開幕から安定
「フォームをしっかり固められたことかなと思います」。
ロッテの高卒6年目・成田翔は、開幕からファームで安定した投球を続ける要因についてこう自己分析した。
今季初登板となった3月23日の日本ハムとの二軍戦で、難波侑平に一塁ベースに当たる二塁打を打たれてから、4月25日の西武との二軍戦で長谷川信哉にレフトへサヨナラ打を打たれるまで打者28人に対し1本も安打を許さなかった。その間に四球で出塁を許したのも、4度だけだった。
3月まではややボールが高めに浮く場面も見られたが、4月以降はインサイド、アウトサイドにきっちりとコントロールよく投げ分ける場面が多くなった印象だ。4月9日の西武との二軍戦では、左の綱島龍生に対して内角を攻めてストライクを取り、最後は外角のスライダーで空振り三振に仕留めた投球は見事だった。
「(何か特に)変えたことはないんですけど、日々いただくアドバイスを試しながら、少しずつ自分のモノにできているのかなと思います」。
具体的にもらったアドバイスについて「打者に向かっていく方向性であったり、(スライダーの)握りも松永さんから聞いたりして、いろいろな方々のアドバイスがあって今のフォームになってきたかなと思います」と感謝する。
投球フォームに試行錯誤した時期も
今からさかのぼること1年半前。成田は2019年10月に行われた『第16回みやざきフェニックス・リーグ』の終盤からやや腕の位置を下げたスリークォーター気味の投球フォームに挑戦した。春季キャンプ、オープン戦と肘を下げたフォームで投げていたが、新型コロナウイルス感染拡大で開幕が遅れ、6月に登板したときには肘を上げたフォームとなっていた。そして、シーズン最終盤の11月には再び肘を下げたフォームに戻した。
成田は当時のことを「シーズン中はうまくいかなかったので、そこで肘の位置を少しあげたんですけど、フェニックス・リーグあたりからチームの戦力になることを考えたときに下げた方がなれるかなと自分なりに考えた。そこから今の形です」と振り返る。
昨年の春先、肘を下げていたときは、力いっぱい投げているように見えたが、現在は力感がないようなフォームに見える。
「自分のなかでコントロールがしっかりできているので、力を入れなくてもカウントを取りにいくときはそこまで力まず、決めにいきたいときは力を入れますけど、そのメリハリができているかなと思います」。
新たな武器となるかシュート
投球面でいえば、左打者のインコース、アウトコースを、きっちりとコントロール良く投げ分けている。
「左のインコースにシュートもしっかり投げられていますし、シュートとスライダーのコントロールを思うようにできている。継続してやっていくだけだなと思っています」。
プレートの位置も昨季途中、真ん中で投げている時期もあったが、今季は「角度を求めるなら一塁側かなと思って、一塁側にしています」と元に戻した。
「左バッターを抑えないといけないと思っているので、そのなかで角度のあるまっすぐ、遠く見えるようなスライダー、さらにインコースのシュートで食い込ませる。その3つを軸に投げています」。
そのシュートについて成田は「キャンプぐらいから投げています。ずっとツーシームを投げていたので、その延長戦で投げている感じですね」とのこと。「握りをさらに変えて腕を下げたぶん、いい感じにシュートを投げられている。自分のモノになっていると思います」と手応えを掴む。
シュートは左打者だけでなく右打者のアウトコースにも投げる。4月25日の西武との二軍戦で、佐藤龍世を空振り三振に仕留めた外角の139キロの球がシュートだ。「まっすぐとほとんど(球速は)変わっていないですね」。ストレートと同じ球速帯で投げるシュートが、左打者だけでなく、右打者を打ち取る上でも鍵を握るボールとなりそうだ。
「シーズンがはじまってからも状態がいいですし、感覚も非常に良い。これをしっかり継続していきたい」と成田。マリーンズの一軍のリリーフ事情でいえば、開幕から右投手中心の起用となっている。長いシーズンを見ても、左のリリーフを必要になるときが必ずくるはず。「一軍で投げなきゃ始まらないと思っているので、そのためにしっかり下で結果を残していきたいと思っています」。いつ一軍から声がかかってもいいように、腕を振っていく。
▼ 成田の成績
左打者:被打率.056(18-1) 振2 被安1 与四4
右打者:被打率.090(11-1) 振4 被安1 与四1
※成績は2021年4月27日終了時点
取材・文=岩下雄太