ソフトバンクの驚異的な“先制力”
10月28日からはじまった日本シリーズは第5戦を終えてソフトバンクの3勝2敗。舞台を再び福岡・ヤフオクドームに移すこととなった。
今シリーズで目立っているのが、ソフトバンクの驚異的な“先制力”だ。ここまで5試合のうち、実に4試合で初回に先制点を挙げている。
そもそも、首脳陣が熟考に熟考を重ねて作り上げたオーダーの1番打者から臨める初回は、先発投手の立ち上がりということもあって得点が多いイニングである。とはいえ、ここまであっさりと先制点を奪われると、DeNAファンもショックを受けるというより、相手をたたえるしかないだろう。
11月2日の第5戦でも、ソフトバンクが持ち前の先制力を発揮した。1番の柳田悠岐は倒れて一死となるも、つづく今宮健太が安打で出塁。デスパイネが倒れた後、内川聖一を打席に迎えたところですかさず二盗を決めた一塁走者・今宮が内川のライト線への二塁打でホームイン。早々と先制点をもぎ取ってみせた。
しかも、ソフトバンクの先制力はただ得点するだけにとどまらない。先制した試合を異常なほどの高確率で勝利につなげているというデータもある。
レギュラーシーズンにおいてソフトバンクが先制した試合の勝率は、なんと9割に迫る.890。73勝を挙げて敗戦はわずかに9。ちなみに、12球団で見ても2位は巨人の.820(50勝11敗1分)、最下位はヤクルトの.528(28勝25敗1分)であった。
“王道”を崩して勢いを増すDeNA
まさに“先行逃げ切り”――。ゲーム展開にもよるが、先発はもちろんのことクローザーまでの中継ぎ陣も含めた投手陣がきっちりと役割を果たし、相手に逆転を許さない働きをしていることの表れだ。
一方、セ・リーグ覇者・広島はその逆で、先制を許した試合での勝率が.516(32勝30敗4分)。12球団で唯一勝ち越しているチームであり、「逆転の広島」と呼ばれる所以はそこにある。
ソフトバンクの野球は、どんな試合展開でも最後まで粘って貪欲に勝ちをもぎ取る広島とは対照的。早い回に先制し、投手陣がきっちりリードを守り切る“王道野球”といえるだろう。
だが、第5戦ではDeNAが粘りに粘ってソフトバンクの王道を崩してみせた。4回に筒香嘉智の2ランで逆転。再び逆転を許した後の6回には、筒香と宮崎敏郎の連続タイムリーで同点に追いつくと、嶺井博希の打球が明石健志のエラーを誘って再逆転に成功。最後は守護神・山﨑康晃を8回途中からマウンドに送り出して接戦を制した。
当初はソフトバンクの強さが目立ち、4連勝での日本一もあり得るかと思われた今シリーズだったが、DeNA打線が本拠地・横浜スタジアムで息を吹き返した。ソフトバンクの“先制時勝率9割の壁”をも打ち破り、チームもノッている。
1989年に巨人が成し遂げて以来となる『3連敗からの逆転日本一』なるか…。勢いに乗って福岡に乗り込むDeNAに期待が高まる。
文=清家茂樹(せいけ・しげき)