巨人・阿部監督 (C)Kyodo News

◆ 白球つれづれ2025・第29回

 今年の“伝統の一戦”巨人ファンには、いささか興ざめとなってしまった。

 オールスター前、最後の巨人vs阪神戦は2勝1敗で阪神に軍配が上がった。3連戦の最終戦こそ、巨人が粘って、最後は吉川尚輝選手のヒットでサヨナラ勝ち。だが、その直前には球団史上に残るワースト記録が記された。

 19日の初戦を落とした段階で巨人の自力Vが消滅。これだけでも屈辱なのに第2戦でも敗れ、今季の対戦成績は阪神の13勝4敗でシーズンの勝ち越しが決定。巨人にとってはオールスター前の段階でギブアップ状態だから、これほどの屈辱もない。

 猛虎の強さばかりが際立つ今季のGT戦。これまでの18戦の中身を精査してみる。

 開幕直後の3連戦で3連敗を喫した巨人は、その後も歯が立たない。

 阪神が4点以上を上げた試合が11あるのに対して、巨人は3試合のみ。もっとシビアに見ると巨人が2得点以下に抑えられたゲームは13を数える。ホームラン数も阪神16本に対して、巨人はわずかに5本。打撃戦でも、投手戦でも阪神が優位に立っているのが、一目瞭然だ。

 昨年は12勝12敗1分けの互角の戦いを見せた両雄だが、今季はなぜここまで大きな差が開いてしまったのか?
 最もわかりやすく言えば、巨人はエース・戸郷翔征の不調と四番・岡本和真の戦列離脱が大幅な戦力ダウンを招いたのに対して、阪神は逆に先発の柱である村上頌樹が復活して、打線では佐藤輝明選手の覚醒に森下翔太選手の成長で攻撃力がアップ、隙の無い打線が完成した。

 この両チームの昨オフからの動きは対照的だった。

 巨人が中日の絶対的守護神であるライデル・マルティネスやソフトバンクから甲斐拓也捕手をFAで獲得。楽天の田中将大投手に、新外国人のトレイ・キャベッジ選手を獲得するなと「50億円補強」と話題を呼んだ。

 これに対して猛虎軍団はFAで去就の注目されていた大山悠輔、坂本誠志郎、原口文仁3選手が宣言残留。藤川球児新監督にとっては何よりの“ご祝儀”となった。

 四番で30本塁打以上を計算できる岡本の故障離脱は阿部巨人にとって、痛すぎるが、一方では深刻なチーム事情をさらけ出すことになった。打線の核となる人材がいなくなってしまったのだ。丸佳浩や吉川尚輝選手らは大砲役ではない。坂本勇人選手は衰え、頼みの外国人は成績が上がらない。阿部監督の苦渋の決断は昨年ほとんど出場機会のなかった増田陸選手の四番抜擢だった。

 岡本の名前が消えると、球団は急遽、ソフトバンクのリチャードと秋広優人、大江竜聖を交換トレード。リチャードの長打力に望みを託すが不発に終わる。もう一人、チーム内には大砲役になり得る大城卓三選手もいたが、こちらは捕手が余り過ぎて使いこなせない。今月になるとメキシカンリーグなどでプレーしていた元DeNAの乙坂智選手をテスト入団で獲得しているが、果たして打線のカンフル剤になるのか?こうなるとフロントも含めた迷走と首を傾げたくなる。

 岡本のメジャー志向は知れ渡っている。それなら岡本に代わる四番作りはチームにとって喫緊の課題だったはず。秋広はその有力候補だったが、少し伸び悩むと放出に舵を切っている。

 逆に近年の阪神のチーム作りには、球団全体のポリシーを感じる。

 近本光司、中野拓夢の一、二番で機動力を駆使して、森下、佐藤、大山の和製クリーンアップが凄みを増している。この5人のうち、中野を除く4人はドラフト1位組だ。

 それでいて鉄壁を誇る投手陣には、上位指名は驚くほど少ない。

 エースの村上がドラフト5位なら、“勝利の方程式”の及川雅貴が同3位、石井太智は同8位で岩崎優は同6位。大まかに言えば野手をエリートで固め、投手は育成で黄金期を迎えている。

 チームによっては、成長株を計画的に鍛えて主力選手に育てる方式をとるケースもある。巨人のように常に成績を求める組織は、トレードやFAで常に大物獲得に動くから若手選手は育ちにくい。

「力の差を感じるね」。ライバルに打ちのめされた阿部監督の試合後の談話だ。昨年の覇者は1年後、はるか先を行く猛虎をどう見つめ、どんな反撃の一手を用意するのだろうか。

 目先の結果も大事だが、同時に5年後10年後を見据えたチーム作りが出来なければ常勝軍団もあり得ない。少しの光明と確かな未来予想図を描くことを名門球団は考えなければならない。

文=荒川和夫(あらかわ・かずお)

この記事を書いたのは

荒川和夫

1975年スポーツニッポン新聞社入社。野球担当として巨人、西武、ロッテ、横浜大洋(現DeNA)等を歴任。その後運動部長、編集局長、広告局長等を経て現在はスポーツライターとして活動中

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