リリーフ陣に苦労した前半戦
2年連続Aクラス入りを果たしたロッテ。リリーフ陣は今季も決まった形の勝利の方程式を採用せず、場面や状況に応じて投手をうまく起用し、今季3連投した投手は益田直也(9月28日の西武戦〜9月30日の楽天戦)のみで、1週間に4登板した投手はおらず、しっかりと登板を管理。オールスター明けは6回終了時点でリードした試合は23勝0敗と1度も負けなかった。
ただ、前半戦はリリーフ陣で苦労した。チーム救援防御率は3.60で、守護神・益田直也、昨季44試合に登板して防御率1.25をマークした西村天裕、昨季38試合に登板した横山陸人がシーズン序盤にファーム落ちを経験し、昨季ブルペンを支えた坂本光士郎、東妻勇輔は開幕二軍スタート。不安定な救援陣だった中で開幕からブルペンを支えていた澤田圭佑も6月10日に一軍登録を抹消され、メジャー通算114試合に登板した実績のあるコルデロも、来日初登板が7月4日の日本ハム戦だった。
今季一軍投手コーチを担当した小野晋吾コーチは前半戦を終えた段階の取材で「前半は苦しんだところがあったんですけど、少しずつ立て直しながらなんとか前半は乗り切れたという感じですね」と総括。
苦しい台所事情だった中で、前半戦を支えたのが鈴木昭汰と国吉佑樹。鈴木は前半戦、チームトップの32試合に登板し、1勝1敗15ホールド3セーブ、防御率0.59の抜群の安定感を見せれば、国吉佑樹もさまざまな役割をこなし26試合に登板して2勝6ホールド1セーブ、防御率1.73の成績を残した。
前半戦は1週間に4登板以上、3連投したリリーフはおらず、しっかりと登板管理。小野コーチも「色々我慢しながら、使い減りしないような使い方をしてきていると思うので、それを後半しっかり繋げていけるように準備させていかなければいけないかなと思います」と前を向いた。
安定してきた後半戦
前半戦リリーフ陣に無理をさせなかったことが功を奏し、オールスター明けの救援防御率は『3.05』に良化。
前半戦安定していた鈴木はオールスター明けも7月28日の楽天戦から9月5日の楽天戦にかけて10試合連続無失点に抑えれば、5月29日のヤクルト戦から無失点投球を続けていた国吉は9月16日の西武戦にかけて球団新記録となる24試合連続無失点に抑えた。
小野コーチは8月30日の取材で、国吉について「色々バランスを見ながら、登板してくれているんですけど、どんな場面でも自分の投球をしてくれている」と評価し、「(鈴木)昭汰と国吉から開幕からずっと良い投球をしてくれている。非常に助かっています」と話した。
守護神・益田も8月以降は9度のセーブ機会で全て成功するなど、15試合・14回2/3を投げ、0勝1敗2ホールド9セーブ、防御率0.61。セーブ機会での登板で安打を許した試合もわずかに2試合で、三者凡退で片づけた試合は7試合と抜群の安定感だ。9月28日の西武戦から9月30日の楽天戦にかけて今季初の3連投もほぼ完璧の投球内容で抑え込んでいる。
若手の台頭
小野コーチは6月19日の取材で「状態が上がってくれば、去年ぐらいの中継ぎでしっかり固まっていけると思う。その中で若手がグッと押し上げる選手が出てくれば」と若手の奮起に期待した中で、高卒5年目の横山と2年目の菊地吏玖といった若手も割って入った。
横山は6月5日に再昇格を果たすと、ストレート、スライダーの中心の投球も6月7日の広島戦から7月27日の楽天戦にかけて15試合連続無失点。7月30日の西武戦で失点したが、「寝る前とかに結構考えていて、こうやって投げたらかかるんじゃないかなというのがたまたまパッと思いつきました。試してみたら良かったという感じです」と、シンカーを再び投げるようになった続く8月2日のオリックス戦から9月5日の楽天戦にかけて11試合連続無失点。
