規定まで212打席を凡退しても出塁率3割弱
レギュラーシーズンが終わり、個人タイトルも確定した。パ・リーグの首位打者に輝いたのは打率.322の秋山翔吾(西武)であった。今季のパ・リーグは、打率3割に到達したのが秋山と柳田悠岐(ソフトバンク)のふたりのみ。野球ファンからは「近藤健介(日本ハム)にシーズンを通して出場してほしかった」という声も聞かれる。
今季の近藤は開幕から安打を量産すると、打率4割を維持したまま交流戦に突入。開幕から出場50試合を終えた段階でも.407という打率を誇っていた。しかし、椎間板ヘルニアを発症し、6月6日の広島戦での代打出場後に戦線離脱。9月28日の楽天戦で復帰するまで実に3カ月半以上の時間を要した。
しかし、復帰後も近藤のバットは猛威を振るった。わずか7試合ではあったが、17打数8安打とむしろ登録抹消前よりも打率を上げ、最終的には.413という驚異的な打率を残してみせた。これは、100打席以上を消化した選手の記録として史上最高の数字である。
そして、なにより際立つのが異常なほどの高出塁率だ。規定打席の443には212打席も足りないにもかかわらず、近藤が選んだ60四球はなんとリーグ10位の数字。結果的に、最高出塁率のタイトルを獲得した柳田の.426をはるかに上回る.567という出塁率をたたき出している。
仮に規定に足りない212打席を全て凡退として計算してみても、出塁率は3割に迫る.296となる。約3カ月半という長期の登録抹消期間がもっと短ければ、初の“認定最高出塁率打者”が生まれた可能性もゼロではなかっただろう。
近藤に求められるケガをしない体づくり
ちなみに、2003年のペタジーニ(当時巨人)は幻の“認定最高出塁率打者”となっている。この年のペタジーニは規定に20打席足りなかったが、その不足分を凡打として加算しても出塁率.436で規定打席到達打者中トップの福留孝介(当時中日)の.401を上回っていた。しかし、当時、この例外規則が適用されていたのは打率と長打率のみだったため、福留が最高出塁率のタイトルを手中にしたのだ。
なお、出塁率のプロ野球記録は1986年に落合博満(当時ロッテ)が残した.487。いまだ5割の壁を破った者はいない。近藤には夢の打率4割、そして出塁率5割を目指してほしいもの。そのためにはケガをしない体づくりが必要だろう。2015年前半までは捕手としての出場が多かった影響もあるが、故障が目に付く近藤が規定打席に到達したのは2015年の一度きりだ。
とはいえ、まだ高卒6年目のシーズンを終えたばかりの24歳。驚異的なスピードで成長を続ける近藤がプレーヤーとしてのピークを迎えるのはこれからだ。来季以降、前人未到の大記録を打ち立ててほしいものである。
文=清家茂樹(せいけ・しげき)