コラム

ツバメ快発進の裏にあるもの

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ヤクルト・山田哲=神宮

白球つれづれ2018~第6回・ヤクルトのチーム改革


 望外の週末というべきか。神宮に歓喜の傘が揺れた。

 今月6日から行われた対巨人3連戦に3連勝。まだ開幕直後と言うなかれ。昨年は球団ワーストの96敗で地獄の底まで沈んだチームがこの時点で広島と並び首位に立ったのだ。しかも巨人には前年8勝17敗とまったく歯が立たなかったのだから、監督の小川淳司も想定以上の戦果である。

 この3タテの中には、今季ヤクルトが推し進めるチーム改革の要素がはっきりと見えていた。

 第1戦は7年ぶりにメジャーから戻ってきた青木宣親が猛打賞の活躍でチームを牽引した。巨人先発の菅野智之には一昨年から8連敗中で昨季も5戦5敗の天敵。菅野自体の出来が本来の物ではなかったものの、右へ左へ、青木の巧打がチームに勢いをつけた。開幕から「つなぎの4番」に座る。本来が長距離砲ではないもののチャンスでは勝負強い打撃が生きる。

 3番で攻撃が途切れたときにはチャンスメーカーともなり得る。加えて、日米で2000安打以上を重ねてきた実績がある。練習に取り組む姿勢から若手への生きた教科書になっているのだから、存在感は大きい。

 第2戦はプロ3年目の大器・広岡大志が5打数5安打の大爆発で巨人の投手陣を粉砕、乱打戦を制している。今季からショートの定位置を確保した若武者こそ新生ヤクルトの象徴であり、ヘッドコーチに就任した宮本慎也の秘蔵っ子というべき存在だ。

 智弁高校時代からスケールの大きな長距離砲として評価の高かった男だが、ようやくプロの水とスピードにも慣れてきた。もっとも、この試合ではその宮本ヘッドから超ド級の雷も落とされている。無死満塁の場面で遊撃後方の飛球を確保したものの、三走である巨人のA・ゲレーロに本塁生還を許してしまう。

 「怠慢以外の何物でもない。ベンチ裏に呼んでこってり絞っておきました」とは鬼軍曹の弁。ヒーローだからと言って浮かれてはいられない厳しさが今季のチームにはある。

 そして、第3戦は山田哲人の足が威力を発揮した。初回に四球で出塁するとすかさず二盗。2番の西浦直亨が送って一死三塁の場面で続くW・バレンティンの遊ゴロの間に生還。つまりノーヒットで先制だ。

 山田は3回にも盗塁を決めて、今季は9試合で7盗塁(リーグ1位)。開幕から打撃の調子は今一つ。打率.172は不本意だが出塁率.429はリーグでもトップクラス(5位)の上に盗塁を量産しているのだから脅威の1番打者には違いない。


 台風の目となれるのか!?


 弱者が強者に立ち向かうには何が必要か?ようやく計画的なチーム再建に舵を切ったフロントは新監督の意向も受けてコーチ陣の大刷新に着手した。

 チーム生え抜きの宮本慎也をヘッドに就任させるだけでなく、前年まで広島の黄金期に貢献した石井琢朗を打撃部門に、同じく河田雄祐を外野守備走塁部門のコーチに招請。宮本にはプロ意識と厳しさを。石井と河田には広島流のスキのない野球の指導を期待してのシフトである。長年「ぬるま湯的な体質」と指摘されてきたチームの大手術が始まった。

 春のキャンプ初日から10時間を超すハードトレ。この中でどうすれば効率よく得点が取れて、どうすれば失点を最小限に防げるか?チームとしての意識改革が植え付けられていく。

 青木のつなぐ打撃、山田の足を有効に使ってノーヒットでも得点が出来るチームプレー。さらに開幕の横浜戦でも初戦の横浜先発・石田健大から5回までに108球、第2戦の先発であるE・バリオスにも4回で107球を投げさせて攻略につなげている。

 淡泊さは影を潜め、しつこいほどの打席での粘りも昨年までにはなかった姿だ。チームとしての戦う姿勢があるからこそ、投手陣でも中継ぎの風張蓮や中尾輝らの若手が踏ん張ってプロ初勝利を手にしている。

 長丁場のペナントレースを考えたとき、それでも投手スタッフの力量不足は明らかだ。エース格である小川泰弘や先発の一角に期待された星知弥らが故障で出遅れ実情は火の車。それでも今年のヤクルトは優勝争いまでは確約できなくとも「台風の目」となる資格は十分ある。

 なめたらいかんぜよ!春の珍事(失礼)がどこまで続くかによってセ・リーグの勢力地図は大きく変わっていくはずだ。


文=荒川和夫(あらかわ・かずお)
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