阪神・藤川球児監督 (C)Kyodo News

◆ 白球つれづれ2025・第36回

 これほどまでに、落ち着いて胴上げのマウンドに向かい、これほどまでに饒舌に優勝インタビューを受けた新人監督を見たことがない。

 阪神・藤川球児、45歳。今季就任したばかりの若き指揮官はチームを2年ぶりのリーグ優勝に導いた。9・7の頂点獲りは史上最速の偉業達成でもあった。

 熱狂で揺れるマンモススタンド。深夜には大阪・道頓堀で虎党恒例の「戎橋ダイブ」が行われ、29人が厳戒態勢の中、川に飛び込んで歓喜に酔いしれた。

 しかし、これまでの阪神優勝と今季の戦いは明らかに違う。攻守走。すべてに敵を上回る完璧な勝利だ。

 優勝翌日の各紙に、ライバル球団監督の阪神Vへのコメントが掲載されている。8日現在(数字は以下も同じ)2位の巨人・阿部慎之助監督から最下位のヤクルト・髙津臣吾監督まで5人の指揮官の総括はほとんど似通っている。

「投打を含めた総合力」。「レギュラーが固定されて、軸がしっかりしている」。

「大きな故障者がいない安定した戦い」。これをまとめ上げた藤川監督のマネージメントと組織を作り上げた球団の努力は特筆される。

 阪神と2位・巨人は17ゲーム差。阪神の「一強」に対して、残り5球団は、すべて借金生活にあえいでいる。完全無欠の制覇。これではポストシーズンのクライマックスシリーズのあり方までに疑問の声が上がるはずだ。

 優勝の要因は数え上げればきりがない。

 投手陣は先発組で才木浩人が最多勝と最優秀防御率の二冠候補なら、村上頌樹が勝率1位。ブルペン陣をみれば目下48戦連続無失点の石井大智を筆頭に及川雅貴や守護神・岩崎優まで隙が無い。特に石井、及川らを育て上げたのは現役時代に抑えや中継ぎを経験した藤川監督の手腕によるところが大きい。チーム防御率2.12は12球団トップ。鉄壁の守りは絶賛に値する。

 打撃陣を見ると一番の近本光司から中野拓夢、森下翔太、佐藤輝明、大山悠輔まで打順が固定され、近本と中野が塁上を賑わして森下以下の「和製クリーンアップ」がこれを還す破壊力が際立っている。

 佐藤の本塁打、打点の二冠がクローズアップされるが、打点でトップの佐藤に次いで森下が2位、大山が3位で3人の総打点は235点を数える。

 加えて、強さを陰で支えているのは、指揮官がシーズン前からスローガンに掲げた「凡事徹底」だ。

 二年前の優勝時には85を数えたチーム失策は53に減少。岡田彰布前監督時代から四球の重要性を教育されると、大山のリーグトップ62個を筆頭に出塁率を上げている。当たり前のことを当たり前にやり、防げるミスは極力なくす。こうして隙のないチームが出来上がった。

 球団創設90周年。記念すべき年にレジェンドである吉田義男、小山正明氏らが天国に旅立った。一方で各時代を彩ったOB達が甲子園に再び集まった。

 かつて阪神ファンは、愛する我がチームにどこか屈折した感情を持っていた。

 ライバルの巨人が48回のリーグ優勝を誇るのに、我が猛虎は前年までで10度だけ。いつしか、「負けても可愛いのがタイガース」とあきらめかけていたフシがある。

 親会社では、贔屓の選手ごとに分裂する。OBも言いたい放題。そんな「B級軍団」は、ようやくこの10年で常にAクラス入りして、優勝を狙える組織に生まれ変わった。特に近年は岡田前監督が、隙のないチームを作り、それを藤川監督が継承したことで新たな王国が出来上がりつつある。

 今回の優勝に関して、猛虎の英雄であるランディー・バース氏が面白いコメントを寄せている。

「素晴らしいファンは、いよいよ“常勝阪神”に慣れてきたんじゃない?」(7日付日刊スポーツ)

 あまりの強さに涙もなかった歴史的なV。これで日本一まで駆け上がるようなら、かつてのV9巨人や、西武のような無敵な時代がやって来るかも知れない。そう思わせるほどの夜だった。

 虎党にも新たな喜び方を考える時期がやって来るのだろうか?

文=荒川和夫(あらかわ・かずお)

この記事を書いたのは

荒川和夫

1975年スポーツニッポン新聞社入社。野球担当として巨人、西武、ロッテ、横浜大洋(現DeNA)等を歴任。その後運動部長、編集局長、広告局長等を経て現在はスポーツライターとして活動中

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