菊地は8月3日に再昇格を果たすと、吉井理人監督からの教えで握りを改良したフォークで三振の山を築き、同日のオリックス戦から8月28日の西武戦にかけて8試合連続無失点。9月11日のオリックス戦で3回を無失点でプロ初セーブを記録するなど、8月以降は16試合・19回1/3を投げ、1勝2ホールド、防御率1.86だった。
小野コーチは若手リリーフ陣の突き上げに8月30日の取材で「本当に良い突き上げ、良い働きをしてくれている。菊地は特にチャンスを掴んで、しっかりモノにしつつある。横山にしても春先は結構、躓いていましたけど、しっかり自分を振り返りながら、成長してきている」と評価した。
準備
ロッテのリリーフ陣といえば、夏場以降は鈴木が勝ち試合の8回、益田が勝ち試合の9回を担当することが多かったが、基本的には決まった形の勝利の方程式を採用していなかった。その中でリリーフ陣は準備の難しさとかはなかったのだろうかーー。
鈴木は「勝ちゲームなので、気負いすぎると良くないので、いつもと変わらずに」と話し、勝ち試合の8回、9回でもメンタル面では変えずに投げた。ちなみに4月17日の西武戦、2-0の9回に登板しプロ初セーブを挙げた試合は「8回、9回ぽい感じはあったんですけど、今日クローザー行くからというのは言われていなくて、自分の中では準備できていましたね」とのことだ。
国吉は勝ち試合、ビハインドと様々なシチュエーションで投げたが、「役割、場面、いろいろあるので行けと言われたところで、しっかり投げられるように。場面、ポジションを問わず、どこでも投げられる準備はしています」と話し、イニングまたぎについても「それも見越して調整はしてきている。2回でも3回でも行けと言われたらいこうと思いますし、その辺の難しさは感じていないです。ロング投げられるのを強みにしているところもありますね」と頼もしい言葉を残していた。
横山は勝ち試合の登板が多かったが、オールスター明けは同点・勝ち試合の6回が5試合、7回が6試合、8回が3試合、9回が2試合と、様々な場面で投げた。「任せてもらったところをとにかく0で抑えるだけなので、そういうところで、はい。特に何が違うとかはないのかなと思います」とキッパリ。
小野コーチは春先の取材でリリーフ陣の準備について「みんなすごくいい準備をしてくれているので、ちょっと自分たちがありそうだなとそういうのを自分たちで判断しながら準備、動いたり、投げる間際まで体を作ってくれている」と感謝していた。
ロッテは、チームビジョンとして2025年までの常勝軍団を掲げる。長いペナントレースを勝ち抜くためには、勝利に直結するリリーフ陣の存在は非常に重要になってくる。今季は春先に故障や不調の選手が多くやり繰りに苦労している印象を受けたが、シーズンが進むにつれて安定したブルペン陣を作った。来季は昨季活躍した投手が復活し、今季安定した投球を見せた投手が継続して活躍、そこに新しい顔が来季加われば、さらにブルペンは強固なものになる。
▼ 主な救援陣の投球成績 ※リリーフの成績のみ
鈴木昭汰 51試 2勝2敗27H5S 防0.73
益田直也 44試 1勝4敗6H25S 防2.59
横山陸人 42試 3勝1敗18H3S 防1.80
国吉佑樹 41試 3勝1敗10H1S 防1.51
澤村拓一 39試 1勝2敗15H1S 防3.34
坂本光士郎 37試 1勝2敗11H0S 防5.73
澤田圭佑 21試 2勝1敗8H0S 防3.60
菊地吏玖 20試 1勝0敗2H1S 防2.25
岩下大輝 20試 2勝0敗3H0S 防3.05
西村天裕 17試 0勝0敗7H0S 防6.62
中村稔弥 17試 1勝0敗0H0S 防3.71
▼ シーズン中に3連投した投手(移動日挟む3連投、CSは含まない)
益田直也(9月28日vs西武〜9月30日vs楽天)
▼ シーズン中に1週間に4登板以上した投手(月曜日〜日曜日までの1週間)
なし
取材・文=岩下雄太