アウトの取り方をこだわる
44試合、4勝0敗、14ホールド、防御率1.25。
今年3月に福田光輝とのトレードで加入した西村天裕は、「(50試合登板は)行けると思っていましたが、イレギュラーなことがあったので仕方がない。うまいこと切り替えてしっかり抑えるというのだけをやっていけたらなと思って、残り投げていました」と、目標に掲げた“50試合登板”に届かなかったものの、新天地で自分の居場所を掴み、充実のシーズンを過ごした。
西村は17年ドラフト2位で日本ハムに入団し、昨季までのプロ5年間で通算122試合に登板して3勝2敗12ホールド1セーブ、防御率4.01。入団前は2年目の19年に登板した35試合がシーズン自己最多登板だった。
昨季までのプロ入り5年間で全てのシーズンでイニング数を上回る奪三振を記録し、プロ5年間での通算奪三振率は10.23をマーク。奪三振の高さが一つの武器だった。
今季を迎えるにあたって、「去年までは三振にこだわりはあった」とのことだが、「そこに執着しすぎるとカウントを苦しめることが多かったので、今はアウトの取り方にこだわっています」と考え方を改めた。
そのきっかけになったのが、帝京大時代にチームメイトで昨季セ・リーグ投手三冠に輝いた青柳晃洋(阪神)だ。
「阪神の青柳と自主トレを一緒にやっていて、三振狙いにいって力んでフルカウントになって自分で苦しくなるんだったら、簡単にアウトを1個ずつ取っていって簡単に終わった方がいい、中継ぎだったら何日も連続で(登板が)続く。“球数少なく終えられるといいよね”という話から始まって、球数できるだけ少なく、ここぞという場面で三振が取れればベストだなという感じですね」。
西村の役割はリリーフ。“連投”やシーズン通して投げるには、できるだけ“球数”を少なく抑えていった方がいいという考えになったという。基本的に球数少なく投げたいが、場面によって三振が狙える時は狙いにいったりするのだろうかーー。
そこに関しては「狙いに行くというよりは、結果ゼロに抑えるためにどうするかですね」とのこと。
今季は43回1/3を投げて、41奪三振。奪三振率はプロ入り後ワーストの8.52だった。それでも、少ない球数でアウトを奪い、44試合中20球以上投げた試合は12試合、1イニングを15球以内で終えた試合は21試合もあった。
7月24日のソフトバンク戦では0-1の9回に登板し、「できすぎじゃないですか」と振り返ったが、1イニングをわずか8球に抑え、その裏、角中勝也の逆転サヨナラ2ランに繋げたこともあった。
ただ、7月以降は「最近(球数が)多くなっちゃっている。それはやっぱり疲れが残ったりすると思うので、もうちょっとうまいこと1イニングの球数を減らせたらいいなと思っています」と15球以上投げる日も増えた。
球数が増えている原因は、相手球団が研究していることも関係しているのだろうかーー。
「それもあると思いますし、どうしてもボールの精度が落ちているのかなと思ったので、そこの精度をもう一度どうやったら強くなるかというのを考えながらやっていますね」。
シーズントータルで見ると、今季は1イニングあたりの球数が15.9球。シーズンが終わり、CS前の取材では「怪我から復帰してからもそこはできたかなと思うので、今はできているなと思います」と話し、「自分のピッチング目標にしているピッチングの集大成ではないですけど、しっかりできているからだと思います」と自己分析した。
真ん中のプレート
もうひとつ昨季から変えたことといえば、日本ハム時代は三塁側のプレートを踏んで投げていたが、昨年の夏以降は真ん中のプレートを踏んで投げるようになったこと。
その理由について「インコースをもっと角度をつけて使っていきたいのと、真ん中のプレートでも外の角度は出ていたので、内の使い方を広げるために真ん中に変えました」と説明した。
西村が開幕から無失点投球を続けていた4月8日の取材で、自分の中で真ん中のプレートで投げてハマっているのか訊くと、「真ん中のプレートを踏んで投げるのは初めてで、まだ1年も経っていないのでわからないですね」と話し、5月5日の取材では「結果出てきているので、いい方向に行っているんじゃないかなと思います。外だけでなく内の角度もつけられるようになったのは大きいと思います」と手応えを掴みつつあった。
シーズンが終わり、真ん中のプレートで1年間投げ続けてみて効果はどうだったのだろうかーー。
「今までだったらインコースライン上だったんですけど、角度がついているので投げやすかったです。変化球も真ん中から左右に落としたり、曲げたりできた。少々抜けたところで甘いところに行きすぎるというところが少なかったのかなと思います」。
今季に向けて考え方を変え、結果を残すことができた。1年間取り組んだことは間違いなかったのだろうかーー。
「う〜ん、間違ってなかったとは思いますけど、これが正解とも限らない。来年もまた同じことを続けるかと言われたら、それプラス何かと考えていかないといけない。正解というか日々進化しなきゃいけないので、進化する過程の中では、良かったなと思います」。
では充実した1年の中で、課題はどこにあったのだろうかーー。
「1年間戦い抜けなかったので、体をもっとどういうふうにケア、休養をしたり、どうやって怪我を防ぐのかというのをできなかったのでしっかりやっていかないといけないなと改めて思いました」。
秋季練習でも「来季に向けての目標をしっかり立て直して、そこに向けてどうやっていくか具体的な練習メニューを考えていくというのと、その中で怪我してしまったのがあったので、どうやったらそこの怪我を防げたのか、どういうふうに1年間投げられる体を作れるか見直してそこを詰めていく。そこでやっていく中で投球で出た課題というのを明確にして潰していくというところですかね」と、1年間投げ抜くために必要なことについて考えた。
来季は“50試合登板”を達成し、シーズン通して戦い抜きたい。
取材・文=岩下雄太