通算1000試合出場達成
「特に1000試合にはこだわっていないですけど、1試合、1試合出られたらいいなと思っています」。
8月に行ったオンライン取材でこのように話していたプロ13年目のロッテ・荻野貴司が7日の西武戦で通算1000試合出場を達成した。
2010年にプロ入りしてから毎年“走攻守”で、高いレベルでのパフォーマンスを発揮し続けている。特にプロ1年目の10年はシーズン途中に故障で離脱してしまったが、46試合の出場で25盗塁、なんでもない内野ゴロを内野安打にしてしまうその脚力にマリーンズファンのハートを熱くさせた。その一方で、毎年のようにシーズンのどこかで離脱することが多かった。それでも、マリーンズファンは故障から復帰するたびに熱い声援を荻野に送り続けた。
故障から1年ぶりの一軍出場となった2012年6月13日の広島戦、延長10回に代走で登場すると、スタンドからは荻野の応援歌が流れた。普通であれば、打席に入ったときに選手の応援歌が流れるが、この時は代走で出場した荻野にファンが熱い声援を送った。
あの時の応援に「覚えていますね。なかなか代走で出て応援歌が流れることはないと思うので、すごく嬉しかったです。今でも印象に残っています」(19年10月31日取材)と感謝する。
18年は開幕から1番で出場するも…
2018年は開幕から1番で出場し、同年7月8日終了時点で打率.287、2本塁打、25打点、19盗塁の成績を残して監督推薦で、自身初となる『マイナビオールスターゲーム2018』に出場予定だったが、翌9日の西武戦で右手指を骨折して離脱。オールスター出場が叶わなかった。
真夏のロッテ浦和球場で懸命にシーズン中の復帰を目指し、黙々とリハビリする姿が今でも印象に残っている。当時荻野は「また球場でプレーしているところを皆さんに見てもらいと思うので、それを目指してやっています」と誓っていた。
また当時一緒にリハビリをしていた佐々木千隼ら外野でランニングする姿が多かったが、「そんなに落ち込むことなく、チームに申し訳ないという気持ちはありますけど、ケガしている中で、できることは色々とある。ちょっとでも自分が進化できるようにやっていました」と、後輩たちの前で暗いそぶりを一度も見せることはなかった。
結局、同年はシーズン中に復帰することはできなかった。「オールスターに関してはそんなに強い気持ちというのはなかった。シーズン途中で抜けてしまうというのが、オールスター自体よりもそっちの方が悔しかった」。荻野の故障前までチームは39勝37敗2分と勝ち越していながら、離脱後に20勝44敗1分と大きく負け越し。荻野の存在がいかにチームにとって重要な存在か再認識するシーズンとなった。
19年は自身初の規定打席に到達
翌19年は 6月7日の巨人戦から7月4日のオリックス戦にかけて20試合連続安打を放つなど、不動の1番打者として、打率リーグトップの.330でオールスター前の戦いを終えた。「大きな怪我がなくこれている。個人的には順調にきているかと思います」と前半戦を振り返った荻野。
初出場を決めたオールスターにも「あんまり無理をせずに普段通りいけたら」と平常心を口にした。後半戦に入ってからも大きな故障なく試合に出場し、シーズンの規定打席到達まで残り10打席となった8月11日の試合前には「(規定打席に)到達したことがないので、到達したいなという思いはありますね」と、規定打席への思いを語った。11日の西武戦で5打席、12日の西武戦も5打席立ち、打席数を443に乗せた。
初めて達した規定打席に当時荻野は、「嬉しいことは嬉しいですが、この先はまだまだあるので、そこに向けてしっかりやっていきたいと思います」とあくまで通過点と捉え、最終的には125試合に出場して、打率リーグ3位の.315、10本塁打、46打点、28盗塁の成績を残した。
20年は53試合の出場にとどまったが、21年は全143試合に1番打者として出場し、自身初となる最多安打、盗塁王のタイトルを獲得。10月で37歳を迎える荻野は「順調に落ちてきている。そんなにスピードはない」と話すが、打撃面では「自分ではあんまりわからないですけど、常に体のケアをしているので、体調の浮き沈みがちょっと少なくなっているのかなと思います」と、年々数字が安定してきている。
試合に向けた準備
ファンの期待に応えるため、試合に入るまでの準備も入念に行う。当時ロッテで一軍打撃コーチを務めていた大村巌コーチ(現DeNAコーチ)は荻野について「球場にきてからいつも同じルーティンで練習、準備、同じように試合に入っている」と明かしている。
荻野本人も試合に入るまで準備の重要性について「基本的にはしっかりその日の体調を自分で把握して、自分でできることは自分で調整して、トレーナーさんに任せるところはトレーナーさんにやってもらってというのを繰り返しています」と教えてくれた。
荻野は通算200盗塁、250盗塁を達成したときには「区切り、積み重ね」と話し、通算1000安打についても「ここで終わりではないので、しっかり1本1本積み重ねていきたいという思いです」と“積み重ね”と言ってきた。通算1001試合目に向けても最高のパフォーマンスを発揮するために、コツコツと試合に向けて準備するはずだ。今年の10月で37歳を迎えるが、まだまだファンの心を熱くする打撃、走塁、守備が見たい。
▼ 荻野の年度別出場数
10年:46試合
11年:23試合
12年:61試合
13年:102試合
14年:40試合
15年:82試合
16年:71試合
17年:103試合
18年:78試合
19年:125試合
20年:53試合
21年:143試合
22年:73試合
※出場試合数は22年9月7日終了時点
取材・文=岩下雄太