅、ベテランの活躍も必要
ただ、リーグ優勝するためには、中堅、ベテランの活躍が必要不可欠。特に昨季チーム打率リーグワーストの.235、リーグワースト2位の461得点に終わり、今季は最低でも昨季以上に打って投手陣を援護していきたいところ。
そのなかでも中村奨吾、井上晴哉といった井口資仁監督が就任した2018年にレギュラーに定着した選手たちの奮起が求められる。中村は今季からチームキャプテンに就任し、チームの“顔”と呼べる存在だ。ここ2年はその力を発揮しきれていないが、持っている能力は非常に高く、トリプルスリー(3割・30本塁打・30盗塁)を達成してもおかしくない選手。今季は攻走守に存在感を発揮したい。
チームが課題としている長打力、得点力をアップするために井上には、勝負強い打撃に期待したい。開幕一軍を逃したが、必ず井上の存在が必要になるときがくるはずだ。2年前には当時レギュラーだった鈴木大地(現楽天)が開幕スタメンを外れ、そこからバットで結果を残し、終わってみればキャリアハイでシーズンを終えるということもあった。井上もそのときが来たときには、意地を見せて欲しい。
投手陣も先発に美馬学、出遅れが予想される石川歩、リリーフ陣も守護神・益田直也、セットアッパーのハーマン、唐川侑己といった頼りになる選手たちがいる。投打ともに中堅、ベテランがしっかりと活躍したなかで、若手選手も続いていくという形が理想的だ。
開幕カードに勝ち越しを
開幕カードは2年連続で勝ち越した絶対王者・ソフトバンク。開幕投手の二木、先発が予想される美馬、鈴木の3投手で、今季もソフトバンク打線を封じ、打線も主力、若手選手たちが打って、嫌な印象を与えたい。
ソフトバンクとの開幕カードを終えれば、30日からは本拠地・ZOZOマリンスタジアムで楽天との3連戦。昨季は8勝15敗1分と大きく負け越した相手だ。混戦パ・リーグを勝ち抜きリーグ制覇するためにも、スタートダッシュは重要。なんとしても、ソフトバンクとの開幕3連戦を勝ち越し、弾みをつけてホーム・ZOZOマリンに帰ってきたい。
プロ野球解説陣の順位予想は3位、4位といった予想が多めではあるが、昨年は13年ぶりに2位になるなど、チーム力は着実につけている。リーグ優勝を争う秋には2019年に大活躍した西野勇士、種市が順調にいけば、一軍で熱い投球を魅せてくれているだろう。毎年のことになってしまうが、首脳陣、選手、スタッフ、ファンが一丸となって、秋には歓喜の瞬間を迎えたい。そして、今年こそ悔し涙ではなく嬉し涙を流したい。
文=岩下雄太