ともに九州産業大&育成出身の野口と中村貴
2023年は“白熱の関西ダービー”となった阪神とオリックスによる日本シリーズで幕を閉じたプロ野球。また新たなシーズンが始まる前に、各球団のチーム状況を探りながら活躍が期待される若手選手を球団ごとにピックアップ。今回はセ・リーグ編。
●阪神:野口恭佑(外野手/大卒2年目)
18年ぶりのリーグ優勝、38年ぶりの日本一に沸いた2023年の阪神。復帰した岡田彰布監督の下、チームは投打ともスキの少ないチームへと変貌を遂げた。球団初のリーグ&日本シリーズ連覇を狙う今季も現時点で大きな穴は見当たらないが、あえて不安要素を挙げるとすればレギュラーが固定されている野手陣の故障トラブルだろう。
昨季はファームで育った若手が一軍メンバーの隙に入り込む余地はほぼなかったが、そんななか“若きロマン砲”として台頭したのが育成出身の野口だ。大卒1年目は春季キャンプで故障し実戦復帰は5月までズレ込んだが、その後の67試合で打率.303、6本塁打、OPS.785をマーク。シーズン終了後の11月に支配下昇格を勝ち取った。台湾ウインターリーグでも打率.313を記録するなどアピール。指揮官は2月キャンプの一軍メンバー入りを明言しており、育成出身の大砲がレギュラー陣を脅かす存在になりそうだ。
●広島:中村貴浩(外野手/大卒2年目)
昨年は低かった前評判を覆しリーグ2位に食い込んだ広島だが、シーズン終了後に西川龍馬がオリックスへFA移籍。戦力ダウンは否めない。特に外野陣は、2019年に丸佳浩がFAで巨人へ、2022年には鈴木誠也がメジャーへ、そして今オフは西川がオリックスへ移籍。しっかりと育て上げた主力が次々と抜け、現時点で外野のレギュラー枠はポッカリと空いている。
主力の流出はチームにとって痛手だが、若手にとってはレギュラー獲りの大チャンス。その中でピックアップしたいのが中村貴だ。上述した阪神・野口と同じく、九州産業大から育成ドラフトでプロ入り。ルーキーイヤーの昨季は二軍で持ち前の打力をアピールし、5月に支配下昇格を果たした。一軍でも15試合に出場し、二軍戦ではチーム2位の8本塁打をマーク。昨年11月に行われた若き侍ジャパンとの練習試合でも逆方向へ豪快なソロアーチを放つなど、非凡なパンチ力が魅力だ。同じく覚醒の予感が漂う田村俊介らとともに、ハイレベルなレギュラー争いに期待したい。
●DeNA:深沢鳳介(投手/高卒3年目)
今永昇太のメジャー移籍が決定的で、トレバー・バウアーの去就は不透明。FA宣言した石田健太は残留し、新たな助っ人投手も獲得したが、新シーズンへ向け先発ローテーションの再構築は急務だ。仮に今永とバウアーが揃って退団することになれば、両投手が昨シーズン消化した278回2/3を埋めなければならない。
昨季も台頭が乏しかった若手先発候補の中で、新たに期待したいのが高卒3年目を迎える深沢。高卒2年目の昨季は二軍戦でチームトップの93回1/3を消化し、6勝6敗、防御率3.28の好成績を残した。右サイドハンドから両コーナーを丁寧に突く投球スタイルで、二軍戦ながら奪三振数と与四球数の割合を示すK/BBは4.00、1イニングあたりの許した走者数を示すWHIPは1.11と、いずれも優秀な数値。今年は一軍デビューを果たし、同期入団の小園健太らとともに新たな風を吹き込みたい。
昨年は“開幕スタメン目前”で故障、立浪竜の注目株・田中
●巨人:赤星優志(投手/大卒3年目)
2年連続2ケタ勝利の戸郷翔征が新エースへと成長し、昨季は大卒3年目だった山﨑伊織が自身初の2ケタ勝利を達成。だが、彼らに次ぐイニング消化数は3位がフォスター・グリフィンの121イニング、4位はヨアンデル・メンデスの87イニングと、先発陣が外国人頼みであることは否めない。
戸郷、山﨑伊に続く“若手三本柱”候補として期待したいのが大卒3年目を迎える赤星。2年目の昨季はシーズン後半から好投を重ね、計12試合(69イニング)で5勝5敗、防御率3.39と飛躍のきっかけをつかんだ。11月に行われたアジアプロ野球チャンピオンシップでは若き日本代表として出場し、台湾代表相手に5回途中無失点と好投。制球力と多彩な球種にさらに磨きをかけ、新生・阿部巨人の旗印となりたい。
●ヤクルト:澤井廉(外野手/大卒2年目)
球団初のリーグ3連覇を目指した昨季のヤクルトだったが、結果は借金26の5位。特に主力野手の不調や離脱が響き、チーム得点数は2022年の619点から昨季は534点と大幅ダウンした。若手の台頭も乏しくチームは低迷。髙津体制5年目となる新シーズンは、主力の復調とともに若手の突き上げにも期待したい。
ブレイク候補の筆頭は昨季イースタン・リーグで本塁打王のタイトルに輝いた澤井。豪快なフルスイングが魅力の左打者で、大卒1年目ながら二軍戦で打率.262、18本塁打、56打点、OPS.844の好成績を残した。一軍でも15試合に出場し、プロ初アーチはお預けとなったが初安打をマーク。今季は開幕から一軍の舞台で大暴れし、近年固定されていない正左翼手の座をつかみ取りたい。
●中日:田中幹也(内野手/大卒2年目)
立浪和義監督就任後、2年連続で最下位に沈む中日。昨季もオフェンス面のスタッツは軒並みリーグ最下位で、チームの総得点は12球団ワーストの390得点。ディフェンス面もリーグで4番目に多い79失策を記録するなど、チームとして完成度の低さを露呈した。立浪監督にとっては結果が求められる勝負の3年目。そのキーマンになりそうなのが大卒2年目を迎える内野手の田中だ。
ルーキーイヤーの昨季は春季キャンプ中の実戦から攻守両面で猛アピール。オープン戦でも活躍し開幕スタメン目前だったが、3月中旬に右肩を脱臼し、その後「右肩鏡視下バンカート修復術」を受け長期離脱となった。一軍デビューはお預けとなり、二軍戦の出場もわずか8試合。それでも昨年のキャンプやオープン戦で躍動した姿は、指揮官の瞼の裏に焼きついているはずだ。チームは昨季、二遊間を固定できず、レギュラーは今季も白紙の状態。首脳陣だけでなく、竜党からの期待も大きい。