王貞治のプロ野球記録をしのぐハイペース
広島・丸佳浩が異常とも言えるハイペースで四球を稼いでいる。
たとえ打撃の調子を落としているときであっても、四球を選べるのが丸の強み。4月15日の巨人戦を最後にマルチ安打はなく、4月26日のDeNA戦も2打数ノーヒットに終わった。それでも2つの四球を選ぶのが丸という男だ。ここまで積み重ねた四球の数は24試合で「34」。2位・近藤健介(日本ハム)の20四球(22試合)を大きく引き離した12球団ぶっちぎりトップの数字である。
なお、シーズン143試合に換算すれば、202四球というとんでもない数字なる。これは、王貞治(元巨人)が持つシーズン四球数のプロ野球記録、158四球をもはるかに上回る数字だ。まだ開幕間もない時期での数字であり、今後の成績次第で最終的な結果は大きく変わるだろう。ただ、それでも稀に見るハイペースで四球を選んでいることは明らかだ。
円熟期を迎えつつある丸に対峙する怖さ
丸はもともと四球を多く選べる選手だということは、野球ファンには広く知られているだろう。毎年のように四球数はトップクラスであり、2014年(100四球)、2015年(94四球)と連続してリーグ最多四球を記録した。
とはいえ、今季のペースは過去のそれを大きく上回るもの。選球眼の良さには定評があるものの、積極的に打ちにいくタイプでもあり、イメージより三振が多いのも丸の特徴である。ここまでの23三振はリーグワースト3位の数字だ。2015年には143三振でリーグ最多三振も記録している。
また、今季はここまで全試合で3番としてスタメン出場しており、たとえ4番が日替わり状態という今のチーム状況を考慮しても、王のように敬遠が多いというわけでもない。実際、ここまでの敬遠はわずかに2である。
これらの事実が示すのは、相手投手は丸との勝負に臨んではいるものの、丸に対する警戒が昨季までよりも強まっているということだろう。投手からすれば、丸はストライクゾーンでは勝負したくない相手なのだ。
昨季は最多安打のタイトルを獲得し、シーズンMVPにも輝いた。円熟期を迎えつつある29歳。少しでも投じるコースが甘くなれば、高確率でヒットゾーンに運ばれ、スタンドインとなる怖さもある。丸の異常な四球数は、相手投手の恐怖心・警戒感の表れとも言えるだろう。
※数字は4月26日終了時点
文=清家茂樹(せいけ・しげき)