数字には見えない貢献度の高さ
打率.233、27本塁打、75打点、4盗塁、出塁率.355。
ロッテ・マーティンが残した今季の成績だ。マーティンは昨年もそうだったが、数字だけでは判断できないチームへの貢献度の高さがある。
打撃面でいえば打率.233とは、感じさせない働きぶりだった。5月25日の阪神戦で2-3の8回無死一塁から2番手・岩崎優が2ボール2ストライクから投じた6球目の外角スライダーをライトスタンド中段へ逆転2ランを放てば、9月8日のオリックス戦では1-1の8回に吉田凌から決勝の3ラン。これが球団通算8000号となるメモリアルな一発となった。楽天とのCSファーストステージ第2戦でも、3-4の7回二死走者なしの場面で酒居知史からライトへ値千金の同点弾。この本塁打により試合は4-4に引き分け、ファイナルステージ進出が決まる一発となった。
昨季はマーティンが本塁打を放った試合は12連勝ということもあったが、今季も5月25日の阪神戦から10月6日の西武戦にかけてマーティンが本塁打を放った試合は引き分けを挟んで11連勝を記録した。
また、マーティンは無安打でも四球を選んで出塁し、足で魅せるのも特徴だ。5月28日の広島戦は3打数0安打も2つの四球を選び足で魅せた。0-0の初回の第1打席、中村奨吾が放った打球をレフトとセンターがぶつかりながらも、最後はセンターがキャッチしたのを見て、一塁走者のマーティンがタッチアップし二塁へ進塁。
4-7の5回は一死二、三塁からレアードが打ったセカンドへの飛球が、風に流されたこともあり、捕球体勢が崩れ、セカンドが倒れこむように捕球。それを見て三塁走者のマーティンがホームインした。無安打でも“走塁”でチームに貢献するのがマーティンだ。
相手の隙を突いた走塁
“相手の隙”をついた走塁は5月28日の広島戦だけじゃない。4月25日のソフトバンク戦では、やや右中間寄りの当たりでセンターが反転しながら送球するのを見て二塁に進み二塁打にすれば、5月16日の西武戦ではセンター前に安打を放ち、一塁ベースを回ったところでスピードを緩める動きを見せるも、センターの緩慢な動きを見逃さず、二塁へ進塁する好走塁。
今季の盗塁数は4つだが5月19日のオリックス戦では、山本由伸の投球モーションを完全に盗み、三塁盗塁を決めた。捕手の伏見寅威も三塁へ送球できないほどのスタートの良さだった。
6月8日のヤクルト戦ではセンター前に抜ける安打を放つと、二塁ベースに誰も入っていなかったのを見て一気に二塁を陥れた。6月29日のオリックス戦では安田の左飛で二塁走者のマーティンは三塁へ進み、田村の犠飛で生還。
今季もシーズン通して、相手の緩慢な動きを見逃すことなく、次の塁を狙う姿勢は非常に素晴らしかった。
守備でも魅せた
守備でも頭脳プレーが光った。4月13日の楽天戦、辰己涼介の一、二塁間を破るライト前へのゴロを捕球すると、一塁を大きくオーバーランしていたのを見て素早く一塁へ送球。ベースカバーに入っていた投手・石川歩が、一塁に戻ろうとしていた辰己をタッチしアウトにする“相手の隙を見逃さない”守備を披露した。
外野手チームトップの9補殺をマークした“肩”でも、6月13日の巨人戦では5点リードの7回に4点を返され、なお二死一、二塁のピンチが続き、中島宏之が放ったライト前への打球に、二塁からホームを狙った二塁走者の岡本和真をライト・マーティンがホームで刺した。嫌な流れを断ち切る好守備だった。
時折、手痛いミスはあるものの、シーズン通してみれば、チームを救う守備が多いことは確かだ。
ガッツをみせる
マーティンは9月19日の日本ハム戦で右足に自打球を当て、『右足中間楔状骨骨折』で離脱したが、10月3日の楽天との二軍戦で実戦復帰し、10月5日の西武戦で一軍に復帰。10月14日のオリックス戦では右足に自打球を当て苦悶の表情を浮かべるも、そのまま出場を続けガッツを見せた。チームの勝利のために常に全力プレーでする姿は、非常に心強い。来季こそ、リーグ優勝し、マーティンが喜ぶ姿を見たい。
文=岩下雄太