レッドソックス・吉田正尚

 多くのメジャー関係者でも、誰がここまでの活躍を予想できただろう?

 レッドソックスの吉田正尚選手のバットが連日火を噴いている。

 日本時間8日のガーディアンズ戦に「2番・左翼」で出場するとこの日も右前打を記録して絶好調をアピール。前日の同カードでは、自身4度目の3安打固め打ちで打率を.319としてアリーグの2位に浮上。現地では首位打者獲得の可能性までささやかれ出した。

 昨年、レッドソックスと5年9000万ドル(報道当時で約126億円)の巨額契約。しかし、開幕直後には極度の不振に陥り、獲得そのものに懐疑的な声も聞かれた。

 ところが1カ月と立たないうちに、驚異のヒットマシーンと化して、ボストンっ子のハートを鷲づかみにする。

 吉田本人の分析によれば、当初は投手と対峙する時に、「右肩が入りすぎて、ボールが見づらかった」と言う。そこで、肩を開き気味に修正することで、“詰まる”ことがなくなり、本来の打球を取り戻した。

 これまで筒香嘉智や秋山翔吾選手ら海を渡った好打者が、苦しめられてきたメジャーへの攻略法をわずかな期間で克服できる対応力と適応能力こそが吉田の最大の強みだ。

◆ 日本人野手の評価を見直す機運が高まる

 レッドソックスの編成部門は古くから日本野球に高い関心を示して来た。松坂大輔、岡島秀樹、上原浩治らは数々の栄光をチームにもたらした。日本人メジャーリーガーの先駆者的な役割を果たした野茂英雄も同球団のOBである。今では各球団の“日本詣で”は珍しくないが、最も早い段階から日本選手の獲得を積極的に進めてきた球団のひとつに数えられる。

 その中でも吉田獲得の決め手となったのが、オリックス時代から定評のあった三振の少なさと、バットに確実に当てるコンタクト率の高さだ。現代の野球界は日米を問わず、ハイテク機器全盛の時代。打球の強さや角度、飛距離までたちどころに計測される。それでも吉田の持つ独特の技術や感性までは数値化できない。結果としてレッドソックスは日本球界への豊富な調査能力を有することで、貴重な宝を手にしたと言えるだろう。

 かつて、イチローや松井秀喜らが高めた日本人野手の評価は近年顕著な働きをする選手が見当たらず決して高いものではなかった。だが、ここへ来て吉田や鈴木誠也(カブス)らの活躍で見直す機運が高まっている。

 大谷翔平ほどのパワーはなくても、確実に安打を量産して、広角に打てる技術は得難い。WBCの世界一を機に米球界では、ヤクルトの村上宗隆選手はもとより、巨人・岡本和真や将来性で日本ハムの万波中正、清宮幸太郎各選手らも調査対象に入っていると言われる。

 直近では、レッズが「台湾の大谷」と称される二刀流の17歳、林盛恩選手と120万ドル(約1億6200万円)で契約合意したと伝えられる。今では獲得の対象は中学、高校生レベルまで若年化して、“日本詣で”どころか、アジアや世界にまで広がっている。今後は大谷や菊池雄星の後輩にあたる花巻東の怪童・佐々木麟太郎選手の動向にも大きな注目が集まるだろう。

 目下、ア・リーグ東地区の最下位に沈むレッドソックスにとって吉田の存在は希望の星だ。地元では、首位打者や新人王の可能性まで報じられ、「彼の獲得は安い買い物だった」と“手のひら返し”の声も聞かれる。

 MLB全体で推し進める世界戦略にあって、相対的に日本野球の価値は上がっている。今や日本人選手のレポートを球団に上げるのは当たり前。いかに正しく、効果的に日本人メジャーリーガーの獲得に導けるか?

「第二の吉田」探しに編成担当の目の色が変わってきた。

文=荒川和夫(あらかわ・かずお)

【荒川和夫・プロフィール】
1975年スポーツニッポン新聞社入社。野球担当として巨人、西武、ロッテ、横浜大洋(現DeNA)等を歴任。その後運動部長、編集局長、広告局長等を経て現在はスポーツライターとして活動中。

この記事を書いたのは

荒川和夫

1975年スポーツニッポン新聞社入社。野球担当として巨人、西武、ロッテ、横浜大洋(現DeNA)等を歴任。その後運動部長、編集局長、広告局長等を経て現在はスポーツライターとして活動中

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