どら増田のオリ熱魂!第13回・近藤大亮
オリックスのプロ2年目、近藤大亮が10日の西武戦(京セラD大阪)でプロ初勝利を挙げた。即戦力右腕として期待され、パナソニックからドラフト2位で入団した昨年は、開幕ローテーションに入りながら、肩の違和感を訴えてわずか1試合で離脱。1年間を棒に振ってしまった。
その後、昨秋のフェニックスリーグで復活登板を飾ると、昨年の秋季キャンプや今年の春季キャンプでは躍動感のあるピッチングを披露。開幕前に再び離脱することになったが、5月20日に一軍昇格を果たすと、8月16日終了時点で34試合(35回2/3)に登板して、1勝11ホールド、1セーブ、防御率3.03とフル回転し、黒木優太とともに“勝利の方程式”の一角を担っている。
ほろ苦い初白星
初勝利を祝福すると近藤は真っ先に「複雑」という言葉を口にした。初勝利を挙げた西武戦は、1点リードで迎えた8回からマウンドに上がり、2者連続三振で簡単に二死とする。しかし、続く浅村にホームランを打たれ同点に追いつかれてしまった。その裏、同期入団の吉田正尚が2点勝ち越しタイムリーを放ったことによりプロ初勝利が舞い込んだが、先発を務めた松葉の白星を消してしまったことを悔やみきれない様子だった。
2015年に吉田正尚に続くドラフト2位で入団した近藤は、150キロを超える速球と、スライダー、フォーク、そしてパームボールを使いこなすことから、先発もセットアッパーもクローザーも出来る万能型の即戦力右腕として期待されていた。大阪府堺市出身で浪速高、大商大、パナソニックと“大阪一筋”ということもあって、入団会見ではドラフト1位の吉田正よりも多くの報道陣が近藤を取り囲んでいたのを思い出す。
今年の春季キャンプでは先発としての調整を指示されていたが、守護神の平野佳寿がWBC日本代表に選ばれたこともあり、平野の調整が遅れた場合は誰が代役を務めるのかが課題になっていた。近藤に「もし後ろを任されたらどうしますか?」と質問すると、「今は先発で調整をしてますけど、長く投げるのを短くする分には全く問題ないです。後ろで投げろと言われれば行けます。大丈夫です」と笑顔で答えてくれた。
この話を福良淳一監督に伝えると「そんなこと言ってた?いいですね。彼にとって後ろがいいのか前がいいのかをしっかり見極めた上で、彼の力が活かされるところで使ってあげたい」と嬉しそうに目を細めていたのを思い出す。開幕前に離脱したときは、「また同じことをしてしまった」と落ち込んでいたが、トレーナーと二人三脚で「1軍を目指してリハビリをしてきた」(近藤大)結果が、現在の活躍につながっている。
近藤自身も「今はホントいい経験をしてます。1日1日ガムシャラに、1軍で長く投げ続けるという僕が目標としているところにきている」と振り返る。
目標とされる二年目右腕
プロ入り一年目の昨季、1試合の登板に終わった近藤にとっては、今季がルーキーイヤーと言ってもおかしくない。復帰後、すぐにセットアッパーとして重要な仕事を任されたことで、充実した日々を送っているようだ。
そんな近藤の復活劇を喜んでいる後輩がいる。高卒プロ3年目の鈴木優だ。鈴木は今季ファームで初めて150キロを計測するなど、今後が楽しみな若手ピッチャーのひとりである。
「大亮さんは男前なんですよ、気前がいいというか懐が大きくてどんな時でも優しいです。抑えてもたまたまと謙遜しますし、去年のフェニックスリーグから大亮さんのボールを見て、ずっと凄いと思っていて、フォームを見たり投げることについての話を聞いたりしてたんですけど、『俺が大学2年とかの時は、全然優なんかより凄くないよ。だから自信持っていいよ』って言ってくれた。技術的にはストレートで空振りをバンバン取れるというとこがやはり凄いですよね。スピードだけじゃなく、それ以上にキレが他の人とは違うと思います。人としても選手としても尊敬しているし、僕の目標です」
鈴木は「まだ話し足りないんですけどね」と笑いながら、近藤の人柄が伝わるエピソードを話してくれた。後輩の言葉を聞いた近藤は「あいつかわいいな」と照れながらも「嬉しいですね。頑張らないと」と素直に喜ぶ。近い将来、そんな2人による必勝リレーを見ることができれば最高だ。
「今年は去年味わえなかったファンの皆さんの声援を受けられている。支えられてるなと思いますね。感謝してます」
プロとして当たり前のことなのかもしれないが、近藤のファンサービスやマスコミ対応は本当に素晴らしい。近藤の周りはいつも笑いが絶えない。そして「いつも皆さんにお世話になってますから」という感謝の言葉が口癖のように聞かれる。セットアッパーはなかなかすっきりとした勝ち星がつきにくいポジションだが、今のピッチングを続けていけば納得のいく白星を挙げる日も遠くはないだろう。
オリックスのCS進出は絶望的な状況だが、借金返済はまだ絶望的ではない。金子千尋やディクソンが二ケタ勝利を達成するためにも、“男前なセットアッパー”近藤の力は不可欠だ。ようやくスタートしたプロとしての野球人生。近藤には持ち前の『闘争心』で若い投手陣を引っ張る存在になってもらいたい。
取材・文=どら増田